20話 キャンプ10
「皆さん、今日はカレーとサラダを作りますので、今から役割分担をします」
川で水遊びをした六人、レンはユウキをテントに寝かしつけにいってから、どこかへと行ってしまった。
まぁ四人とも、レンにそこまで期待していなかったのでいなくなろうが、どこに行こうがどうでも良かった。
「では、エリスさんとエリナさんは、米を担当してもらえますか? 米はカレーに必要不可欠と言っても過言ではありませんからね。くれぐれも失敗しないでくださいよ!」
「ふっふっふ、国一番の食事処『Gemini』で米もよく炊いてたからね。その程度楽勝だよ! いくよ、エリナ! 美味しい米を炊いてみせるよ!」
「カレーは、本人の強い希望により、メグミさんが担当することになりました。よろしく頼みましたよ」
「任せてください!」
役割分担をしっかりと決め、各々がそれぞれの仕事をした結果、何の問題もなく、夕食の準備は終わった。
◆ ◆ ◆
夕食に入る少し前、ティガウロに肩を貸したマルクトが転移魔法で、食卓を拭いているエリナの前にやって来た。
「え? ……お兄ちゃんどうしたんですかその怪我!?」
エリナの視線の先にはティガウロの血まみれになったズボンがあった。
「エリナ、悪いんだけど、ティガウロはテント内で休ませるから、夕食は届けてやってくれ」
「そ………それはいいですけど、いったい何があったんですか?」
マルクトはティガウロに回復魔法をかけながら「いや、それがな」と、その時の状況を語り始めた。
◆ ◆ ◆
山の中に流れる清流。その川の上流の方に来たマルクト、ユリウス、カトウ、ティガウロの四人は、手ぶらではあったがやることは決まっていた。
「さて、目的地に着いたことだし、誰が一番魚を釣れるか勝負でもするか?」
先頭を歩いていたカトウが、川に着いた瞬間、後ろを振りかえって、俺たちに聞いてきた。
「……それは、構わないんだが、どうやって魚釣るんだ? 巣潜りしたって釣りにはならないだろ、釣竿はどうするんだよ?」
「おいおいマルクト、いったい何のためにティガウロを呼んだと思ってんだ? 釣竿一式造ってもらうために決まってんだろ!」
「……むしろ、そんな理由で僕って呼ばれたんですね」
「まぁ、そう言うなティガウロ。皆で楽しく釣ろうじゃないか」
ユリウスがティガウロの肩を叩いて、「だから、早く造ってくれ」と爽やかな笑顔で強要している。
「別に楽しむのは構わないんだが、勝負っていうんだったら容赦はしないぞ? 負けたらどうする?」
「優勝者の言うことをなんでも一つ聞くってどうだ?」
カトウの言葉に旋律を覚えて、「それは、負けたくないですね」と、いつもに比べて弱気な発言をするティガウロ。
「よし、三時間で一番釣れたやつが優勝で、一番釣れなかったやつが敗北者だな」
ユリウスがこう言ったことで、釣り勝負はスタートされた。
ティガウロは全員分の釣竿を造り終えると、皆と離れた場所で釣りを始めた。
「……ティガウロのやつ、なんで一人だけあんなところで釣ってるんだ?」
「……俺からしてみれば、なんでマルクトが俺の隣で釣っているのか、聞きたいんだが」
「そりゃあ、お前のカリスマが魚を惹き付けるんだろ? 高等部の時はそれのせいで、釣りの勝負をした時、ぼろ負けしたからな。少しだけあやかろうかとーー」
「今すぐどっか行け! お前がいると魚がどっか行くんだよ!」
「……いいじゃないか。なぜかどんな動物も俺に近付こうとしないんだよ。馬車の馬まで逃げだそうとするし、触ろうとすると首振って拒絶されるし」
あからさまにテンションが下がっていくマルクト。
動物はどちらかと言えば好きなのに、彼は動物たちに嫌われるという体質を持っていた。ちなみに、高等部に入る前は普通だった。
「……相変わらず変な特性持ってるんだなお前。それには少しだけ同情するが、今は離れろ! 勝負に影響するだろうがっ!」
「もうなんかあれじゃね? お前が怖すぎて近付こうとしないんじゃね? ほら、動物の本能とかそんなんが原因だろ?」
「……おいおい、なんでカトウだけそんなに釣れてんだよ」
対岸から話し掛けてくるカトウの網カゴには、多くの魚が入っていた。
対称的に、マルクトとユリウスの網カゴは空だった。
「あれじゃね? ユリウスのカリスマという特性で寄ってきたのはいいが、マルクトの特性、動物よけが発動して、近付こうにも、迂闊には近づけないから、結果的に俺が大量って訳だ!」
「……要するにあれか? お前は俺が釣る筈だった魚どもを釣っていたと?」
「マジ感謝!」
サムズアップしてくるカトウの顔がうざいのは、置いておくにしても、このままじゃ負けてしまうな。
……というか、この勝負今さらだけど、俺に不利過ぎるんじゃ。




