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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第6章 校内戦編
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28話 校内戦の予選1


 魔導学園エスカトーレの校内戦がこれから行われるという時刻になり、エリス、エリナ、ベルの三人は自分たちの対戦相手を見るためにトーナメント表で自分たちの名前を探していた。

 でかでかと貼り出されたトーナメント表は全部で八つあり、五百を越える名簿の中から自分の名前を探しだすのは予想以上に大変で、今年が初参加の三人はこれ程までに苦痛の作業だとは思っていなかった。

 他の生徒は既に見終わっているのか、他に見ている者はいなかった。

「……やっぱりお姉ちゃんみたいに戦いの直前に対戦相手を知りにくる人はいませんね~」

「しょうがないじゃん! まさかこんなに大きなトーナメント表だとは思ってなかったのよ!」

「だからって誰と当たるかは本番のお楽しみ~って私達を巻き込まないで欲しかったよ」

 そんな言い争いを姉妹同士でやっている中でも、ベルは自分の名前を探していた。

 そんな時だった。


「お前ら、マルクトって教師の生徒か?」

 トーナメント表で名前を探している三人に後ろから声がかけられた。

 その人物は大柄な男で数人の取り巻きを連れており、制服に刻まれた校章は薄紫色に変化していた。

 魔法ランクが薄紫ということを教えてくれたことで、エリナの頭にその人物の名前が浮かび上がる。

 エリナは姉のエリスに耳打ちする。

「あの人五年生の先輩だよ。前回の校内戦で三位だった実力者で、今回の優勝候補筆頭に名前が上がってる人。確か名前は……アホウさんだったかな?」

「アボウだ! ア・ボ・ウ! 失礼だぞ! 人の名前を間違えるのは!」

「そうだよエリナ、名前を間違えるなんてアホウさんに失礼だよ。ちゃんと謝った方がいいよ」

「すいませんアホウさん」

「アボウだっつってんだろうが! 姉妹揃って人の名前で間違えてんじゃねぇよ!」

「ところでそのアホさんがなんでこんなところに?」

「せめてウは入れろ? もうアホウでも何でも構わないから、せめてアホだけはやめろ? ……ってこんな茶番するために俺はここに来たんじゃねぇ! ベル・リーパーって一年はどこにいる? お前ら双子姉妹と一緒のクラスなんだろ?」

「ベルちゃん? ベルちゃんならずっとそこで自分の名前探してますよ? 私達が遊んでいる間も熱心に」

「はっ? まさかそのちびがベル・リーパーか? まだ二桁にすらなってねぇだろ?」

「確か六歳だったよね?」

「ええ、それでアボウ先輩がベルちゃんに何の用でしょうか?」

「…………Dブロック初戦の枠を見てみな」

 アボウに言われたところを三人は見てみる。

 そこにはベルの名前が刻まれているのと同時に、アボウという先程まで鉄板ネタに付き合ってあげた先輩の名前があった。

「付き合ってもらって悪いんだが、悪いことは言わねぇ。棄権しとけ。俺に初等部くらいのちびをいたぶる趣味はねぇ。……もうすぐ対戦の時間だ。急いだ方がいい」

 そう言ったアボウは試合会場に向かっていった。


「……あんなこと言われたけど……どうするベルちゃん?」

師匠(せんせい)にベルの成長したところを見てもらうためにいっぱい頑張る!」

「そうですね。ベルちゃんは強いですから、絶対勝てますよ! 頑張ってください!」

「頑張ってベルちゃん! 初戦で緊張するかもしれないけど、私たちもマルクト先生達と一緒に観客席で応援してるからね!」

「うん! ありがと!」

 無邪気な笑顔を二人に向けた少女の胸には、濃紫色の校章が輝いていた。


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