80:刻一刻とその時が近づく
アルベルトからプロポーズされたらどう答えるか。
そう思い悩んでいたが。
時はどんどん流れ。
ドレスに着替え、部屋を出る時間が近づいている。
するとすべての準備が整ったところで、部屋のドアがノックされた。
メイドがドアを開けると、アルベルトが入ってきた。
その姿は……とても美しい。
まず上衣の色は、完全に私のドレスの色に合わせてくれていると分かる。そう、美しいサファイアブルーをしている。そのサファイアブルーは、中に来ている白シャツに、とてもよくあっている。何よりサラサラのシルバーブロンドと、サファイアブルーの相性は抜群だ。そしてアルベルトの瞳は、大海を思わせる碧い色をしている。だからサファイアブルーは、彼の瞳に通じる色であり、まとった時の全体のバランスも、完璧になる。
ということで麗しい姿のアルベルトを、自然とうっとりと眺めてしまう。
「パトリシア、そのドレス、とてもよく似合っているね」
ハッとしてアルベルトの顔を見ると、その頬はほんのり色づいている。
『戦う公爵令嬢』のあのアルベルトが、私を見て頬を赤らめている!
その事実に思わず笑みがこぼれそうになり、それをなんとか堪える。
「それでは行こうか。まずは夕食会だ」
アルベルトにエスコートされ、部屋を出ると、そこには三騎士が勢揃いしていた。こちらは軍服姿だが、飾緒や肩章などは儀礼用のものとなっている。マントはいつもの色なのだが、これも儀礼用なのだろう。それぞれ豪華な刺繍が施されていた。
私が悪役令嬢パトリシアと分かってから、三騎士の態度も変わるかと思ったが……。そんなことはなかった。マルクスは気さくに話しかけてくれるし、ミゲルは恭しく接してくれるし、ルイスは程よい距離感をとってくれる。
王都で私がカロリーナと競い合っていた時。
三騎士はアルベルトのそばで、私とカロリーナのことを冷めた目で眺め、自分達から話しかけてくれることは皆無だった。それを思うと今は……本当に変わったな、と思う。
そんなことを考えているうちに夕食会の会場につき、案内された席へと腰を下ろす。
晩餐会もそうだが、夕食会の席は男女が交互に座る。私は王太子であるアルベルトにエスコートされていた。だから当然と言えば当然なのだが……。アルベルトの隣の席に案内された。
それだけでもう、なんだかアルベルトの婚約者として扱われているような気がして、落ち着かない。
アルベルトがあの日以降も「好きだ」と言ってくれて、恋人がするようなこと、例えば手をつなごうとしたり、腕を組もうとしたり、ハグではなく抱きしめたり、そんなことをしてくれたなら。
好ましいという感情はあるが、それで結婚をしたいかというとそうではないことを、やんわりアピールしたり、伝えることもできた。
だがアルベルトは、あの日、後ろから抱きしめ同じベッドで寝ていた以上のことを、私にすることはない。会話の中で私を好きだと明かしたものの、面と向かい告白をするということも、なかった。それなのに私から、あなたとは交際できないなどと、言えるわけはなく……。
それでいて一緒にいる機会は自然と増え、周囲も私をアルベルトの婚約者のように扱う。王都で私とカロリーナが婚約者の座を奪い合っていたことは……王都から遥か遠いこの地にも、伝わっていた。その私がカロリーナと婚約解消としたアルベルトと一緒にいるとなれば、新しい婚約者は私になると思っても、仕方ないだろう。
じわじわと外堀を埋められているような状況の中、刻一刻と舞踏会の時間が近づく。夕食会はあっという間に終わってしまい、食事を終えた着飾った人々が、舞踏会の会場となる大ホールへと移動していく。
私もアルベルトにエスコートされ、大ホールに向かった。
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