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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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35話 傷ついた少年4


「うんま~!」

 エリス、エリナ、メグミ、アリス、ベルの五人は席をくっつけあい、一緒に昼食をとっていた。

 ベルの美味しそうに食べる姿を見て、四人は笑みを見せる。

「美味しいですか?」

「うん!」

 アリスの質問にベルは満面の笑みで頷いた。

「ふふっ、魔法とかの才能が尖っててすっかり忘れてましたが、まだ五歳の女の子でしたものね。こういう年相応のところはやっぱり可愛らしいですね」

 その言葉をアリスが何気なく告げた瞬間、四人の視線がアリスの方に向けられる。その表情には微かだが、驚きが見受けられた。

「……どうかなさりましたか?」

 自分の発言がなにか気に触ったのかと四人に尋ねるアリス。その答えはお子様フォークを持ったまま両手を上げて、怒ったような仕草を見せるベルの口から放たれた。

「ベルもう六歳だよー!」

 その言葉を聞いたアリスは、口元に手を当てながら驚いた表情を見せる。

「そうなのですか? ……ということは誕生日パーティーはもう終わってしまわれたのですよね……うぅ……誕生日パーティーにはわたくしも呼んでほしかったですぅ……」

 アリスの発言を聞いたエリスが「そういえば……」とつぶやきながら指を顎に当て、フォークでお肉を刺して口に運ぶベルに視線を向けた。

「ベルちゃんっていつの間にか六歳になってたよね? せっかく友達になったんだから私達も呼んで欲しかったな~」

「そうですね。誘っていただければ細やかではありますが、誕生日のプレゼントをあげましたのに……」

 エリスの言葉にエリナが同意するように頷く。

 しかし、ベルはお肉を咀嚼しながら首を傾げた。そして、お肉を飲み込むと、彼女は口を開いた。

「……誕生日パーティーってなぁに?」

 その言葉を聞いた瞬間、エリス、エリナ、アリスの三人が目を見開いた。

「嘘っ!? ベルちゃんって先生の妹なんだよね!? 先生とかに開いてもらったことないの!?」

 エリスのその言葉に同意する訳ではないが、エリナとアリスの二人もベルが誕生日パーティーを知らないことに疑問を抱いていた。

 しかし、メグミだけはクリストファーから色々と話を聞いていたので特に驚いた様子は見せず、ベルの口回りをハンカチで拭いていた。


 マルクトは物心ついた頃から、誕生日を祝ってもらったことがない。だから、マルクト自身が誕生日を祝う機会がなかったらしい。

 そして、彼自身が誕生日には一日中家を開けている為、メグミも数ヶ月前の彼の誕生日を祝うことが出来なかった。

 そして、ベルの誕生日に関してはそもそもベルとカトレア、メグミ以外にその日だということを知らない。そういう理由があって誕生日パーティーは開かれなかった。とはいえ、カトレア自体は誕生日パーティーをして祝ってあげたかったらしく、数日前からマルクトに知らせようとはしていた。

 だが、それは叶わなかった。

 何故ならマルクトがベルの誕生日当日までクリストファーによって監禁一歩手前の状態でずっと忙しそうに仕事をしていたからだ。さすがのカトレアもそんな彼に、誕生日パーティーに付き合えとは言えず、結局三人で祝うことになった。


「マルクト先生は研究所のことだったり教師としてだったり、他にも色々とやることがあって忙しいらしく、食事と特訓の時以外は基本的に自室から出ることはありません……そういう理由もあってベルちゃんの誕生日は祝えなかったんだと思います」

 そう説明するが、三人の表情は怪訝そうなものだった。

「それって兄としてどうなんだろうね?」

「お兄様でも私の誕生日には公務を投げ出してでも祝ってくださりますのに……」

「ベルちゃん可哀想……」

 エリス、アリス、エリナの三人が勝手なことを言ってくるが、彼女達はベルが魔王という立場であることを知らない。

 まだ一年すら経っていないこの偽りの家族の間に三人のような兄妹の絆なんてあるはずないのだ。

 自分もベルも、所詮はマルクトにとって他人でしかないのだとメグミはつい思ってしまう。

 だが、それでも彼が自分達に居場所をくれた存在であることに違いはない。彼がいなければきっと自分もベルもここにはいられなかった。大切な友人と思える彼女達に出会うことなんて出来なかった。

 だから、そんな大切な友人達に、彼を誤解してはもらいたくなかった。

「……そんなこと……言わないであげてください……」

 メグミの目から涙が滴り落ちたことで、三人は息を飲んだ。

「先生は……私やベルちゃんがこの学校に通えるようにするために仕事してるんです……私達が遊んでる時も、寝ている時もずっとずっと仕事してて……私達を養っているせいでだいぶ無茶しているはずなのに……本当は教師をやっている暇なんて全然ないはずなのに……それでも私達には絶対に弱音を吐かないんです……だからお願いします……先生を……先生を悪く言わないでください……」

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