31話 準準決勝の開始2
「お久しぶりです。マルクトの旦那! 本日はどんなご用件でしょうか?」
「な……なんであんたがここにいるのよっ!!」
マルクトとエリスが外に出てみると、そこには一人の男性が立っていた。そして、その人物はエリスも知っている人物だった。
その男は体格がよく、腰に剣を携えている男だった。
彼はカムイと言って、五月にあった魔導フェスタの日に、アリサと共に攻めてきた男だった。
エリスとエリナが協力して倒した男で、他の奴らとは違って、実力で魔物からの攻撃を避け、捕らえられるはずだったのを、アリサ同様マルクト達で匿っていた。
その後は、その才能と人当たりの良さを見込み、マルクトが個人的に雇っているのであった。
「やぁカムイ、結構久しぶりだけど、バカ共の教育ばっかりで腕が鈍ったなんか言わないよね?」
「もちろんです。マルクトの旦那に頼まれたバカ貴族の息子共を鍛え上げる仕事で、俺も自分を鍛え上げてますからね。そっちのエリス嬢と戦ったあの日よりも強くなっていることを保証しやすよ」
「それを聞いて安心したよ。エリス、今回の修行相手はカムイだ。彼相手に魔法を使わずに戦え」
そう言ったマルクトは、クリスが持ってきた木刀を二人に渡す。
「カムイ、遠慮はいらん。本気で相手しろ。ただし、突き技は禁止だ」
「……いいんですか、マルクトの旦那? ……エリス嬢が怪我しやすよ?」
「構わない。死にさえしなけりゃ俺がどんな傷だって治してみせるさ」
「それを聞いて安心しやした。では、エリス嬢、貴女のお相手は俺が務めさせていただきやす」
「……なんであんたとやんなきゃいけないのよ……」
「エリス、カムイはアリサより強いぞ?」
明らかに不満そうなエリスを見て、マルクトはそのことを教える。その言葉でエリスはマルクトの意図を理解し、カムイの対面に移動して、剣を構えた。その表情は不機嫌ではあったものの、この状況を受け入れた様子だった。
「いきやすよ」
「……よろしく……」
こうして、エリスとエリナの修行が開始された。
◆ ◆ ◆
校内戦の決勝トーナメント二回戦は全員危なげなく勝利した。……ただ、二回戦の最終戦、アリサが攻略されかけた。
アリサは魔法が苦手で、実際最低ランクではあった。それでも今までは剣の腕と風属性の魔法で相手を瞬殺していた。
ただ、二回戦の相手が地属性の魔法が得意だったこともあり、長期戦を強いられ、二十分にもおよぶ長期戦を、アリサが死力を尽くしてなんとか勝利していた。
そして、三回戦目の相手が貼り出され、『クレフィVSベル』、『エリスVSアリサ』の試合が決定した。




