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05

 その後、直ぐに先生がやってきたので、男子達は大人しくなった。 

 ホームルームが始まり、俺は水鏡とはそれ以上何も話さずに席に座った。

 ホームルームでは再来週から林間学校が始まると言う説明をされたが……こんな状態で林間学校なんかに行ったら、俺は確実クラスの男子から山に埋められると思ってしまった。

「まぁ、そういうわけで……班決めは皆さんに任せますので、班が決まったらクラス委員長は私に教えて下さい。それではホームルームを終わります」


 今年で29歳(独身)の担任、藤川先生がクラスに向かってそう言い、ホームルームは終わった。


「よぉ、貴霞! 林間学校だってよぉ! 楽しみだなぁ~良かったら俺と一緒の班にならねぇ~か~?」


「なんだよそのチンピラみたいな言い方……」


 何かを企んでいるのは見え見えだった。

 しかし、林間学校の班は大成と組もうと思っていたので別に良い。

 こいつが何もしなければ……。


「おい、芳川! 当日はちゃんとスコップ持って来いよ!」


「あと軍手な!」


「おう! 任せとけって!」


「埋める気か? 俺を埋める気なのか!?」


 クラスの男子達と大成の話しを聞いて、俺は思わずそんな想像をしてしまった。

 

「ふっふっふっふ……言っただろ? 俺はお前の敵だと!!」


「はぁ……あのさぁ……少しは僕の気持ちって言うのも考え……」


「あ、明嶋君!」


 俺が大成に言いかけた瞬間、隣から水鏡の声が聞こえてきた。


「あ、あのさ……わ、私も一緒の班にしてくれない……かな?」


「え……あ、あぁ……まぁ……それは良いけど……」


 まぁ、同じ班になるくらい全然良いのだが……この気まずい感じはいつまで続くのだろうか……まぁ、俺がハッキリしないのが悪いのだが……。


「おぉ~おぉ~朝からお熱いねぇ~、熱すぎて近づけないわぁ~」


「なんだよそのわざとらしい言い方……それにあんまり茶化さないでくれよ……」


「うるせぇ! 俺はもうお前の敵だ!! 同じ班にはなるけど!」


「同じ班にはなるんだな……」


 俺と大成がそんな話しをしていると、隣の水鏡は顔を真っ赤にして頭から湯気を出していた。


「え、えっと……あ、あの……」


「ホラ見ろ! 水鏡が困ってるだろ!」


「困らせたのは貴霞だろうが! お前がちゃんと水鏡を選んでいれば、俺だってお前の敵にはならなかったかもしれないんだぞ!!」


「いや、それとこれは関係ないだろ……てか、お前が男子全員にバラすから、男子が俺にさっきから殺気を向けてくるんだけど……」


「くだらねぇダジャレ言ってんじゃねぇ!!」


「い、いや……それは偶然なんだが……」


 俺と大成がそんな話しをしていると、今度は水鏡が顔を真っ赤にしながら、俺と大成に尋ねてきた。


「ね、ねぇ……あ、あの……男子にバラしたって……い、一体何を?」


「「あ……」」


「ま、まさか……き、昨日の事を……」


「ち、違うんだ水鏡! こ、これは大成が勝手に!!」


「ちがう! バラしたのは貴霞だ!」


「なんで俺が自分の不利になる状況を作ろうとするんだよ!!」


 まぁ、そうだよなぁ……自分が告った事をクラスの男子にバラされたら恥ずかしいよな……。

 これは大成に話した俺が悪いな……。

 

「ちょっと、男子謝りなさいよぉ!」


「澄香が可愛そうでしょ!」


 今にも泣きそうな水鏡を見て、クラスの女子二人が俺と大成に向かってそう言ってきた。 いや、小学生かよっ!

 まぁ……バラした俺が悪いんだけど……。


「おい、大成……広めたのはお前だろ、水鏡に謝れよ」


「そもそもお前がモテなければ、こんな事には無かったんだ! お前が謝れ!」


「それはお前のただの嫉妬だろ!」


 はぁ……こんな調子で林間学校は大丈夫なのだろうか?

 水鏡は相変わらず泣きそうだし……ここは場を収める為に謝って置こう。


「み、水鏡すまん……あとで訳は説明するが……大成に昨日の事を話したんだ。ま、まさかこんな事になるとも思わなくて……」


「あ……い、いや……そ、その……だ、大丈夫だよ! ぜ、全然……気にしてないから!!」


 口ではそうは言ってるが……絶対に気にしてるだろうなぁ……。

 だって、もう涙堪えきれ無くなってるし……女子からの視線も痛い。

 完全に俺が悪者みたいになってるが……バラしたのは大成だぞ。


「ようやく澄香が勇気出したのに……」


「ひっどい男ね……そんな男とは思わなかったわ……」


「死ねば良いのに……」


 うわぁ……なんか男子だけじゃなくて、女子まで敵になっている気がする。

 俺……何も悪い事なんてしていないのに……。

 クラス中からの視線が痛い。

 俺はこれからこのクラスでうまくやっていけるのだろうか?

 

「へっへっへぇ~、お前の周りは敵ばかりだから気を付けなぁ~」


「もう、お前いい加減黙れよ……」


 俺は肩を落としながら、この事態の元凶である大成にそう言う。

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