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追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します  作者: 武蔵野純平
第十章 レッドアラート!

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第277話 予期せぬ訪問者

 ――二月一日、キャランフィールド。


「オイ! コラ! アンジェロに会わせろって、言ってるだろ!」


「今、取り次ぎますから! お待ち下さい!」


 執務室でじいと打ち合わせをしていると、廊下から怒鳴り合う声が聞こえた。

 若い男性の声だな。


 すぐに扉が開き一人の獣人が、勝手に執務室に入ってきた。


「よう! お前がアンジェロだろ? そうだろ?」


 じいが、俺と獣人の間にサッと割って入る。


「待たんかー! いくら何でも行儀が悪かろう!」


 じいの剣幕に若い獣人がキョトンとした。


「いや、そんな怒らなくても……。そんなに行儀が悪いか?」


「それ! それじゃ! 足下を見てみい!」


 じいが指さす先には、獣人の足にしがみつく衛兵がいた。

 それも六人。


「おお! ワリイ! 急いでたからよ! 気が付かなかった!」


 六人を引きずって気が付かなかったか……。

 なかなかのパワーだな。


 若い獣人が悪気のない態度で答えたので、じいは拍子抜けだ。


「して、用件はなんじゃ?」


「この手紙をアンジェロ……さん……に届けろって頼まれた」


 若い獣人は、ズボンのお尻ポケットから手紙を取り出した。

 じいは手紙を受け取り、不審な点がないかチェックしている。


「誰からの手紙じゃ?」


「イネス。サーベルタイガーテイマーのイネスからだ。えーと……、ルーナってエルフの友達だと言えばわかると」


「「……」」


 イネスは、行方不明になっていたのだ。

 手紙が来たということは、何らかのトラブルに巻き込まれたか?

 俺とじいに緊張が走った。


 イネスからの手紙は、油紙に包まれしっかりと封をされている。

 じいが油紙を外しながら、何気ない口調で若い獣人から情報を引き出し始めた。


「うむ。イネス殿は知っておるぞ! ご苦労じゃったの。オマエさん、どこから手紙を運んでくれたんじゃ?」


「ああ。カタロニアからだ」


 カタロニアから……。

 イネスは、故郷に帰っていたのか。

 だが、カタロニアは――。


「あ! ちょい待ち! えーと……、今はソビエトなんとかの、カタロニアなんとか国になってるぜ」


「「……」」


 俺とじいに、さらなる緊張が走った。

 この若い獣人は、イネスの使いでソ連からやって来たのだ。


 じいは、若い獣人に背中を向けたまま手紙の封蝋を丁寧にはがしている。


「それは、遠いところから来たのう」


「おう! まあ、でもよ。国境を越えて、アンタたちの軍に会ったら後は早かったぜ。あの飛行機スゲエな。なかなか早いじゃねえか!」


「そうか、そうか……。ところで腹は減っておらんか? 空を飛んできたなら体も冷えたじゃろう。食堂で食事してきてはどうじゃ? ワシのおごりじゃ」


 じいは、緊張を相手に悟らせない。

 口調は優しく、人の良いおじいちゃんが話しているようだ。

 だが、目つきはかなり厳しい。


 若い獣人は、じいの様子に気が付かずリラックスして会話を続けている。


「おお! じいさんイイのか? 俺はけっこう食うぜ?」


「構わんよ。こうして手紙を届けてくれたんじゃ。腹一杯食ってくれ。泊まるところも用意させよう」


「ありがとよ!」


「ああ、そうそう、お前さん名前は?」


「ヴィスだ!」


「見たところ獣人じゃが、何族じゃ?」


「赤獅子族だ!」


 赤獅子族って……!

 俺たちが滅ぼした獣人族じゃないか!


 俺は赤獅子族のヴィスに気が付かれないように、魔力を練り始める。

 コイツがあの赤獅子族の生き残りなら、相当戦闘力が高いはずだ。


 じいがチラリとこちらを見た。

 視線で『待て!』と言っている。


「うむ。では、ヴィス殿……、食堂に案内させよう。本当にご苦労じゃったの。ありがとう」


「おう! 手紙ちゃんと読めよ!」


 ヴィスは、じいが呼んだメイドに案内されて食堂へ向かった。


 ヴィスが出て行ってから、しばらくして俺は息を吐いた。


「ふう……」


 じいもドサリと椅子に座り、冷めてしまった紅茶を一口飲んだ。


「情報が多すぎますな。イネス殿からの手紙……。ソビエトから来た男……。赤獅子族……」


「そうだね。とにかくイネスからの手紙を読もう。それから、ルーナ先生と黒丸師匠を呼んで」


「かしこまりました」


 俺はイネスからの手紙を開いた。

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