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「ま、まぁ普通の事ですよ、娘とはどんな関係なんだ? みたいなことを聞かれたくらいで……」
「そうだったの? 是非話をしたいって言うから何か重要な事を話してるのかと思ったんだけど」
まぁある意味重要な話はしたような気がするけど、話がややこしくなりそうだし言わないでおこう。
「そ、それよりも会長の家広いですよね? 一体どれくらいの広さがあるんですか?」
「東京ドーム二個分の敷地があるってお父様は言っていたけど、詳しくは分からないの」
東京ドーム二個分って……。
そんな家聞いたことないよ、やっぱり金持ちなんだなぁ……。
「良かったら家の中を見て回ってみますか?」
「え? 良いんですか?」
「えぇ、夕食までの時間つぶしには丁度良いと思うわ」
俺は会長にそう言われ、会長の家の中を案内してもらう事になった。
「まず、ここが食堂よ」
「こ、ここも広いですね……椅子もたくさんあるし」
「まぁでもここの席が全部埋まることはそんなに無いんだけどね」
「埋まることあるんですか!?」
「えぇ、お父様のお客様が来た時とか年末とかかしら?」
えぇ……このたくさんの椅子が全部埋まるって……流石社長。
友好関係も広いんだろうな。
「ここは書庫、おじい様の時代からの本があるのよ」
「いや、学校の図書室じゃないですか」
「そうかしら?」
いや、そうだよ!
だって学校の図書室と同じ匂いがするし、右を見ても左を見ても本だし!
「難しそうな本ばっかりですねぇ……」
「ちゃんと文庫本もありますよ、少し古い本ですけど」
「へぇ……ん? この一つだけ布の掛けられている本棚はなんですか?」
「なんだったかしら? 私も自分の本は自分の部屋に置いているから、あまりここには来ないのよ」
そう言いながら会長が本棚のカーテンを開けると、そこには明らかにR指定の付きそうな題名の本や文庫本が大量に収められていた。
「こ、これは……」
「……お、おそらく……おじい様の物だと……」
会長は真っ赤な顔をしながらそう言って、勢いよくカーテンを締める。
「今度の廃品回収に出します」
そう言う会長の目はどこか恨みがこもっていた。
いた俺も気持ちはわかるよ、お爺さん。
でもここは分かりやす過ぎるよちゃんと隠して置かないと。
「つ、次に行きましょう!」
「あ、はい……」
少し気まずい空気の中、俺と会長は次の部屋に向かった。
「ここはトレーニングルームです」
「トレーニングルームまであるんですか! いいなぁ……」
実は俺は中学の頃は筋肉に憧れを持ち、筋トレグッズにも興味があった。
家の中に本格的なジム機械があるのは羨ましい。
俺が目を輝かせながら部屋を見ていると、奥の方のルームランナーで誰かがトレーニングをしているのが見えた。
「あ、さっきのメイドさん」
「あら、どうしたんですか? ベッドでプロレスごっこの予定では?」
「だからしませんよ!」
「そうなんですか……お嬢様に後で本当に痛いのか聞こうと思ったんですが……残念です」
「何を残念がってるんだよ!」
この人は本当にメイドさんなのだろうか?
色々と発言に問題がある気がする。
会長も顔を真っ赤にしてるし、少しはデリカシーって物を持ってほしい。
「白谷さんいつものトレーニングですか?」
「はい、今日の業務はあとは夜からですから」
「へぇ、空いた時間に筋トレなんれすごいですね」
「メイド業は体力が居るので日々精進しております」
根は真面目な人なんだろうなぁ……。
「ここの機材は下手なトレーニングジムよりも揃っていますから、トレーニングにはもってこいです」
「確かに、トレーニングジムって年会費とか結構しますからね」
「えぇ、ここなら無料ですので活用させていただいています」
「じゃあ、ここは従業員用のトレーニングルームなんですか?」
「いえ、昔お父様がダイエットにと作った部屋なのですが、今では白谷さん以外は使用していませんわ」
「あぁ……なるほど」
何となくだが、勢いで作っただけの部屋のような気がしてきた。




