―99― 会議
三巨頭会議は冒険者ギルドにて行われるとのことだった。
冒険者ギルドで、会議できるような場所なんて心当たりがなかったが、どうやら2階に会議をするための部屋が用意されているらしかった。
「なにか事前に決めておいたほうがいいんでしょうかね?」
ゼフィルさんにそう尋ねる。
すると、ゼフィルは首を横に振り、
「なにも思いつかねぇな」
と、口にした。
「僕も思いつかないですね」
僕もゼフィルさんも三巨頭会議なんて初めてだから、思いつかないのは仕方がない。
そもそも会議するといっても具体的になにをするのか全く想像がつかない。
こうなったら、ぶっつけ本番でやる他ないのだろう。
◆
冒険者ギルドの二階にある会議室に入ると、すでに何人かの冒険者たちが集まっていた。
「遅いじゃないか、二人共!」
中央の席に座っている男の人に、そんなことを言われる。
察するに、僕たちは会議の時間に遅れてきたらしい。
とはいえ、僕自身は会議があることをさっき知ったばかりで、始まる時間なんて、そもそも聞かされていない。
だから、僕自身には、非がないわけだけど、ここは穏便に済ませたほうがいいだろうと思い、僕は頭をさげる。
「ごめ――」
ごめんなさい、と言おうとして、途中で遮られた。
というのも、
「おい、謝るな。下手に謝ったら、舐められてしまうだろうが」
と、ゼフィルさんに叱られたからだ。
謝ったぐらいで舐められることなんてあるんだろうか? と疑問を覚えつつも、自分の所属するクランのリーダーの言葉なので素直に従うべきか。
「その、すみません。つい、謝ったほうがいいのかなって思ってしまって」
「だからって、俺に謝るなよ。お前のすぐ謝るくせ直したほうがいいぞ」
無意識のうちに、今度はゼフィルさんに対して謝ってしまった。
「くっはっはっ! すまないね、別に君たちを責めるつもりはなかったんだ」
さきほど僕たちに「遅いじゃないか、二人共!」と言った人がそう言いながら、僕たちに近づいてくる。
「それにしても、君が〈名も無きクラン〉のリーダーになるとはね。確かに、君以上の適任はいないだろう」
と、男はゼフィルさんを見ながらそう言う。
そういえば、この人どこかで見たことがあるな。
「少年も随分と出世したようだね。やはり、あのとき、もっとしつこく勧誘をしておくんだった」
そうだ、冒険者ギルドで一度この人から話しかけられたことがあったんだ。あのとき、パーティーに誘われた覚えがある。
この場にいるってことは、クランのリーダーを務めているんだろう。
「それじゃあ、全員集まりましたので、改めて自己紹介から始めましょうか。初めて会議に参加する方もいらっしゃいますしね」
と、今度は別の男がそう呼びかけた。
恐らく、この人がもう1つのクランのリーダーに違いなかった。
そんなわけで、ゼフィルさんが席に座ると同時、自己紹介が始まった。
ちなみに、僕はゼフィルさんの隣に座ることにする。
「では、まず僕から。〈ディネロ組合〉のリーダーを務めています、エックハルトと申します。以後、お見知りおきを。それと」
「オーロイア・シュミケットと申します。この度は、皆さんの支援をすべくはせ参じました」
会議の場には顔見知りであるオーロイアさんがいた。
そのオーロイアさんはリーダーであるエックハルトさんの隣に座っていた。
オーロイアさんは貴族だし、この場にいても驚きはしない。どちらかというと、僕がこの場に来たことが彼女にとって驚きだったらしく、さっきから僕のことをチラチラと伺っている。
「彼女は〈ディネロ組合〉のメンバーでなかったのですが、此度のレイドイベントを攻略するに当たって、彼女には副リーダーの座についてもらうことになりました」
エックハルトさんがオーロイアさんについて補足した。本来、クランというのは貴族に対抗するために冒険者たちが集まったのが始まりなため、貴族がクランに所属するのはおかしな話だが、レイドイベントの期間中だけの特例なんだろう。
「〈緋色の旅団〉のリーダー、ゲオルグだ。よろしく頼む」
次は、〈緋色の旅団〉のメンバーが順々に自己紹介を始める。やはり、さっき話しかけてきた男はクランのリーダーだったようだ。
数人いる〈緋色の旅団〉が自己紹介を終えると、今度は僕たちの番だ。
「〈名も無きクラン〉のリーダー、ゼフィルだ」
「同じく、副リーダーのアンリです」
これから仲良くなるための集まりではないので、自己紹介は必要最低限に収める。
というのは建前で、本当は緊張して噛みそうだったので、余計なことを言わないようにしただけなんだけど。
「それじゃあ、途中参加の方もいますし、改めて我々の提案をお聞きください」
〈ディネロ組合〉リーダー、エックハルトが立ち上がってこう口にしたのだ。
「今回、レイドイベントを確実に攻略するために、我々はクランの垣根を越えて、共同戦線を張るべきだと思うのです」
と。




