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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第5章 支配者編
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20話 キャンプ7


「マルクトさん、テントはここら辺に張っておけばいいですか?」

「悪いなティガウロ、お前にばかり働かせて」

「いえ、気にしないでください。テントなんてゴーレムたちに手伝わせれば、楽なもんですよ。ただ、あいつらに意思なんてものは存在しないので、こうして指示を出す必要がありますけどね」


 現在、昼を少し過ぎた時刻、キャンプ場についた俺たちは、テントを設営する場所にを来ていた。 

 この場に、ティガウロと俺以外の人物はいない。

 ただ、目の前で、ティガウロの指示に従いながら、テントを張るティガウロ特製の土人形(ゴーレム)がいるくらいだ。

 他のメンバーは、遊んでいるか、昼食用のバーベキューを準備している。

 ユリウス率いるコウ、カトウの三人が昼食用の肉を現地調達する予定なんだそうだ。

 いや、別に俺が食糧を用意してなかったとかそんなんじゃないんだ。

 あのバカ(ユリウス)が、「肉くらい現地調達に決まってるだろ! 甘えるんじゃない!」という王命を出した結果なのだ。

 正直言ってテンションの上がったユリウスの相手はめんどくさかったので、俺はこっちにいることにした。

 女性陣とあいつらの肉は当然分ける予定ではあるけどね。あいつらは、サバイバルでもしに来ているんだろうか?


「それにしても、ここはいい場所ですね。空気も澄んでいますし、川も綺麗でした。こんな場所があるなんて知りませんでしたよ」

「そうか。………まぁ、俺も知らなかったんだがな」

「えっ!?」


 ティガウロが意外なものでも聞いたかのように驚いた表情を向けてくる。

 すると、ティガウロが操っていたゴーレムたちまで、一斉に振り向いてくるもんだから、肩に止まっているトリが、悲鳴をあげた。

 俺は耳をつんざくような悲鳴に耳をふさぐ。


「すまんな。このアホドリがうるさくて」

「……いえ、構いませんよ。それよりも、自分の領地なのに知らなかったんですか?」

「基本的に関わってはいないかな。元々この土地って貴族の称号をもらった時に、一緒にもらったんだけど、なんというか、他の貴族からも、領民からもあまり歓迎されてなかったんだよね。だからいっそのこと、税金を負担にならない程度に徴収するだけにして、彼らが本当に困った時に手助けする程度でいいかなって」

「……そんなんでよくあんなに金持ってますよね」

「魔法の権威とまで呼ばれた男をなめんなよ? この国って便利な魔法を編み出して、特許取ったら金がもらえるんだよね。そんな感じでだいぶ稼いだ。俺は金が入るし、国民の生活はより良くなる。誰も困らないし、先代の王様直々に頼んでくるから、金は働かなくても数百年生きていける程度には持ってるぞ!」

「……羨ましいですね。魔法が自由に使えて」


 その呟きは本当に小さなものだったため、マルクトはうまく聞き取れなかった。しかし、ティガウロの表情から、それは聞いてはならないことなのだろうと思い、マルクトは開けた口を閉ざした。


         ◆ ◆ ◆


 作業を始めて一時間が経過し、俺たちはテント張りを終えた。といってもやったのはゴーレムたちなのだが。俺はティガウロと話してただけで何もやってないがな。

 作業が終わって数分後に、クレフィからお呼びがかかり、俺たちは今バーベキューを行っている。


「この肉美味しい~!」

 熱々の肉を口に頬張りながら、ベルは幸せそうな笑顔をこちらに向けてきた。

「だめだよベルちゃん。お口にものを入れたまま、喋ったらカトレアさんに怒られるよ」

 メグミの注意に、慌てて口を手でふさぎ、ベルはメグミに向かって何度もうなずく。

 メグミはああ言ってるが、カトレアはというと、ベルの幸せそうな笑顔や可愛らしい仕草を目に焼き付けるので忙しいようだ。

 さっきから、ベルの方を見たまま、顔以外動かしていない。

 ただ、ベルがお肉をとるために移動すると顔だけ、ベルを追いかけ、立ち止まって肉を食べると体ごと向ける。

 一切何も喋らずに。


「お前んとこのメイド、怖すぎだろ。なんであの人、一言もはっさずにあんなことしてるわけ?」

「………はは、そうだな」

 カトウの言葉に同意するが、まぁ理由は多分ベルの行動が原因だろうな。

 実はバーベキューの準備をする際、ベルはカトレアに「お手伝いする~」と言って、カトレアを喜ばせたのだった。

 カトレアは、ベルと遊べないことで憂鬱な気分だったこともあり、感極まって近付いてくるベルと熱いハグを交わそうとしたのだが、「ベルちゃ~ん、一緒に遊ばな~い?」と、少女たちに川へと誘われ、カトレアの目の前で直角を画くように、「遊ぶ~」と言いながら、そちらへ向かったのである。

 後でクレフィから聞いた話によると、カトレアは死んだ魚のような目で、淡々と仕事をこなしていたそうだ。

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