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バイトを終え、俺は喫茶店を後にして自分の家に向かっていた。
「はぁ……なんだか今日はどっと疲れたなぁ……」
さて、飯を食って洗濯機を回したら今日はゆっくり風呂に入って眠ろう。
今日は流石にゲームをする余裕はない。
そんな事を考えながら俺が帰宅すると、丁度隣のお兄さんも帰ってきたところだった。
「ん、なんだ君も今帰りか」
「あ、どうも、昨日は騒がしくてすいません」
「まぁ良いよ、ちゃんと次から気を付けてくれれば」
確か大学生と言っていただろうか、お兄さんの部屋の表札には四ノ宮と書いてあったので、おそらく四ノ宮さんであっていると思う。
「なんか揉めてたみたいだけど大丈夫か?」
「あぁまぁ……あはは」
「大丈夫じゃないみたいだな」
「ま、まぁ……実は女性関係で色々ありまして……」
「その年でか……まぁ、困ったときはなんでも相談しろよ隣の部屋だし」
「すいません、ありがとうございます」
四ノ宮さんはそう言って部屋の中に入って行った。
まさか隣の部屋の人に心配されるなんて……。
俺も自分の部屋に入り、部屋の電気をつける。
「ただいまぁ……」
今日は色々疲れたので飯はコンビニ弁当にしよう。
着替えをしながら俺はそんな事を考え、洗濯機に洗濯物を入れる。
「冷蔵庫に……なんもねーな」
やっぱり買い物に行かないとなぁ……少し高いけどコンビニで足りい物も買うか。
この時間にスーパーとか行きたくないし。
「さーてじゃあさっさと行くかー」
まぁこんな事言っても誰も聞いてないけど……。
俺が部屋を出ようとすると、ポケットの中にしまっていた俺のスマホから音が鳴った。
「ん? 電話?」
一体誰からだろうか?
もしかしてお袋か?
俺はそんな事を考えながら、スマホの画面を見る。
画面には水鏡澄香と表示されていた。
一体何の用だろうか?
「もしもし、どうした?」
『あ、明嶋君? も、もう家に居る?』
「あぁ、今帰ってきたところなんだけど……どうかした?」
『よかった、もしよかったら今から家に行っても良いかな?』
「え? 今から? もう21時近いぞ?」
『だ、ダメかな?』
「いや、流石にこんな夜遅くに男の家に上がり込むのは色々まずいんじゃ……ご両親だって心配するだろうし」
『で、でもあの……もう部屋の前に居たりするんだよね、あはは』
「え?」
俺が電話をしながら玄関の戸を開けると、そこには買い物袋を持った水鏡が立っていた。
「やっ」
「やっ、じゃねーよ……」
なんでここに居るんだこいつは?
そんな事を考えながら、俺は水鏡を家に上げる。
時間も結構遅いので、そのまま返すのもあれなので仕方がない。
「どうしたんだよ急に」
「いやあの……ふ、二人には負けてられないと思ってその……晩御飯作りに来た」
「え? 二人って……あぁ、会長と胡桃ちゃんか……」
「わ、私だってその……明嶋君の事好きだから……」
「え? あ……お、おう……」
なんでそんなストレートに言うんだよ!!
恥ずかしいだろうが!
俺は自分の顔が赤くなるのを感じ水鏡から顔を反らす。
「あ、あの! ごはんまだだよね? 私が作っても良いかな?」
「い、いや俺も手伝うよ悪いし」
「そ、そう? じゃ、じゃあ一緒にやろうか」
「お、おう」
俺と水鏡は二人でエプロンをつけ台所に立った。
材料は水鏡が俺の家に来る途中で買ってきてくれたらしい。
あとでちゃんと材料代を渡しておこう。
「へぇ~ただのゲーマーだと思ってたけど、ちゃんと包丁使えるんだな」
「それどういう意味? 私だって女の子だよ。それより私は明嶋君が料理出来る事に驚きだよ」
「そうか?」
「だって、いつもコンビニ弁当とかカップ麺ばっかりでしょ?」
「いや……一人暮らしは色々大変でな」
洗濯に風呂の用意、それに加えて料理なんて大変だ。
手だって抜きたくなる。




