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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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38話 マゼンタ最強決定戦10


 俺とメルランが初めて出会ったのは六年前だった。

 魔導学園エスカトーレの卒業と共に高等部一年の担任を任せられた俺の耳に入った一つの噂。

『電撃姫が高等部に進学した』

 まだ入学したばかりなのに大層な二つ名だなとは思いつつも、別に自分の生徒じゃなければなんでもいっかと思い、廊下を歩いていた。

 すると、後ろから声がかけられた。

「あなたが私の担任ですわね。貴方に勝負を申し込みますわ!!」

 奇麗な茶髪のお嬢様ってのが最初の印象だった。高飛車な感じで見るからに面倒そうだなと思い、俺は最初、彼女からの勝負を断った。

 腰抜けだとか弱腰だとか色々言われたが、俺はそんな評判どうでも良かった。でも、彼女はその一回で諦めてはくれなかった。

 授業が終わる度に勝負。昼食を屋上で食べている時に勝負。果ては家まで乗り込んでくる始末。

「別に俺じゃなくても対戦相手はいくらでもいるだろうに……」

 内心鬱陶しいと思っていた彼女に俺はそう聞いた。するとーー

「私は強くならねばならないのです。貴族としての地位を取り戻す為にはもっともっと強くなって、私は国王陛下直属の近衛騎士にならなくてはならないのです。そして、弟達を養わねばならないのです!!」

 なんでも彼女は、例の感染病によって貴族の称号を剥奪された家の娘だったそうだ。間接的に父親が関わってしまっていた為、そういう処置になったが、まだ未成年の子どもにとっては辛い話なのだろう。見かける度に一人だったのは、それが原因で友達からも距離を置かれたからなのだろう。

「先生の噂は聞きましたわ。なんでも最強の世代で上位クラスの実力者だとか……そんな先生に勝てば私も……」

「……なるほど。それが俺を執拗に狙っていた理由って訳か……」

 最強の世代。マルクトとユリウスの二人がしのぎを削っていた頃に、いつの間にかそんな名前が定着した。俺なんて魔法の火力が無いからほとんど策ありきで三位の座にいたんだが、なんで俺まで強いってイメージになっているのかまったく見当がつかなかった。でも、こんな俺に勝った程度で彼女の目標に大きく貢献できるというのであれば、それも吝かではない。

「いいよ。俺で良ければ相手になるよ」

 そう思い、彼女との勝負に付き合ってあげることにした。

 しかし、状況は俺が思っているのとは違う方向に向かってしまった。

 何故か俺が勝ってしまうのだ。

 攻撃が単調すぎて当たる気しないし、罠には簡単に引っ掛かるし、おまけに手を抜くと怒られるし、抜かなかったら抜かなかったで、観戦者が俺のことを最低だなんだと言ってくる。

 でも、彼女がそれで諦めることはなかった。事あるごとに挑んでくるし、結局卒業まで彼女は俺に勝負を挑んできた。

 だが、彼女が高等部時代に勝てなかったのは俺だけということで、彼女は当初の目標であった近衛騎士にスカウトされていた。

 だが、何故か彼女はそれを断った。

「なんで断ったんだ?」

 ある日の夕方、近衛騎士の話を断られたとユリウスに愚痴られた翌日に、俺は彼女を呼び出して聞いた。

 夕陽が彼女を照らす。そこに初めてあった頃の高飛車な面影は見受けられなかった。

「私にとっての生きる指針は先生ですから。先生が私の先生じゃなかったら私は多分とっくの昔に壊れていたと思うんです。だから先生と同じ道を歩みたいと思います。先生がしてくれたように、私のような面倒な子を見捨てず、共に寄り添ってあげられるような先生になりたいんです。だからカトウ先生、五年間お世話になりました。それから今度は同僚として、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします」

 正直、彼女の言葉が予想外だった。

 彼女にとって俺はただの壁なんじゃないかってずっと思っていた。いつもツンケンとした態度を見せて、目の敵にされて恨まれてるんじゃないかってずっと思っていた。

 彼女が俺の前で笑顔を見せたのは初めてだったかもしれない。クラスメイトと笑う姿はちょくちょく見るようになった。でも、彼女は俺の前では絶対に笑顔を見せなかった。

 その笑顔を見た瞬間、俺は思わず涙を流してしまっていた。

 教師として自分がちゃんと出来ていないんじゃないかって不安だった。

 だから、本当は俺の方が彼女に言いたかった。


「俺の歩んだ道が間違ってるんじゃないってお前のお陰でそう思えた。お前が俺の初めての生徒で良かった。ありがとう、メルラン」

 俺はメルランの頭を撫で、その言葉を伝えた。

 あと少しで俺の試合が始まる。その前にやらなきゃいけないことがある。

「おい、どうせ何処かで聞いてるんだろう? お前達からの提案を受けてやる。だから、もう一つ俺の願いを叶えろ」

 直後、どこかから含み笑いのようなものが聞こえてきた。

「いいよ。君の頼みは叶えてあげる。その代わり……わかっているよね?」

「あぁ……マルクトは俺に任せろ」

「ふふっ、契約成立だ。襲撃は明日の朝に行うものとする。君の健闘を僕達はおおいに期待しているよ」

 その言葉を最後に、声の主の気配は消えた。

「悪いな、マルクト……」

 俺はここには居ない親友に向けて謝罪の言葉を告げ、天幕を出た。


 申し訳無いのですが、一旦ここでまたもや中断します。理由は2つありまして、一つは大幅な予定変更を余儀なくされたので、少しこっからの話を改善する必要が出てきたため、プロットを練り直す必要が出てきたからです。

 2つ目は、現在裏で執筆している小説を本気で完結させたいからです。

 この作品は好きだからこそ、ゆっくりじっくりとより良い小説に昇華したいので、ご了承ください。再開は4月頃になると思います。


・5月23日追記

 まずは4月頃とか言っておきながらもう6月になりそうな時期に再開することになってしまい、誠に申し訳ありませんでした。

 明日から再開させていただく訳なんですが、投稿前に2、3報告があります。

 まず第一に投稿時間の変更です。

 今までは0時に行ってきましたが、私の職務時間が夜の23時までなのもあり、最後の編集に費やす時間が取れない為、投稿は8時半頃と9時半頃に1000文字ぐらいのものを投稿するつもりです。

 なんだかんだで1年半もこのスタイルでやってたら1000文字ぐらいで区切るのが定着しちゃったんですよね。

 まぁ、時間の多少のズレは見逃していただけると嬉しいです。


 それからこの話の最後で謎の存在が今日の夕刻とか言ってましたが、訂正しました。

 あの時はまだ全然話が出来て無かったんで、今から夕刻にすると、今度は1ヶ月じゃ足りなくなるんで。

 そういう訳で、未だに待っていてくださる方がいるかは甚だ疑問ではありますが、また頑張って投稿していこうと思いますんで、何卒宜しくお願い申し上げます。


 

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