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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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39話 屈辱5


 合図が鳴ると同時にユミールが左手に持っていた弓を引いた。エリスの見たことがある弓よりも長い弓がユミールの華奢な腕に引かれ、今にも矢を放とうと、射手の合図を待つ。しかし、そこに矢は入っていなかった。

 直後、ユミールの口が言葉を紡ぐ。

「フラッシュ」

 エリスの視界を一瞬で埋め尽くす光。先程のルーンを持っているという衝撃的な発言と、矢の無い長弓を引いた衝撃で、選択肢が狭まっていたことをエリスは早々に理解した。

(すぐに立て直さないと……)

 視界を奪われようと、動かなければ方向感覚が狂うことは無い。光が自分の視界を埋め尽くす一方で、相手が動いたような音はしなかった。

 歓声や罵声が選手の集中を乱さないように設けられた結界は外界の音を遮断する。以前、罵声のせいでベル相手に実力の半分も出せなかったアボウという青年のような被害者を今後出さないべく、マルクトが提案し、結界を張ったのだった。

 エリスは何度も何度も放ってきた魔法を無詠唱で発動する。

 光で視界は閉ざされた。だが、相手の位置はわかる。ならば全力でそこに撃ち込むだけ。

「食らえぇえええええ!!!!」

 エリスの周りに漂っていた氷の礫が炸裂した。しかし、エリスは手応えを感じなかった。

 念の為にそこら一帯を狙ったというのに、防がれるどころか避けられた気配すらうかがえなかった。そんな状況に驚いていると、急にお腹に強い衝撃を受け、エリスは地面に転がった。

(何!? 今の!?)

 殴られたような感覚に近かったが、近付かれた気配はしなかった。明らかに何かがおかしい。

 再び襲い来る衝撃に胃の中のものが込み上がってくる感覚を覚えた。何が起こっているのかわからないが、とりあえずこのままだとまずいことだけはわかった。エリスは魔法を発動する。

 正面以外の方向に氷の障壁を張り、エリスは前方からの攻撃を防ぐべく、腕を胸の前に交差した。

 しかし、エリスは背中に衝撃を受け、前のめりに倒れ、膝をついてしまう。

 背中に受けた衝撃は強烈で、エリスは痛みにもだえ、咳き込んでしまう。

 後ろは守っていたはずなのにと、エリスは涙目になりながら思う。その時、不思議とマルクトに教えられた魔法の一つを思い出した。


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