16話 王様からの指令2
(え~!? 先輩があんなこと言ってくれたのって初めてだよ~!! なんで? ねぇなんで? もしかして先輩もやっと私のことを!? ついに私にも希望が見えてきたかも~)
「……何やってんだ?」
顔を赤らめながらもじもじしているピピリカに後ろから声がかけられた。
驚いた彼女が振りかえった時、そこに立っていたのは彼女がよく知る人物だった。
「なんだコウか~。もう!! 驚かせないでよ!!」
「……普通に声をかけただけなんだが……」
彼はコウといって、ピピリカと同期の騎士だった。しかし、それだけではなく、昔から家の関係でよく遊んでおり、いわゆる幼なじみと呼ばれる間柄でもあった。
そして、今はピピリカの天敵でもあった。
「そういえばさっきティガウロさんがいなかったか? ティガウロさんの声がここら辺から聞こえてきたんだが。もしかして帰ってきているのか?」
嬉々としてそんなことを言う幼なじみ。
実はこのコウという彼女の幼なじみは、ティガウロにものすごくなついている。
どれくらいなついているのかというと、他の先輩たちに対してはまったくと言ってもいいほど話しかけないで無口という対応。そのため、他の先輩達からは毛嫌いされている。それにもかかわらず、ティガウロに対してだけはピピリカ同様積極的に話しかけている。
ピピリカも他の女性騎士から聞いた噂だが、コウとティガウロは付き合ってるんじゃないか? という噂まであった。
そんな噂の真偽を二人と一番近い関係にあるという理由でピピリカに聞いてくるのだから、彼女としては腹立たしい限りだった。
ピピリカとしては、コウが何故ティガウロにだけなついているのか心当たりがあった。
二人が十五歳の時、地元の村を襲った魔獣たちをたった一人で全滅させて二人を助けてくれたのがティガウロだった。それ以来彼はティガウロに心底惚れ込んでいる。
まぁピピリカも人のことを言えないのだが。
「うっさいあっち行け!」
ピピリカは追い払うような仕草をしながらそう言うが、コウは去るような気配を一切見せない。そんなコウをピピリカは怨めしそうな目で見る。
(だいたいコウはずるすぎるよ。同性だからティガウロ先輩とすぐに仲良くなっていたし、普通に食事行ってるし、休日に遊び行ってるし。こっちが仲良くなるのにどれだけ時間をかけたと思っているんだよ~)
「……相変わらず敵意剥き出しなんだな。だいたいピピリカが先輩とくっつけるように応援はしてるんだから、そんな敵意剥き出しにしなくてもいいだろ? それに俺がいなかったらお前、今も先輩と話せてたか危うかったじゃないか?」
その言葉に「うっ」という声をあげて何も言えなくなったピピリカをコウは感謝したまえとでも言いそうな顔で見ている。
それを言われると何も言い返せない。
そもそもこうやってピピリカがティガウロと接するようになったのは彼の言うとおり、コウの協力が大きかったのだ。
一年前にコウがティガウロを一人で特訓しているピピリカの元に誘導したからこそ、ピピリカはティガウロから教えを請うことが出来た。
「というか、そんなに警戒しなくてもいいだろ? 先輩も俺も同性愛者じゃないから、俺はピピリカの応援してるんじゃないか」
「それが信じられないのよ。あなた何か企んでるんじゃないの?」
「いやいや変なことなんて企んでないって。単純に俺としては同じくらい先輩が好きなピピリカが先輩とくっついてくれれば安泰な訳よ」
「うっさい!! こんなところでそういうこと言うな!! 先輩に聞かれたらどうすんのよ!!」
いきなり自分の気持ちをこんな場所で暴露されたため、ピピリカは顔を真っ赤にして怒鳴った。
しかし、その言葉を聞いたコウは、計画通りとでも言いそうなくらいニヤニヤしていた。
その顔を見た瞬間、慌てて手を使って口を隠すピピリカ。
「やっぱり先輩帰ってきてんのか。今どこにいんの?」
「…………嵌めたわね」
「勝手にお前が言っただけだろ? それよりもど~こ~よ」
ピピリカは観念したように項垂れた。
「……今は王様に呼び出されているから会うのは無理よ。さっき向かったばかりだし数時間は話し込むんじゃないかしら? あなたはさっさと仕事に戻ったら」
「安心しろ。今日は仕事休みだ!!」
「……じゃあ、なんでこんなところにいるのよ」
「今日来れば先輩に会えるんじゃないかと思ったんだよね~。いや~ラッキーだな~」
コウは冗談を言ったように笑っているが、正直ピピリカには笑えなかった。この幼なじみなら本当にあり得るからだった。
それから一時間の時を経て、ティガウロが王様の部屋から出てきた。
ティガウロは一時間前に別れたはずのピピリカがまだいたことに驚いていた。
「ピピリカまだこんなところにいたのか? あれコウじゃないか。久しぶりだな」
「お久しぶりです先輩。お元気そうで何よりです」
コウは勢いよく腰を直角になるまで折り曲げてティガウロに挨拶をした。
「お前も相変わらず元気そうで何よりだよ」
「先輩、王様からは何の用件を伝えられたんですか?」
ピピリカは興味津々に聞いてくる。
「そうだね。王様から一つ任務を与えられたよ」
「またどこか行かれるのですか?」
コウとピピリカが残念そうな顔でティガウロを見つめてくる。
そんな二人の様子を見て、ティガウロは少し考える素振りを見せた。
「う~ん、お前たちなら何の問題も無さそうだな」
「「え?」」
「コウ、ピピリカ。二人とも何の任務も受けていないなら俺と同じ任務を受けてもらえないか?」
驚く二人にティガウロはそう言った。




