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第九話:サマータイム2xxxx

 照り付ける太陽、白い砂浜、青い海。

 大勢の人たちの笑顔で溢れている。


 子供は笑って浮き輪を抱えながら走り、親はそれを和やかに眺めている。

 

 対して俺は、美女の背中を眺めていた。


「ダリス、日焼けオイルをもっとまんべんなくお願いします」

「はい、エヴィ」


 フレアチュール、バックレースの白い水着姿のエヴィの背中に触れていた。

 こんなの極刑ものじゃないか?いいのか?


「ダリスさん、私も次お願いしますねえ」

「はい、ユベラ」


 続いて、ブラックワンピースのユベラの背中にも触れる。

 魔法使いの肌は魔力でつるつるだと聞いた事があった。その通り、確かに毛が一本もない。

 噂によると、火魔法で消えるとか。


 髪の毛はなんで残るんだ?

 ……ってことはもしかしてあそこも――。


「……ダリ私も……」

「はい、ケアル」


 なぜか顔を背けながら言ったのはケアルだ。

 これがギャップか、と思うほどカワイイピンクの水着を着ている。

 ちなみにこれは、みんなで買いにいったらしい。


 日差しは熱いが、海は気持ちがいい。

 本屋で、前から欲しくてたまらなかった最終巻も買えた。

 ご飯も美味しいし。

 いつも引きこもってばっかりなので、たまにはこういうのもいいな。


「情報によると、近いうちに道武器の取引が行われるとのことです。現場を抑えたいところですね」

「ふふふ、悪い子はお仕置きしないとダメですねわ」

「政府規約に違反していますし、現場を抑えたら皆殺しですか?」


 そんな優雅な気持ちは、エヴィの可愛い声色でかき消された。

 とんでもないことになりそうだ。

 想像しただけでおそろしい。


 そのとき、俺たちをみた男たちが、嬉しそうに声をあげた。


「お、おいなんだあの男、すげえな」

「ああ、美女三人連れてバカンスかよ」

「羨ましいぜ。俺もあんな幸せに浸りたい」


 あいつらはわかっていない。

 今ここにいるのは、最凶の女帝と、西の悪魔と、虐殺部隊の隊長ということを。


 それに対しブックマンの俺って、一番大したことなさすぎだろ……。


   ◇


 たっぷり海で遊んだ後、高級中華の店に来ていた。

 フルコースの料理がどれも美味しくて、一等兵の俺なんじゃが手が出せないものばかりだ。


 ロブスターのようなやつ。

 フカヒレののようなやつ。

 なんかようなすごいやつ。


 異世界なので、全部ようながつく。


「美味しいですね。ユベラ、ほっぺにエビの殻がついてますよ」

「あら、取ってケアル」

「しょうがないな……」


 こうしてしてみるとただの家族みたいだ。


 だがそのとき――。


「オラァッア! 金持ちどもがあ!」

「動くな。動くんじゃねえぞ!」

「おらあああああ! 金目の物を出せ!」


 突然、扉を開けて入ってきたのは、武装集団だった。

 魔道兵器、いわゆる銃みたいなものを持っている。


 最近治安が少しずつ悪くなってきているときいたが、まさかこんな場面に出くわすとは。


「エヴィアン様、この海鮮、美味しいですわ」

「んーっ、ほんと! 柔らかいですね」

「私はこの茶碗蒸しが好きです」


 だが視線を戻しても、夜下がりのディナータイムの光景は変わっていなかった。

 え、この人たちだけ時空歪んでない?

 ちゃんと声とか、音とか、聞こえてるよね!?


「おいテメェラ! 何変わらずエビ食ってんだよ! 金だせや!」


 当然だが怒られる。

 それもめちゃくちゃ怒ってる。


「ふう、食後のデザートは何にします?」

「私はお腹いっぱいですわ」

「杏仁豆腐ってのがあるみたいですね」


 完全なる女子会に強盗も戸惑っていた。

 なんか同情してしまう。


 するとその時、とんでもないことをした。


 エヴィアンの肩を掴んだのだ。


 いや、当然だが……。


 すると、ユベラ、ケアルが、恐ろしい目つきをした。


「いま自分が何をしてるのか……あなたわかってます?」

「……それ早くどけやがれカス野郎」


「ああ!? てめぇらぶち殺すぞ!? まずはこの小娘(・・)を血祭りにあげてやろうかァ!?」


 

 ――ブック。


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