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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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21話 支配者との戦い4

「どうしたの先生? ぼ~っとしちゃってさ~。どんなに考えても無駄だよ。先生じゃこの紋章が何かわからない。だってそれは、僕達だけの力だからね!」


 マルクトは、ソラの行動を冷静に観察するが、どうにもおかしいと言わざるを得なかった。

「……わかった。お前との勝負受けてやるよ」 

 煽るように言ってくるソラの言葉に乗せられた訳ではない。

 早くレンを解放するには、これ以上無駄に時間をかけるわけにはいかないと感じたから受けた。

 ただ、それだけだった。


 ソラは、マルクトの言葉を聞いた瞬間、口角を吊り上げ不気味な笑みを再び見せる。

「やった~。これでやっと目的を果たせるよ~」

「……ただし、俺はお前を殺さない。俺は教師として、お前に勝ってみせるさ」

 マルクトは風で靡く白衣に手を突っ込んだまま言い放った。

 その言葉を聞いた瞬間、初めてソラの顔に怒りの色が見えた。


「………甘ったるい人間だ。その甘い考えでどれ程の人間たちが傷付くか想像も出来ないんだな」

「なんとでも言え。俺は教師だ。教師として生徒たちを守る。それが俺の教師としての信念だ。例え、敵になったとしても、どんなに絶望的な状況であっても、生徒を守ってみせるさ」

「……いいだろう。やってみるがいい。…………それじゃあ先生。僕の踏み台になってよ!」

 その言葉を皮切りに、二人の戦闘が始まった。


         ◆ ◆ ◆


「デストランジション!!」

 ソラが放った闇属性の魔法、『デストランジション』に、マルクトは違和感を覚えながら、自分の中で放つ魔法を練り上げる。

「シャイニーレイ」

 マルクトは、冷静に、かつ慎重に無詠唱で光属性の魔法を放つ。

 ソラの放った『デストランジション』と、マルクトが放った『シャイニーレイ』は、お互いから離れた位置でぶつかると、相殺して消えてしまった。


「あはっ、さすが偉大な魔法使いとまで呼ばれた男、さすがにこの程度では倒せないか!」

「当たり前だろ? まだまだ、子どもに遅れはとらんよ」

「ふふふ、今の僕が放った闇属性の魔法、それを相殺したのは先生が軽く放った光魔法、さすが後出しという分野において無類の強さを誇った人間だね。その多彩な魔法で相手が放つ魔法に対しての最適解を見出だし、先手を取ればその圧倒的な火力。こと魔法という分野において、その実力は世界最強の一角と呼ばれている。僕の記憶通りだね」

「……分かってるんだったら、殺し合いなんて挑んでくるな。俺が、殺人大好きの狂人だったら、お前は今ので死んでたぞ?」

「そうだね~。もしも先生が狂人だったら、間違いなく今ので僕は死んでたね~。……だからこそ、あんたは負けるんだよ」

「は?」

「分かってないね。僕が挑んでいるのは殺し合いであって、馴れ合いじゃない! …………ちっ、お前に主導権を渡したのは失敗だったな」

 ソラがいきなり苦しむように胸を押さえ始めた。

 大丈夫かと声をかけようとした瞬間、

「…………先生! 僕を殺して!」

 いきなり雰囲気が変わったソラはそんなことを言い始めた。


 さっきと言ってることが全然違う。さっきまで、あんなに大層なことを言っていたのに。その急激な変化がマルクトに混乱をもたらす。

「……いきなりどうした?」

「…………だからさ、生徒を守るって言うんだったら、さっさと僕を殺せよ! あんたは生徒を守ると大層なことを言ってるが、現に守れてないじゃないか! レンだって今も僕の力で侵食が始まっている。早くしないと本当に取り返しのつかないことになるんだぞ! 僕がこのまま生きてると人を殺しちゃうんだ! ……だから、早く殺してよ!!」

「……おいソラ、いったい何があった!」

 先程までのソラと雰囲気が全然違う。

 苦しそうな顔で、訴えかけてくるソラにマルクトはそれを聞かずにはいられなかった。

「…………母さんが死んだ。目の前で……僕が出した風は母さんを……斬った。…………命ごいする父さんは、嘲笑う僕が消し炭にした。……こいつは、僕の意識がある時に人を殺す! もう嫌なんだ! 人を殺すのを見るのはもう嫌なんだ! こいつは、人を殺すことで力を増してる。このままじゃ…………がはっ!?」

 泣きながら、その真実を打ち明ける少年を、心の中にいる()()()が内側から襲った。

 神妙な顔でソラの話を聞いていたマルクトだったが、ソラからにじみ出た妖気が警戒心を高める。

「…………まったく、余計なことをしてくれた。我輩の善意を棒にふりおって、今後一切貴様が表に出れることはないと心得よ。貴様は既に、我輩の支配下なのだからな」


 それは、今まで混同していたソラでも、純粋なソラでもない、もう一つの人格。

 禍々しい妖気を放ち、その姿も先程までのソラではなかった。

 目は赤く光り、髪の色は黒から脱色したように真っ白になっていた。

 人間の姿をしているが、明らかに人間とは思えなかった。

 マルクトは先程、ソラは心の中で化け物を飼っていると比喩したが、それは当たってもいるし、外れてもいた。


 確かに、ソラの中には化け物がいた。

 しかし、支配権は化け物にあった。

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