42話 二日目7
「ちょっとあのバカ探してくる」
俺はその場にいた生徒達とミチルに向かってそう伝えてから、転移魔法を使用した。
転移先はメルラン先生が昨日運ばれた病院だ。
昨日、三回戦が始まる前にレンも入院している例の病院にやってきた。
俺は急いで受付の女性に声をかけた。
「昨日入ったエスカトーレ学園教師のメルラン教諭がいる病室はどこです!!!」
俺の方を見て何故か怯えていた受付の女性は、一つの病室を教えてくれた。
だが、俺がその病室に向かうと、空のベッドしかなく、メルラン先生の姿は見当たらなかった。
「くそっ、こっちだったか……」
カトウの実力は他人から見れば相当で、正攻法で勝てるような相手じゃない。
それは最強決定戦に出ない俺やユリウスが舐められないように圧倒的な実力を見せているからだと聞いたことがある。
そんなカトウを棄権させる為なら、相手がどんな方法を使ってもおかしくない。
例えば、大怪我をして動けなくなったカトウにとって大切な存在を誘拐するとかだ。
昨日のカトウは明らかに様子がおかしかった。
試合の時間になるまでずっとメルラン先生の傍から離れなかったし、普段の様子と明らかに違っていた。いや、心配だからこそとも取れるが、あいつの様子がおかしかったのは昨日に限った話じゃない。
もし、カトウがこの大会に出るなと誰かに脅されていたとしたら?
誰にも相談することを禁止され、俺を頼ろうにも頼れなかったんだとしたら?
カトウが出たことで、瀕死のメルラン先生が攫われたんだとしたら、まず間違いなくカトウなら出場を取りやめるはず……だとしたら、あいつはメルラン先生を探すべく動いたか、犯人の言う通りに動いたか、だな。
「だが、カトウがミチル達を放って……いや、俺がいたからミチルの傍を離れたのか? だとしたら、この状況はまずい。とりあえず探すにしたってまずはミチル達がいる場所に戻ろう。俺がここにいる間に攫われたんじゃ、申し訳が立たないしな……」
転移魔法を使用し、俺は一瞬でミチルやベル達のいる観客席に戻ってきた。どうやら、ミチルはまだ無事のようだ。
「マルクトさん、テツヤさんは……」
「あいつの位置はまったく見当がつかない。少なくとも半径五十キロ圏内にはいないようだ。それと、さっきメルラン先生の病室に行ったが、もぬけの殻だった」
心配そうな表情で詰め寄ってくるミチルに説明するが、彼女は絶望しきった表情でへたりと床に崩れ落ちた。
「そういえば先生、カトウ先生の時みたいにメルラン先生を探索魔法で探す訳にはいかなかったんですか?」
エリナの質問にエリスも同意するように頷いていた。
「無茶言うな。探索魔法はあくまで自分の魔力を全体に行き渡らせる必要があるんだ。そのうえで一致する相手を見つけ出せるんだが、俺の場合、広げると同時に目当ての存在を探すから、近辺にいる時以外は基本的に使わないし、範囲内にいなかった時の魔力消費量は相当削られることになる。だから、メルラン先生のように居場所に目星がついてるなら使わない方が早い。とはいえ、いなかった訳だし使うしか無いんだがな……」
だが、案の定、メルラン先生の居場所は探索魔法じゃわからなかった。




