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「それにカップラーメンやコンビニ弁当も新作が出るのが早くてな、ついつい買っちまうんだ」
「もう、そんなのばっかり食べてたら体に悪いよ」
俺は水鏡に怒られながら、野菜を切って調理を進める。
久しぶりだけど問題ないな。
水鏡の方も器用に材料を切っている。
きっと家で手伝いなんかをしてるんだろうな。
調理は一時間もしないうちにすべて終了した。
こんなにちゃんとした料理を食べるのはなんだか久しぶりな気がする。
朝は朝で会長が色々作ってくれたし、なんか今日は健康的な食事をしてるなぁ……。
「いただきます」
「じゃあ私も、いただきます」
二人向かい合って食事をする俺と水鏡。
誰かとこうして夕食を食べるのはなんだか久しぶりだ。
「悪いななんか、飯の手伝いさせちまって」
「大丈夫だよ……その……私がやりたかっただけだし……あはは」
「そ、そっか……で、でももう遅いし食ったら帰れよ? 家まで送ってやるから」
「う、うん……そ、そうね」
「なんで目を反らす?」
「そ、反らしてないよ!」
そう言って水鏡は持ってきた大きなカバンを背後に隠す。
「おい、なんでそんな大荷物なんだ?」
「べ、別にあの……夜遅いから無理やり言って今夜は泊めてもらおうなんて考えてないよ!」
「なるほど、絶対に飯を食ったら帰れよ」
女子を部屋に泊めるなんて、まだ俺にはハードルが高すぎる!
てか、水鏡って確かこの前も俺の部屋に来て告白したよな?
もしかしたら、三人の中で一番積極的なのって水鏡か?
「ち、ちなみにあの……今日の私の下着は勝負下着です!!」
「恥ずかしいなら言うな! てか、絶対に帰るんだよな!? なんで下着の話を今ここで!?」
「お、お母さんが男を落とすなら色仕掛けと既成事実のコンボで一撃だって」
「コンボってなんだよ……」
てか水鏡のお母さんももしかしてこのこと知ってるの?
しかし、確かにそのコンボは強烈だ、しかも相手はあのクラス一可愛いと評判の水鏡だ、一緒に一晩なんて過ごしたら、俺の内なる獣が牙を剥いてしまう……。
「良いから帰れって、流石に高校生男女が同じ部屋に寝泊まりはまずいだろ」
「わ、私は良いんだけど……」
「いや、水鏡が良くても俺はちょっと……ほら、俺だって男だし」
「わ、私と一緒は嫌?」
「いや、嫌とかそう言う事じゃなくて……」
「わ、私はいつでも準備オッケーだよ!」
「何の準備かはあえて聞かないでおくよ……とありあえず夜も遅いし今日は食ったら帰ってくれ」
「むぅ……わ、わかったわよ……その代わり明日も晩御飯作りに来てもいい?」
「まぁ、それくらいなら……でも明日もちゃんと帰ってね」
「っち………」
「あれ? 水鏡今舌打ちした?」
一番の要注意人物はこの水鏡なのかもしれない。
俺はそんな事を考えながら、食事を続ける。
飯を食べ終わった後、俺は水鏡を家まで送り自分の家に帰ってきた。
最後の最後まで水鏡は俺の家に泊ろうとしていたが、なんとかそれは避けられてよかった。
「はぁ……やっと一人だ」
考えてみれば今日はゆっくり一人で休む時間が無かった気がする。
ようやく一人でゆっくり出来る。
まさかこんな事になるなんて……学校では全男子生徒から敵視されるし、バイト先では死と隣り合わせだし、家に帰れば色々と積極的な水鏡が居るし……。
俺の平和な青春がどんどんと壊れて言ってる気がする。
てか、三人とも一体俺なんかの何が良いんだ?
顔だって普通だし、成績も運動も普通、こんな俺よりももっといい人が居ると思うのだが……。
でも、好きと言われて嬉しくないわけじゃない。
あんな可愛い子達から好きだと言われるのは光栄な事だと思うし、素直に嬉しい。
だが、一人を選ばなければと思うと大変だ。
みんな良い奴なのは知ってるし、全員が美少女だ。
贅沢な悩みだなぁ……。




