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誤解

「西垣。 少し話がしたい。 昼休み・・・柔道場近くに来てくれ。」


 次の授業の間休みに西垣に向かってそんなことを言った。


「分かりました。 私も、積和君とはお話がしたいと思っていたので。」


 その意味をどう捉えるべきか。 とは言え話し合いに応じてくれたのは安堵した。 その代わりにクラスから色んな感情が飛び交っていたけどな。 芦原の言う通り、人間完全に自分の感情を制御することが出来ないらしい。


 そんなことがありながらも昼休みになり、いつもの場所とは違う柔道場近くにやってきた。 ベンチなどはないものの、雨避けはあるのでそこで待機する。


 少しした後で西垣もやってきた。 表情は朝よりは落ち着いていたがそれでも怒っているように見えるのには変わらなかった。


 さて芦原の言うように、ここからは慎重にならざるを得ない事態だ。 一歩、いや、一言でも間違えれば、あの夢に近付く可能性だって存在している。 全神経とまではいかなくても、使える限りの言葉を使い、彼女の怒り、もとい嫉妬の原因を取り除かなければならない。


「なぁ西が」

「昨日の帰りに一緒にいた人は誰ですか?」


 俺が質問する前に向こうから聞いてきた。


「昨日って言うと・・・部活で一緒の引間さんの事か?」

「・・・部活で一緒になった人、なんですね?」

「買い物には付き合ったけど、それだけだ。 あ、でも芦原の時と同じようなことを話したな。 見た目に寄らず、というかあっちは素じゃないらしいからな。」

「本当にそれだけなんですよね?」


 やけに念を押されるのと西垣から出てるとは思えない程の重圧に驚きつつも、俺は素直に答えた。


「それだけだ。 あれだったら今度紹介するよ。 芦原にも紹介したいし。」

「・・・分かりました。 信じます。」


 そう付け加えるとじっと見ていた瞳から解放されて俺も胸を撫で下ろした。


「でもごめんなさい。 朝から積和君を睨み付ける真似をしてしまって。」

「いや、それに関しては別にいいんだ。 ただなんと言うか、あんな風に怒っているように見えたのは初めてだなと思ってな。」

「それが私も何故だか分からないんです。 昨日たまたまあの場所を通って積和君が楽しそうに話をしているのを見たら、なんだかこう、胸の内側から感情が沸き上がってきて・・・」


 その辺りで癇癪を起こさなかったのは西垣の我慢強さの賜物なのかもしれない。


「なんなのでしょうか、あの気持ちは。」

「なんだろうな。」


 芦原の言う通り西垣はあの感情が分かっていないようだった。 ただの嫉妬からでは人格が変わることはないことだけ分かったのは、こちらにとっては収穫なのかもしれない。


「こんなことを話しても分からないですよね。 お昼にしましょう。 お時間が無くなってしまいます。」

「そうだな。」


 誤解が解けたので何時も通りにお昼を過ごす。 まだ1ヶ月しか経っていないが、果たして西垣も俺も無事な未来に辿り着けるだろうか。

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