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順応力が高すぎる男子高校生がTSした場合   作者: m-kawa


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第67話 もう一人のおとこのこ

「それは緊急ミッションね」


 放課後になって、土曜日に水着を買いに行く話を佳織にもしたところ、返ってきた言葉がこれだ。プールの授業は来週だから緊急ではあるんだが、言い方はどうにかならんのか。


「んで静が祐平も買い物に誘ってるんだけど、二人はいいのか?」


 ほとんど事後承諾になっている上に、祐平からすると半ば強制参加させられたと思っているのかも。『変な男が寄ってこないように』とか言われて渋々でも頷くことを考えれば、本人も役得と思ってるところがあるかもしれないが。


「私はいいと思いますよ」


「いいんじゃないの。……これ以上変な男に近づいて欲しくないし」


 何やら佳織が遠い眼をしているが、俺も激しく同意だ。ああいった輩が来なくなるのであれば、祐平が来ることに異存はない。

 なんだかんだ言って祐平はグイグイくるタイプじゃないし、普通に話せる相手でもある。……いやちょっと待て。今まともに話せる男って、祐平しかいないんじゃなかろうか。


 ふと気づいてしまった現実に、授業も終わって半分ほど人のいなくなった教室を改めて見回してみる。もともとそんなに深い付き合いのある男はクラスにはいない。昔よくつるんでいたのは虎鉄か……。今ではヘンタイなので、話をするのも勘弁願いたくなったが。


「……まぁそれならいいか」


 一人で凹みながらも祐平が来ることに納得する。話をする相手がいなくなったわけじゃないし、今まで気にもなってなかったんだからいいか。むしろこれからもよろしくって感じだな。


「じゃあいつものモール正面玄関に11時集合でいいかな」


 佳織がそう宣言すると、二人とも特に問題ないとばかりに了承する。


「じゃああとで祐平にも集合時間伝えておいてくれる?」


「へいへい」


 そうして土曜日に、いつものメンバーに加えて男が来ることになったのだ。




「もう一人ってどんな子だろうね」


 気が付けばもう土曜日。佳織と肩を並べて集合場所へ向かえば、静と千亜季の二人はもう揃っていた。そして予想通りというかなんというか、男はまだ来ていない。


 千亜季が言った通り、祐平ともう一人男子が来ることになっている。最初は祐平一人だったんだが、さすがに女四人の中に男一人は辛かったのだろう。もう一人他のクラスの男子を連れてきていいかと聞かれたのだ。


「圭ちゃんのこと知らない他のクラスの男子ってだけで何か新鮮だよね」


 言われてみればそんな気もする。男の俺も今の俺も知らない男子というのは普段も関わりがないわけで、こういう機会でもないと知り合えないだろう。


「変な男子じゃなければいいわよ」


 一方佳織はあんまり興味がなさそうだ。かくいう俺もそこまで興味があるわけでもない。マジで変な奴じゃないことを祈るだけだ。とはいえ祐平の友達だし、そこそこ信用できるんじゃないかと思う。……なんとなくだけど。


「待たせたな」


 四人でわいわいと待っていると、聞きなれた男子の声が聞こえてきた。顔を向けてみれば予想通りの祐平と、もう一人小柄な人物がいた。

 大柄な祐平と並ぶと余計にその小ささが強調される。小顔なうえに色白で、細身の黒いジーンズパンツに青を基調とした柄の入った長袖のシャツを羽織っている。


「ど、どうも初めまして」


 なおかつ緊張しているのか、上ずった声でそのピンク色に染まった頬を見れば。


「……祐平の彼女?」


 隣にいる大柄な男子へとそう問いかけてしまってもしょうがないというもんだ。


「違います!」


 案の定というかなんというか、即ツッコミが返ってきた。どうやら彼女ではないらしい。


「いやてっきり男子が来るもんだと思ってたけど」


 俺の言葉に女子三人組もうんうんと頷いている。


「だから、違いますって!」


 さらに力強く否定されるが、いったい何が違うというんだろうか。


「あー、すまん。残念ながらこいつは男だ」


 祐平が額に手を当てて性別について教えてくれるが、そんな馬鹿な話があるはずがない。どこからどう見ても、男に見えるような服装してる女子だろう。


「二年二組の椎野(しいの)拓也(たくや)です……」


 若干諦めの入ったため息とともに自己紹介をしてくれた。

 なるほど、どうやら男子らしい。祐平に彼女がいるという話も聞いたことはなかったし、男子に間違いはないんだろう。

 それはともかく、こちらも順番に自己紹介をしていく。


「最後は俺か。同じく二年五組の五十嵐(いがらし)(けい)……だ」


 思わず圭一と言いそうになったが一歩踏みとどまった。『俺』と言ってる時点で手遅れじゃないかと思わないでもないが、一人称くらいなら大丈夫だろう。これ以上となると事情を知らないやつに説明するのは面倒なのだ。


「俺……?」


 俺という自己紹介に反応した拓也に、祐平が笑いをかみ殺している。拓也が首をかしげながら不思議そうにこっちを見てくる。


「もしかして……、五十嵐さんは男子では……」


「だはははは!」


 その言葉にとうとう我慢できなかったのか、祐平が声を上げて笑い出す。祐平を睨みつけるが効果があるはずもない。

 ずっと男だったらこんなことにはなってなかったんだがなぁ……。

 まぁ今更『私』と言い直すのもアレだし、とりあえず一人称はこのままでいくか。


「残念だけど、れっきとした女の子です」


 本当に残念に思っているかどうかは今となってはわからない。楽しんでいるところもあるからだ。しかし、ここで事態をややこしくする必要もない。しっかりと男子であることは否定しておくのだった。

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