21話 支配者との戦い9
「おいおい、ありゃやばいだろ!」
ぼやいたカトウは、顔を真っ青にしながら走る足を更に速めた。
雷の直撃はさすがにまずい。こうなってくると、子どもたちが無事であることを願いながら、全力で走るしかなかった。
全員の無事が確認できない。
その時、キャンプ出発直前にもらったサテライトのことを思い出した。
「……確かこれって、魔力が常時流れて通信を送ることなら可能だったはず」
急いで、懐から球状の魔法具を取り出し、あの場にいる誰かに通信を送った。
しかし、
「なんで誰も出ない!」
カトウは、エリスやエリナ、他のメンバーに向かって通信魔法を発動させてはみるものの、誰も出はしなかった。
ただ、応答はしないだけで、向こうに届いてはいることから、彼女たちが生きていることはわかった。
『あれ? カトウさんどうかしたんですか?』
『ティガウロか!!』
最後の頼みの綱であるティガウロに連絡を取ると、ティガウロはすぐに反応した。
『すいません。声に対応してなかったんで大声出すのちょっと待って……耳が痛いです。……もう大丈夫ですよ。それでどうかしたんですか?』
『そいつは悪かった。だが、緊急事態みたいなんだ。さっき雷落ちたの分かるか?』
『あ~、さっきのやつですね? なんか近くで落ちたみたいですね。音に驚いて起きてしまいましたよ』
『……ということは、今何が起きてるかわかんないんだな?』
『何かあったんですか?』
『緊急事態だ! 実はーー』
その次の言葉を紡ごうとした瞬間、カトウは背後から攻撃を受けた。
警戒を怠っていれば、間違いなく命に関わる大怪我を負っていただろう。
咄嗟に手放したサテライトが電撃鞭で粉々になるのを見ながら、カトウは舌打ちした。
その手に握った銃を構えた先にいたのは、サテライトを粉々にした電撃鞭を握ったメルランだった。
何が起こった?
なんでメルランが電撃鞭で俺を攻撃するんだよ!?
こんなこと今まで一度も…………いや、あったな。そういえば、わりとたくさんあったわ。
不満がある度に、電撃鞭振るってくるからな~あいつ。
だが、今回に関しては何もやってないよな~?
「ちょっ!? あぶねっ!」
再び、無言で鞭を振るうメルラン、しかし、その様子が普段とは異なっていた。
いつもなら、何かしら不満を言いながら、鞭を振ってくるというのに、今回に至っては、無言で振っている。
「おい、メルラン! さすがにこの状況で攻撃するの止めろ! いったい俺がなにをしたって言うんだ!」
「ち……違うんです! なんだかよくわからないんですけど、体が勝手に!」
そう言いながらも、鞭で攻撃してくるメルランに、さすがのカトウも、これが冗談でやっているものじゃないということには気付けた。
体が勝手に動く。
マルクトのルーンに相手の体を使用者の意思で動かすことができる技があったな。
しかし、マルクトにはそれをこのタイミングでやる意味がない。
ただ、ひとつだけ可能性がある。
シーガル・マルキュディスの存在。
プランクのボスをやっていたあいつは、マルクトの話によると、ルーンなるものを持っていたらしい。
マルクト相手に、ユリウスへと変身することで、ユリウスが持つ技や能力を使ってみせた。
マルクトと戦ったと聞くそいつは、その時の戦いで遺体が見つかっていない。
それはつまり、今回の戦いでは、マルクトに変身し、メルランを操っているということだろう。おそらく、俺を操ろうとしていたのだと思う。
だが、マルクト曰く、相手の体を操るあの技は、なぜかルーンを持っている相手には使えない。そのうえ、付近にいないと効果が発揮されない。と酒の席でぼやいていた。
要するに、俺は大丈夫だ。
カトウが横目で、もう一人の方を見てみると、アリサは隠し持っていた双剣をカトウに向けて構えていた。




