―113― 慢心
「思ったよりもレイドイベント楽勝すぎるだろ!!」
冒険者たちの間で浮かれた声が聞こえてくる。レイドイベント2日目の朝、みんな予想以上に元気だ。初日を無事に乗り越えたことで、自信がついたのかもしれない。
「このままいけば、レイドボスも余裕で倒せそうだな!」
「そうだな! 俺たちがいればどんな敵だって余裕だろうよ!」
あちこちで似たような会話が聞こえてくる。みんな笑顔で、まるでお祭りのような雰囲気だ。
確かに、今のところ順調だ。
大きな被害も効かないし、モンスターを倒すペースも悪くない。
「よぉ、アンリ。調子はどうだ?」
話しかけてきたのはゼフィルさんだった。
昨日のように冒険者ギルドに名称未定を送り届けたところだった。
「今のところは調子いいです。ゼフィルさんのほうはどうですか?」
「俺も今のところは問題なしだな。ただ、今日はわからん」
「それはどうしてですか?」
「これからガラボゾの町最強の冒険者を集めたパーティーでレイドボスに挑むつもりだ。だから、苦戦するかもな」
発言そのものは弱気に見えるけど、ゼフィルさん自身はどこか嬉しそうだった。だから、僕は思わずそのことを問いただした。
「その割りには随分嬉しそうですね」
「当たり前だろ。今まで見たことがない強敵と戦えるかもしれないんだぞ。こんなの心が踊らないわけがないだろ」
そう言って、ゼフィルさんは口元を緩める。
根っからの戦闘好きだ。
きっとゼフィルさんにとって、戦うことは心の底から楽しいことなんだろう。僕はどうだろう。昔と比べたら楽しむ余裕もでてきたけど、僕にとって戦いは妹も守る手段でしかない。
だから、どうしても楽しむというより必死さが勝ってしまう。
「アンリもこれからレイドダンジョンに行くんだろ?」
「はい、そうです」
僕が行くのはボスがいるレイドダンジョンではないけど、それでも重要なことには変わりない。
「妹のリリアも同行するんだったな。あいつは腕は立つが少々危なっかしいところがある。だから頼むな」
「はい、わかりました!」
僕の返事に満足したゼフィルさんは僕の肩を何度か叩いては用は済んだとばかりに離れていった。
その足取りは堂々としていて、不安なんて微塵も感じさせない。あの背中を見れば、レイドボスなんて簡単に倒してくれるだろうと思わせてくれるから不思議だ。
改めて、僕ではなくゼフィルさんが〈名もなきクラン〉のリーダーになってよかったと思える。
きっとゼフィルさんがレイドボスを倒してくれるはずだ。
「アンリ、遅いわよ」
集合場所にはすでに僕以外、全員揃っていた。
「ごめん、少し話していて遅くなりました」
「いえいえ、わたくしはアンリ様のためなら、いくらでも待つことができましたよ」
「ちょっと、そんな言い方したら、まるでわたしが悪者みたいじゃない」
そう言って、オーロイアさんがリリアさんに噛みつく。
どうしよう。また二人が喧嘩してしまった。
「ギッハハハハハッっっ!! こんなうるさいチビどもは置いて早く行こうぜ、兄貴!」
今度はハビニールさんが肩を組んできては僕のことを兄貴と呼ぶ。
「アンリ! まさか私よりそんなおばさんのほうがいいと思うわけ!?」
「うっ、まさかそんな変わった趣味をお持ちとは思わなかったです」
「今、俺様のことおばさんと言ったか……」
今度はハビニールさんも一緒に三人でわちゃわちゃし始めた。こんなときどうすればいいのか、まったく見当もつかないんだけど。
残り二人、ソルナさんとナットさんがどうにも場を収めてくれないかとチラリと見る。彼らは僕よりもずっと年上だし、こうときは頼りになるはずだ。
「すげぇ……。俺たちのリーダーはどれだけ懐が大きいんだ。あの三人を手駒にしてしまうなんて……」
「あぁ、きっとアンリさんに任せればすべてがうまくいくだろうな」
なぜか二人とも僕のほうを羨望の眼差しで見ているんだけど……。
いったいどうして……。
こうなったら、僕がどうにかするしかないんだろう……。いったん深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
「僕からみんなに言いたいことがある!」
思い切り声を張り上げると、みんなの注目が一気に僕に集まった。
「レイドイベントはまだ始まったばかりだ。油断は禁物だよ。僕たちには大切な役目がある。南東のレイドダンジョンを攻略して、レイドボス討伐に役立つアイテムを手に入れなきゃいけない。みんなの力が必要なんだ」
一呼吸置いて、一人一人の顔を見た。
「中には知り合って間もない人たちもいるけど、この町を守りたいという気持ちはみんな一緒のはずだ。だから、みんな僕に協力してほしい! そして、一緒にこの町を守ろう!」
そう言うと、みんなの表情が真剣になっていくのがわかる。
「アンリの言う通りね。今だけはお互い協力しあいましょう」
オーロイアさんが頷いた。
「そうですね。わたくしも反論はありませんわ。このリリア、全力で戦う覚悟です」
リリアさんも素直に認めた。
「兄貴の言う通りだな! さぁ、行こうぜ!」
ハビニールさんが拳を突き上げる。
ソルナさんとナットさんも頷いてくれた。
「それじゃあ、レイドダンジョンに向かおうか」
きっと、僕たちならどんな困難も乗り越えられるはずだ。
業務連絡。
壁抜けバグ、アニメ化決まりました!
そんなわけで久々の更新です。
えーと、コミカライズに合わせて以下の点を直しました。
◯ロドリグとかいうわかりづらいお方の名前をゼフィルにする
→みつけたのは全部直しました。もし、残っていたらごめんなさい……。
◯ハビニールが女になりました……。
できるかぎり直しました……。コミカライズにて女にして登場させたいとのことで、webもそっち合わせて直しましたが、男だった名残が残っているかも。
もし、見つけた場合、誤字報告などあれば直します……。
それと、新作、お願いします!
『わたしだけ、魔物じゃなくて【人間】を殺害しないと経験値をもらえないんですが?~『癒やし系大天使』とバズった幼女、実は配信の裏で『虐殺』しています~』
というタイトルです。
超絶おもしろい本格ダークファンタジーです!
ご興味がありましたら、こちらも読んでいただけますと嬉しいです。
下記のURLからコピペするか、下の方にスクロールするとリンクがありますので、そこから飛んでいただければ幸いです。
【https://book1.adouzi.eu.org/n1857lt/】
壁抜けバグは実は、続きはたくさんパソコンに眠っているで少しずつ更新していく予定です。




