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追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します  作者: 武蔵野純平
第九章 新しい王国

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第236話 名前シリーズ:スライムテイマー、エラさんの商会

 ――十日後。


 スライムテイマーのエラさんは、キャランフィールドの街にすっかり馴染んでしまった。


 ピッ! ピッ!

 ピッ! ピッ!


 ――と、エラさんがホイッスルを吹き、バスガイドみたいに杖を振りながら街を歩く。

 すると、エラさんの後ろを沢山のスライムがポヨンポヨンとついていく。


 スライム大行進は、街の子供たちに大人気だ。


 キャランフィールドの人々には、エラさんとスライムは清掃業者として名が売れている。

 食堂や居酒屋の厨房の油汚れや各家庭の下水道など、ピカピカにしてくれるのだ。


「エラちゃん。ウチの店のお掃除よろしくね」


「お任せください! さあ! スライムちゃん! 今日は食堂のお掃除だよ!」


 ピッピー!


 エラさんがホイッスルを吹く度に、スライムが働き、今日も街のどこかがきれいになるのだ。


 そして、シオフキスライムを使った塩の生産も順調。

 商業ギルドと奴隷商人ベルントに卸している。


 エラさんの商会は従業員二人だが、この調子ならすぐに人が増えそうだ。


 今日は、商会開き、商会の建物が出来たので、看板を取り付けてお披露目だ。


 俺が魔法で作った石造り三階建ての建物に、木製の看板を設置中で、看板には商会の名前が書いてある。


 エラさんの商会の名前は――。


「おそうじバナナ商会なのです!」


「おっ……おう! スバラシイ名前ですね(棒)」


 ナニかイロイロと意味深な……。

 俺は隣に立つジョバンニを小突く。


「ジョバンニ! 『おそうじバナナ』って、何だよ!? エラ商会で良いだろ?」


「アンジェロ様。それが、エラさんの希望でして……。好きな食べ物を、商会の名前に入れたいと言うので……」


「それで、バナナか! ああ、シメイ伯爵領に生えているな。それでか!」


 確かに、シメイ伯爵領にバナナが生えている。

 領民の間では、ポピュラーな食べ物だ。

 ネットリと熟れていて、甘くて美味しい。


 ただ、俺が転生前に日本で食べたバナナと違って、種アリでちょっと食べづらい。


「まあ、アンジェロ様。エラさんの商会ですから、名前くらい自由につけてよろしいでしょう。それとも、アンジェロ様が命名したかったですか?」


「いや……遠慮しておく……」


 命名は苦手なのだ。

 また、サイターマとか、ドクロザワとか、日本の地名シリーズになってしまう。

 うっかりススキノ商会とかつけたら、なんだしな。


「あの従業員二人は、大丈夫なのか?」


「はい。モリーノ商会で修行していた者ですので、身元確実です。ご安心ください」


「じいちゃんの所か!」


 それなら安心だ。

 ジョバンニが経営の相談に乗るし、エラさんの『おそうじバナナ商会』は安泰だろう。


「ジョバンニ、後は任せるぞ!」


「承りました!」


 俺は、急いで執務室に戻った。

 今日は、俺が召集した『四頭会議』が開催されるのだ。


 アルドギスル兄上たちが、ここキャランフィールドへやってくる。

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