―67― バジリスク
「グゴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
早速、ボスエリアに入ると毒蜥蜴ノ王が出迎えてくれる。
「よしっ、陣形を組むぞ!」
リーダーの掛け声に合わせて、パーティーメンバーたちは陣形を組み始める。
「毒を周囲に纏ってやがる。これじゃあ、近づくのが難しいな」
剣を手にしたリーダーが毒づく。
とはいえ、パーティーには一人弓矢を使える者がいた。
ひとまず弓使いが何度か攻撃を使う。
「あんま、効いている感じしないですね」
アルセーナくんの言葉通り、矢は何度か当たっているが、毒蜥蜴ノ王がうろたえる様子はなかった。
「おい、こっちに来るぞ!」
見ると、毒蜥蜴ノ王がパーティーのいるほうまで突進をしてきた。
「うがぁあ!」
攻撃を受けようと盾を構えたアルセーナくんが耐えきれず吹き飛ぶ。
「大丈夫か! アルセーナ!」
「えぇ、なんとか。うぐっ」
どうやらアルセーナくんは毒が回ったようで、見るからに体調が悪そうだ。
大丈夫なのかな……。
邪魔したら悪いと思い、僕はさっきから大人しく見ているけれど、この調子だと勝てるビジョンが見えない。
明らかに準備不足な気がする。
「あっ」
僕は無意識のうちにそう口を開いていた。
というのも毒蜥蜴ノ王が部屋全体を毒で覆い尽くす攻撃をしようと準備していたからだ。
このボスと何回も相対した僕しか、そのことに気がついていない!
「みんな、部屋全体に毒がくる!」
そう警告するも、誰も耳を貸そうとはしない。
まぁ、仕方がないんだろうけど!
「どこにも逃げ場がないじゃねぇかよ!」
毒蜥蜴ノ王の放った毒を前にして、誰かがそう口にした。
事前にわかっていた僕だけは、壁に突き刺した短剣により掛かることで、なんとか毒から逃れることに成功する。
「えっと……」
状況を察するに、僕以外全員毒を受けたようだ。
毒を受けたら動けなくなるらしく、全員その場で横にうずくまっている。
これは、僕がなんとかするしかなさそうだ。
「おい、アンリ! よせっ、お前が敵う相手じゃない!」
みんなの前に進み出た僕を見て、アルセーナくんが呼び止める。
どうやら僕を心配してくれているようだ。
「無能! お前が戦ってなんの意味があるんだよ!」
見ると、リーダーが倒れた姿勢で、僕に言葉を吐いていた。体は動かせないけど、口は達者らしい。
うるさい。
これから戦うんだから、集中させてほしいんだが。
「少し、黙れ――」
そう言った瞬間、リーダーの顔は「うぐっ!?」と青ざめた顔になる。
別に脅したつもりはないんだけど、リーダーはそう受け取ったのかもしれない。
これで戦うことに集中できる。
本音を言うと、あまり自分の力を見せびらかしたくない。
僕は『永遠のレベル1』として有名だ。
だから、下手に力を見せてしまうと、どういうことだ? と、疑問に思われることだろう。そうなってしまえば、壁抜けのことまで話す必要性がでてくるかもしれない。そうなると、やっかみを買うとか色々と面倒なことが起こってしまいそうだ。
だが、まぁ、仕方がないか。
タッ、と地面を勢いよく蹴った。
毒蜥蜴ノ王が大量に毒を放った今なら、再び毒を体に纏うまで時間がかかる。
それまでに決着をつける――。
「〈必絶ノ剣〉」
実力を遺憾なく発揮するため、スキルを使用する。
これで毒蜥蜴ノ王の防御力を貫通する。MPがごっそり減る。〈必絶ノ剣〉は消費MPは相手の防御力に依存するため、それだけ毒蜥蜴ノ王の防御力が高いってことなんだろう。
とはいえ、これで確実にダメージを与えられる。
握った短剣は硬い皮膚を貫通し、それを一直線に斬り裂く。瞬間、紫色の血がドバァッ、と溢れ出る。
まだだ。
僕は攻撃の手を緩めない。
柔らかそうな皮膚を見つけては、ひたすら短剣を突き刺していく。
毒蜥蜴ノ王は抵抗のつもりか、僕から逃れようと慌てて走り出す。
だけど、遅い――。
それじゃあ、簡単に追いつくことができる。
追いついては、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――斬り裂いていく。
僕の攻撃力は並以下だ。
ならば、スピードで補えばいい。
同じ箇所に何度も何度も切り裂けば、いつかは皮膚の奥深くまでたどり着く。
その工程を繰り返した。
