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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第6章 校内戦編
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27話 校内戦の開幕5

 だがそれはマルクトがおとなしく従っていた場合の話である。

「とうちゃ~~く!」

「「「マルクト先生!?」」」

 そんな暢気な声を発しながら突然現れた白衣の青髪教師に、予期していたカトウ以外の全員が驚いた声を上げた。

「すいませんねエリカさん……野暮用で抜けられなかったんでこんな形の登場になっちゃいました」

「いや別に構わないんだけど……先生は大丈夫なんですか? 仕事があるんじゃ……」

「大丈夫ですよ~ちゃんと説得しましたし~」

「へ~私はマルクト君がここに来ていいなんて許可してないんだけどな~」

 エリカの背後から私服姿のマリアがそんなことを言いながら顔を覗かせたことでマルクトの表情が一気に青ざめる。

「マリア!? お前今日は俺の前で飲みに行ってくる~とか言ってた癖にこんなところで何してる!」

「マルクト先生……ここも一応飲み屋なんですけどね……」

「お姉ちゃん……面白いところなんだから茶々いれないでよ!」

「……はい」

 エリナとエリスのやり取りが横で行われていてもお構い無しに二人が口論し始める。


「ねぇカトウ先生……マリアさんってマルクト先生のこと……好きなんだよね? なんであんなに口喧嘩するの?」

「そりゃあ互いに互いをよく知ってるからだろ。マリアはマルクトを喜ばせることよりも、幻滅させないことを重視しているからな。マリアがマルクトに言い寄っていた高等部時代は猛烈なアタックが多かったけど、すぐにマルクトがそういうのを求めている訳じゃないことを知ったんだそうだ。あの頃のマルクトにとって、他人は邪魔な存在であるか否かという単純なものだったから、勉強の邪魔ばかりしてきた最初のマリアをマルクトは良い目で見てなかったなぁ。俺とユリウスは彼女の好意を受け入れないマルクトに疑問を抱いたけど……まぁ……今の二人を見ていると、案外パートナーとしては悪くないんじゃないか?ほら最高のパートナーってやつ?」

「……パートナー?」

 そう言ったエリスはマルクト達の方を見る。


「人が頑張って権利を勝ち取ったんだから今日ぐらいいいだろうが!」

「何が頑張ったよ! こっちはあんな下らない茶番劇見せられていらいらしてんの! だいたい最初の撃ち合いはマルクト君なら絶対圧勝出来てたでしょ! 解説やってる子があんなに頑張って褒めてるの見てたら涙出てきたくらいよ!」


「……最高の……パートナー?」

「……いずれそうなったらいいな……まぁ、マルクトも昔に比べれば、他人と接する機会が増えたお陰か前より面白くなったな……」

「え? マルクト先生の高等部時代のお話? 聞きたい聞きたい!」

「おっそうか? じゃあ俺とマルクト、それからユリウスがどういう経緯で出会ったかという話をしよう。あれは今から十年くらい前の話だ……」


         ◆ ◆ ◆


 高等部の入学式をうきうき気分で終えたカトウ少年は、今日から魔法を学べることの嬉しさで舞い上がっていた。


 謎の爆発でこの国に飛ばされてきたカトウ少年は偶然出会ったマルコフという初老の男にある程度の言語を学んでいた。

 マルコフはカトウ少年が薄紫という魔法の才能を持っていたため、先行投資という形で色々なことを教えてくれたうえに、数ヶ月の期間で言語とある程度の常識を学んだカトウ少年に魔導学園を勧め、入学資金も貸してくれた恩人でもある。


 こういう過程を経て魔導学園エスカトーレにやって来たカトウ少年は、その日、運命的な出会いをする。

 不安だった高校生活。知り合いなんて誰もいないと思われるその教室には、先日助けてくれた少年がいた。

 綺麗な青色の髪を適当に整えただけの少年。白い制服に身を包んでいる彼は、教室の角にある席に座っていて頬杖をつきながら、空を見ている。

「ねぇ私ライラっていうの! よろしく! 君はなんて名前なの!」

 マルクトと先日名乗っていた少年に、少女が話しかけているのが立っている扉から見えた。

「……あれ? もしかして寝てる? お~い」

 自分に何度も話しかけるクラスメイトの言葉をまるで聞こえていないかのように反応しないマルクトに苦笑いしつつ、彼のところに歩み寄る。

 そのクラスメイトは怒ったようにどこかへ行ってしまうが、それを気にした素振りすら彼は見せなかった。


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