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追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します  作者: 武蔵野純平
第十章 レッドアラート!

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第307話 モスクワ強襲作戦(前編)

「アンジェロ少年! いよいよである!」


「はい! 今日で終らせましょう!」


 モスクワを目指して飛ぶ異世界飛行機の大編隊の中央に、俺と黒丸師匠は位置している。


 編隊の先頭――パスファインダーは、ルーナ先生。

 続いて特殊作戦機のブラックホーク。

 そして、俺、黒丸師匠、異世界飛行機グースが続く。


 五月の半ばとはいえ、早朝の上空は冷える。

 俺は飛行魔法を発動しながら、風防の代わりに魔法障壁を前方に展開した。


「黒丸師匠、冷えますね」


「そうであるな。それがしは平気であるが、人族には辛いのである」


 黒丸師匠が、隣を飛ぶ異世界飛行機グースを指さした。


 後部座席に女魔法使いが搭乗している。

 革ジャンや毛皮のついた飛行帽をかぶっているが、それでも空の上で吹きさらしだ。

 女魔法使いは、首をすくめてジッと寒さに耐えていた。


「この戦いが終ったら、携帯の暖房器具を開発しますよ」


「それは良いのである!」


 俺と黒丸師匠は、他愛のないことを話し緊張をほぐした。


 ――そろそろ、モスクワだ。


 先頭を飛ぶルーナ先生の声が、風魔法にのって聞こえてきた。


「ウイスキーリーダーより全機! タリホー! モスクワだ! 高度を下げろ!」


 全体の戦闘指揮は、ルーナ先生――ウイスキーリーダーがとる。


 ルーナ先生に続くブラックホークが、次々に左にバンクを描き高度を下げる。

 俺たちも先行する機体に従う。


 遠くにソ連の首都モスクワ、つまり旧ミスル王国の王都レーベの王宮が見える。

 手前には首都を守る城壁が連なるが、航空機には無意味だ。


 高度を地表近くまで下げ、首都モスクワにアプローチ。

 城壁がぐんぐん近づいてくる。


 風魔法にのって、ルーナ先生の指示が聞こえた。


「こちらウイスキーリーダー! 全機突撃せよ! アターック!」


「「「「「おう!」」」」」


 特殊部隊員の白狼族たちが、気合いの入った雄叫びを上げる。


 同時に城壁の上にいた兵士が倒れるのが見えた。

 ルーナ先生が風属性の攻撃魔法を放ったのだろう。


 ブラックホークが次々と城壁をかすめるように飛んでいく。


 続いて、俺と黒丸師匠も城壁の上をパスする。


 まだ、早朝で薄暗いモスクワの街に人影はない。

 これなら一般市民を戦闘に巻き込まずに済みそうだ。


「アンジェロ少年! 上がるのである!」


「了解です!」


 俺と黒丸師匠は、高度をとった。

 全体を見て支援するのが、俺と黒丸師匠の任務だ。


 ビルの高さ程度まで空に上がると、モスクワが一望出来る。


「王宮にとりつきましたね」


「さすがサラなのである!」


 白狼族の特殊部隊員を乗せたブラックホークが、早くも王宮にとりついた。


 ヘリコプター機動で王宮の庭やロビーに素早く機体を降ろし、白狼族の特殊部隊員たちがショートソードを片手に飛び出して行く。


 エルハムさんが進むべき方向を指さし、サラが特殊部隊員たちを手招きする。


「一気に制圧するぞ! 続け!」


 サラはひと声吠えると、逆手に持った短剣を振るった。王宮の奥から飛び出してきた兵士がドウと倒れ、白狼族の特殊部隊員たちが王宮の奥へと消えていく。


「黒丸師匠! そろそろ、敵が俺たちに気が付いたのでは?」


「そうであるな。警戒するのである!」


 俺は、いつでも魔法を発動出来るように身構え、黒丸師匠も背中からオリハルコンの大剣を引き抜き、いつでも攻撃出来るようにスタンバイする。


 あちこちで散発的に兵士の抵抗が始まったが、白狼族の特殊部隊員を乗せたブラックホークは、次々と目標拠点を制圧した。


 人質が詰め込まれていると思われる戦車競技場、近衛騎士団の詰め所、王宮の門、城壁の門――制圧予定地点に、グンマー連合王国の旗が上がった。


「ウイスキーリーダーより、グース各機へ! 着陸して兵士を降ろせ!」


 風魔法にのってルーナ先生の指示が届いた。


 グースは、着陸出来るスペースに次々と機体を降ろしていく。

 広い道路や戦車競技場にグースが集中した。


「あっ! まずいのである!」


 黒丸師匠の慌てた声が聞こえた。


 ボッ!


 空気を切り裂く音が聞こえた。

 すると一機のグースがフラフラと墜落しだしたのだ。


「なっ!?」


「スコーピオンである!」


「クソ! 対空陣地か!」


 スコーピオンは、矢の代わりに槍を打ち出す代物だ。


 映画で見たベトコンの対空陣地よろしく、土嚢で壁を作り簡易な陣地を形成し、陣地の中央に大型のクロスボウであるスコーピオンを設置している。


 ヨシフ・スターリンと名乗る人物は、地球からの転生者だ。

 こちらに飛行機があることを知って、対策をしていたのか!


「アンジェロ少年は、やられたグースへ! それがしは、アレを黙らせるのである!」


「了解です!」


 黒丸師匠に対空陣地の対処を任せ、俺は墜落中のグースへ向けて飛んだ。

 飛行魔法を全開にすると、みるみるグースが近づいてきた。


 木製のプロペラを砕かれたらしい。

 ガリガリと異音を放ちながらも、なんとか姿勢を制御している。


 パイロットはリス族、後部座席には人族、そして増設したシートには四人の黒豹族が乗っている。


 全員、恐怖で顔を引きつらせている。


 リス族のパイロットは、なんとか機体をコントロールして姿勢を立て直そうとしているが、地上が近い。


 俺は黒豹族の兵士に怒鳴った。


「飛び降りろ! 家の屋根に飛べ!」


 獣人は身体能力が高い。

 家の屋根と近づいたタイミングで飛び降りることは可能だ。


 リス族のパイロットが、グースを家の屋根になんとか寄せた。

 一瞬のチャンスを逃さず黒豹族が次々と飛び降りる。


「行くぞ!」

「そりゃ!」

「オオ!」

「エイ!」


 黒豹族は、鮮やかな身のこなしで、屋根の上に飛び降りた。

 だが、グースをコントロール出来たのは、そこまでだ。


 失速したグースは翼をへし折りながら、モスクワの裏通りに墜落した。


「大丈夫か! しっかりしろ!」


 グースへ駆け寄ると、リス族のパイロットは足を折っていた。

 後部座席に搭乗していた人族の女魔法使いは、意識がない。


 俺は転移魔法でゲートをドクロザワにつなぎ、リス族のパイロットと人族の女魔法使いを後送した。


 裏通りから空を見上げると、あちこちから対空砲火があがっている。

 スコーピオンと火属性の魔道具だ。


 対空砲火はかなり激しく、また一機グースが墜落していくのが見え、兵士の叫び声が聞こえた。


「本当に……、降りられるのかよ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 敵がソ連でこっちが飛行機乗ってるとなると… ルーデル式急降下爆撃ですべて解決かなぁ
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