ザジュゥウウウ! と、毒蜥蜴ノ王は全身から血を吹き出していた。
「あっ」
いつの間にか毒蜥蜴ノ王を倒していたようだ。もう動く気配がなかった。
「ふぅ」
僕は息を吐きながら顔についた血を腕で拭う。
◇◇◇◇◇◇
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
◇◇◇◇◇◇
レベルが2つも上がった。
モンスターを複数人で倒した場合は、その貢献度に応じてそれぞれ経験値が割り振られる。
今回は僕一人で倒したようなもんだから、ほとんどの経験値が僕に入ったのだろう。
「アンリ、お前……」
後ろを振り返れば、アルセーナくんがなにか言いたげな顔で僕のことを見ていた。
「あっ、大丈夫?」
未だに毒のせいで体が動かないアルセーナくんに対し、そう言う。
「僕、解毒剤持っていないんだよな。回復薬ならあるけど、それじゃ駄目なのかな?」
「……俺のかばんに解毒剤が人数分入っている。それを皆に飲ませてくれ」
そう言ったのはリーダーだった。
リーダーも動けないので自分で解毒剤をとるのは難しいのだろう。放っておくわけにもいかないので、言われた通りリーダーのかばんから解毒剤を取り出し、皆に飲ませる。
それから数分後、解毒剤が効いてやっと皆が動けるようになってから。
「アンリ、お前すげぇ強いんだな……!」
と、素直に称賛してくれたのはアルセーナくんだった。
「たまたま、僕だけが毒から逃れることができたからだと思うよ」
実際、僕も毒をくらっていたら、皆と同じように動けなかっただろうし。
他の面々は僕が活躍したのが信じられなかったようで、なんとも言い難い表情をしていた。
「アンリ」
リーダーが一歩前に出て僕の名を呼ぶ。
「色々と気になることはあるが、お前のおかげで俺たちが助かったのは事実だ。パーティーのリーダーとして、お礼を言わせてくれ。ありがとう」
と、頭をさげる。
リーダーが頭を下げたので他の皆も、慌てた様子で頭をさげる。
「え、えっと、全然気にしてないから、そんなかしこまらなくても」
こんなふうにお礼を言われると、恥ずかしいからやめてほしい。
「だが、お前は『永遠のレベル1』のはずだ! なんで、あんなに動ける。おかしいだろ!」
うっ、そこを突っ込まれると色々とめんどくさいことになりそう。
壁を抜けて強くなったなんて、他の人に言えるようなことじゃない。下手に広まったら、やっかみを買いそうだし。
「まぁまぁ、リーダー、助けてもらったのに、その態度は失礼でしょ」
と、女剣士がリーダーのことをたしなめてくれる。
これで、ひとまず聞かれないで済みそう。
「アンリ、この俺を殴れ」
「へ……?」
唐突に、リーダーが意味不明な提案してくる。
「お前は攻撃力が低い無能だろ! だから、お前に殴られたって全く痛くないはずだ! その証明として、この俺を殴れ!」
説明されても、やっぱりよくわからない。
「リーダー、やめてよ、恥ずかしいから……」
他のメンバーもリーダーの行動をおかしいと思ったらしく、止めに入る。
「いいや、アンリの攻撃力が低いことをこの身で証明するまで、俺は引かないぞ!」
血走った目を見開いて、リーダーはそう主張する。もう、ここまでくると狂気だ。
「はぁ」と、諦めた様子の女剣士が僕に対してお願いをした。
「リーダーがこうなったら、もう誰にも止められないから、殴ってあげて」
「俺からも頼む、アンリ。うちのリーダーは頑固だからさ」
と、アルセーナくんからもお願いされた。
「わ、わかったよ」
よくわからないけど、とりあえば殴ればいいんだろ。
「手を抜くなよ」
念を押すようにリーダーがそういう。
僕は頷く。そして、全力でリーダーの腹を殴った。
「うがッ」
リーダーはうめき声をあげながら、後方へ倒れた。
そして、涙まじりにこう口にした。
「ちゃんと、いてぇじゃねぇかよ……」
どうやら、僕のパンチはそれなりに効いたらしい。
◇◇◇◇◇◇
アンリ・クリート 14歳 男
レベル:34
M P:122
攻撃力:112
防御力:111
知 性:103
抵抗力:102
敏 捷:1242
スキル:〈回避〉〈剣技〉〈必絶ノ剣〉〈鑑定〉
◇◇◇◇◇◇
クリア報酬は複数人いても、一つだけです
譲渡不可のアイテムの場合、報奨エリアにてパーティーの誰がもらうか選ぶ必要があります。
場合によって、それで喧嘩が起きる可能性もあります。




