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少しして映画が始まった。
大まかなストーリーは高校生の男女のラブコメディだった。
まぁどこにでも有りそうな内容の普通のラブコメ……だったのだが……。
いきなりヒロインが怪物になって主人公である男子生徒を襲い始めたぞ!
「えぇ……」
思わず俺は声を出してしまった。
隣の胡桃ちゃんも俺の手を握る手が強くなる。
きっとあのヒロインが怪物になるシーンで怖くなったのかもしれない。
てか、R15の意味がようやく分かってきた。
前半のラブコメパートから一転して、後半は戦闘シーンとグロシーンのオンパレードでなんだか別な映画になったみたいだった。
「なんじゃこりゃ……」
映画の最後は主人公が化け物になったヒロインを倒して終わった。
まぁ、なんというか……最終的には映画だった気がする。
ヒロインがなんで化け物になってしまうかや、そのヒロインを救うために奔走する主人公など、なかなかに見所の多い作品だった。
まぁ、これは恋愛映画では絶対無いと思うけど……。
「うっ……お、面白かったですね……うっ……う……」
「まぁ、面白かったけど……」
なんだろうかこの複雑な気持ちは……。
恋愛映画を見にきたはずなのに、SF映画を見た気分だ。
「私、パンフレット買ってきます!」
「マジかよ……」
俺は要らないが、確かにこのカオスな映画のパンフレットの中身は少し気になる気がする。
「良かったですねぇ、特に最後の主人公がヒロインに聖剣を突き刺すシーンが」
「いや、なんで恋愛映画で聖剣が出てくるの? 俺はいつからアクション映画を見てたの?」
「いやぁ、噂通りの衝撃のラストでしたね! 浄化されて封印されたヒロインの水晶に最後ヒビが入ったってことは、これは続編が有りますよ!」
「次回作は絶対恋愛映画じゃないよね? 絶対SFアクションだよね?」
「続編が上映されたらまた一緒に来ようね」
「なんか複雑だけど……まぁ良いよ」
確かに続編があるとしたら少し気になる。
「さて、もう昼か……じゃぁそろそろ帰ろうか」
「えぇ~もう帰るんですかぁ~?」
「いや、最初に言ってたじゃん、午後からは用事があるんだって」
「ふぅ~ん……用事ですか……どんな用事ですかぁ~?」
「え? あぁいや……人と会う約束をしててな」
言えない、会長と会長のお父さんに会うなんて胡桃ちゃんには口が裂けても言えない……。
というか、今日一日なんか変な視線を感じているんだが……。
映画の上映中もなんか後ろから鋭い視線を感じたし。
もしかして……誰かに見られて!!
「やぁ……明嶋くぅ~ん」
「げっ!」
「お、お父さん!?」
俺が視線の事を考えていると、背後から鬼のような形相の店長が私服姿で立っていた。
「あ……あの……今日は喫茶店は?」
「ははは……今日は店を任せてきたんだよ………それよりも明嶋くん!!」
「は、はいぃぃ!!」
「君はうちの娘と休日の朝から何をやっているのかなぁ? ふー! ふー!」
「いや、ただ二人で映画を見に来ただけで………てか近いです……」
「残念だよ……まさか優秀なスタッフを一人失うことになるなんて……」
「待って下さい! それはどう言うことですか!? 解雇って事ですか?」
「あぁ解雇だよ………この世からのねぇ!!」
「それ死ねって事じゃん!! ま、まって下さい! 少し落ち着いて……」
「これが落ち着いてられるか!! 手間で握っていたなぁ……明嶋君……君は胡桃に手をださない無害な存在と思っていたのに……害虫だったとはねぇ……」
「俺害虫扱いですか!?」
「さぁ、そろそろ映画館を出て暗い路地に一緒に行こうか、大丈夫だよ痛くしないから! 一瞬だから!」
「いやぁぁぁぁ、怖い! この人いつもの店長じゃないぃぃぃ!!」




