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22:腕時計について


ついにこれを語っちゃうときが来たか……


自分の中では禁断のテーマである


腕時計が2年前から欲しいのだ。とっておきのやつ


百万円のやつ


で、こう言うと反応がぱっかり分かれる。


「はっ?! 何でそんなのにお金かけんのバッカじゃないの」


「いいね、買っちゃいなよ。むしろ何で躊躇してんの」


そう、これは人の価値観が絡む。だから禁断のテーマなのだ


私ですか? 私は中道を行く


『いつかは買うが今は保留』


欲しい欲しいといいながらギリギリまで買わないで迷うのを楽しむ、これが一番だろう……たぶん


家人に相談すると「好きなものを買え」と放棄モードだ


「もし君が迷っていて、僕の意見を参考にしたいなら言わせてもらうよ」


彼は腕を組み、口を開いた。


「その時計は何の目的で買うの?」


「時間を確認したい」


「時間……?」


メガネが光る。


「僕なら時間を確認する機構に百万は払わない、手で削りあげて組んだムーヴメントが入ってるとかならともかく。もはやそれは装飾品に定義すべきだ」


……定義の問題? このおっさんの論点もどこかずれている


しかし賢い風に頓珍漢なことを言いながら私を煙に巻こうとするインチキメガネめ……のぞむところだ


装飾品と言うのならダイヤマシマシで注文してやる


まだ買ってもいない時計でこれだけ楽しい思いをさせてもらえる、やはり私は幸せ者だと定義されるべきだろう


この人から札束一本分の満足を得たなと感じられたら買おうと思う(「いや、すぐ買えよ」と家人が後ろでツッコミを入れている。うむ、快勝)

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