41話 明日に備えて11
「ただいまぁ……」
「お帰りなさいませ、旦那様。随分とお疲れのようですね」
「カナデに見つかってユリウスが最近全然仕事しないから公務が滞っているってずっと愚痴られてさ……」
「王妃様にですか?」
「そうそう、こっちも結構魔力消費したからさっさと帰りたかったんだが、それだとアリス一人に負担をかけちまうからな。ところで飯は?」
「旦那様のお帰りが遅かったので、お嬢様方は既にお済ませになっております。旦那様の分もすぐに準備いたします」
まぁ、予定だとさっさと送って帰るつもりだったし、連絡もしてないうえに帰りも転移魔法で帰ったし仕方ないか。
「わかった。風呂に入ってくるからその間に飯の用意は頼むよ。それと悪いんだけどさ、思った以上に魔力消費したし、早く休みたいから話はまた明日以降にしよう」
「かしこまりました。それでは食事の用意をして参ります」
「疲労も吹っ飛ぶくらいの美味い飯を期待してるよ」
「それでは腕によりをかけて作らせていただきます」
こちらに優しく微笑み、厨房の方へと向かっていったクリスを見送り、俺は風呂の準備をするべく自室へと向かった。
その後、俺は溜まった疲労を風呂場で洗い流し、さっぱりとした気分でクリスの作った豪勢な食事を堪能した。
かれこれ十年以上も味わっているというのに一切の飽きを感じさせないクリスの料理は、そのどれもが丁寧な下ごしらえと熟練の技で丹念に調理されているのがはっきりとわかる美味しさだった。
空腹で唸っていた俺の腹もいつの間にか満足していくと、俺は急激な眠気を覚えた。
最近まともに眠れなかったうえに、今日の戦いではティガウロとクレフィを相手にルーンまで使用したんだ。
腹も膨れりゃ、眠くなるのも当然と言えた。
「すまんが、そろそろ休むとするよ」
時刻はまだ八時にもなっていない。
寝るには早すぎると言えるが、疲労の残った状態で戦える程、明日の相手は甘くない。
むしろ万全の状態で勝てるかどうかも怪しいレベルだ。
早く寝といて損は無いだろう。
そんな訳で、俺はクリスにおやすみと告げて、自室へと戻った。
自室には一人で寝るには少し広すぎるとも思えるようなベッドがあり、クリスが毎日ベッドメイクしたことによってふかふかの寝心地を維持している布団が、俺をいつものように迎え入れてくれる。
だが、この日ばかりは何故か先客がいた。




