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赤ずきんとドロシィ(1)

「まぁ、キレイなお花!」


 赤い頭巾の少女はてててと小走りで近くの花に駆け寄る。森のなかにぽっかりとひらけた空間には色とりどりの花が咲き誇る。


「えいっ☆」


 ぶちぶちっ!


 ……頭巾の少女は、割りと容赦のない調子で手近な花を数本力任せに引っこ抜いた。根っこごと引っこ抜かれた花たちが養分と大地に別れを告げる音も気にせず、次、また次と幾本かの花を集め、持っていた斧の刃を起用に押し当てて適当な長さに茎を切りそろえると、即席の花束が完成した。


「できたわ! うふふ、これならおばあちゃんも喜んでくれること間違いなしね」


 楽しげに言いながら作ったばかりの花束を顔に寄せ、スンスンと鼻を鳴らす。


「ん、いい匂い。オオカミさんの言うとおりにしてよかったわ。まさかこの森にこんな場所があったなんて知らなかったもの」


 少女は満足げに顔をほころばせると、花を切りそろえるのに使った大ぶりの斧を軽々と背負い直し、花を引きちぎ――摘むためにおろしていたバスケットを持ち直す。


 ふと少女が顔をあげると、頂天に輝いていた太陽がいくらか傾いている。


「いっけない! 思ってたよりずっと遠回りになっちゃったし、急がないと」


 少女が慌ただしく駆け出そうとしたその時、木々に囲まれた空間にふわりとどこからともいえない奇妙な風が吹いた。



「ほっ、と」



 不思議な風の中心には、いつ、どこから、この場に現れたのか。ついさっきまで頭巾の少女が花を摘んでいた場所に、一人の少女が立っていた。


「到着でございます、ドロシィ様」


 どこからともなく声がする。


「楽しみだわ、今度はどこに連れてきてくれたの?」


「見ての通り森でございます」


 不思議な声と、突然現れた少女――ドロシィというらしい――が呑気なやり取りをする。


「森ねぇ。でも、海ほど珍しくないわ。森ならオズの国でも、ってあら?」


 突然現れたドロシィが、ようやくポカンと口を開けて自分を見つめる頭巾の少女に気づいて声を上げる。


「えっと、あなたは……」


「あらあら、まぁ、まぁまぁまぁまぁ!」


 小首をかしげたドロシィに構わず、頭巾の少女は機敏な動きでしゅばっとドロシィの眼前に迫ると、勢いそのままに飛びついた。


「可愛い! 可愛いわ! なんて可愛い妖精さんなんでしょう!」


「よ、妖精? わぷ、む、胸が、むぐぐ」


 ガッチリとドロシィをホールドした両腕で目一杯の愛情を込めて小さな体を抱きしめる。自分より頭一つ背の高い彼女に抱かれて、そのたわわな胸に顔を突っ込まれたドロシィはむぐむぐと空気を求めて藻掻いたが、頭巾の少女の細腕に似合わぬ万力のような力からは逃れられず、程なくしてびくんびくんと痙攣し始めた。


「ド、ドロシィ様――――ッ!」


 不思議な声、もとい魔法の靴の声が森に響く。

 人魚姫と別れた時の大人げはどこへやら、今回のお話はこうして始まるのだった。

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