31話 準準決勝の開始4
『皆さんおはようございます! 校内戦、準準決勝が今日から始まっていくのですが、本日は残念ながら豪雨のため、巨大な天井が広がっております。どんよりとした天気ではありますが、私達のテンションまで下がってはいけませんよ! 今日は雨を降らす雲なんて吹き飛ばすくらいの声援を送っていきましょう!! 本日の実況は決勝トーナメントの実況全てをカルマ学園長に丸投げされた魔導学園一年主任のマイヤーズが行って参ります!! そして本日解説席にお越しいただきましたのは、前年度までマゼンタ最強決定戦で五年連続優勝という実績を誇り、高等部時代には、四大竜王の一角、灼熱竜を倒すという功績を残しているカトウ・テツヤ教諭です! 本日はよろしくお願いいたします』
『ええ、よろしくお願いします』
『カトウ教諭は、先日のエキシビションマッチにおいて、マルクト教諭に惜敗していましたが、やはりマルクト教諭は強かったですか?』
『いきなりそのこと聞いてきます?』
『まぁ、まだ生徒が出てくるまで時間がありますからね』
『はぁ……。まぁマルクトは強いですよ。俺、あいつに勝てたことないですからね。まぁ、研究者気質が戦闘欲より強いから最強決定戦には出てませんけど、出てたら優勝してますよ』
『そうなんですね。やはり黒ランクは伊達ではないということなのでしょうね』
『まぁ、黒ランクだけだったら対処法はいくつかあるんですけどね……』
『ほほう、それは実に興味深いですが、……先程から凄く視線を感じるのでこの辺でやめておきましょう……』
『その方が賢明ですよ。それに、そろそろ時間ですしね』
その発言がカトウの口から放たれた直後、観客席から大歓声が沸き上がり、全員がフィールドに現れた二人の生徒に視線を注いだ。
そこに立っていたのは、二本の剣を腰に携えた薄紅色の髪が特徴的なツリ目の少女と、銀色の長髪を靡かせた少女だった。
それは、少し前の予選決勝でも行われた対戦カードではあったものの、一つだけ異なる点があった。
銀髪の少女の腰に細い剣が携えられていたのだ。
確かに、前回の対戦ではエリスも剣を使っていた。だがそれは、魔法で作られた氷の剣で、元々は素手だった。
それが魔法同士の派手な撃ち合いを期待していた決勝トーナメントから見始めた者達からはヤジが飛び交ってくる。
だが、誰も止めはしない。どうせ見ればすぐにその考えを彼らは改めるであろうから……。
実際、フィールド内にいる二人の少女は、静かに自分の呼吸を整えている。
きっと、ヤジの声すらも聞こえていないのだろう。もうじき鳴り響く試合開始の合図を待つだけ。言葉による会話は必要ない。
『皆さんお待たせいたしました! これより校内戦準準決勝第一試合、試合開始です!!』
実況のマイヤーズがそう言った瞬間、二人の少女は己の腰に携えていた剣を引き抜き、地面を蹴って互いに距離を詰め始めた。
アリサの剣は短身ではあったものの、前回とは異なり、二本使っている。
そして、エリスの剣は細身ではあったものの、一メートル程の長さを誇っていた。
剣と剣が交わり合い、甲高い音が辺りに響きわたる。
剣と剣が激しくぶつかり合い、互いに魔法を使ってはいないというのに、魔法の撃ち合いを期待していた観客の視線は二人の剣戟に釘付けになっていた。
だがこれは、前回までと同じ。そして、ここからが新しい戦いだった。




