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互いの認識

「オレを認識してもらう? はっ! 面白いことを言う奴だな?」


 俺を見下すように見ている西垣のもう1つの人格者。 だが俺がやろうとしていることに変わりはない。


「面白ついでに聞いてやろう。 なんでこの女のためにそこまでするんだ? 昨日の女どものように恐怖して逃げるのが普通の反応だと思うがな?」

「それじゃあ西垣がいつまでも1人だろ。」


 俺はあの夢の中で感じたこともあった。 あの時の西垣は他人を信用していなかった。 あの世界線で西垣の身になにがあったのかは知らない。 少なくともこいつの目論見が「孤独による自己開放」というのなら、西垣はこいつの事を隠していたのかもしれない。 それこそ一時的な共闘をしていたのかもしれない。


 ならば理解自体はしあえるのではないかとそう睨んだのだ。


「それにこれは西垣の為じゃない。 俺自身の安息の為に動くんだ。 お前みたいな奴がいつ現れるか分からないという日常的恐怖の方がよっぽど安心できないからな。」


 嘘と本音を交えながら答える。 どちらにしろこいつの事を何とかしなければいけないわけだし、多少はいいだろう。


「安息の為、ねぇ。 オレはとある条件下の元でしか現れないもう1つの人格だぜ? 四六時中見てるわけでもねぇのに、そんなこと出来るのか?」

「出来る出来ないじゃない。 やるしかないんだ。」

「・・・そろそろ時間切れだ。 せいぜい頑張ってみな。 オレはこれでも見ているからな。」


 そう言いながら再び西垣が項垂れる。 そして目を覚ました西垣の瞳にはあの狂気的な雰囲気は残ってはいなかった。


「あれ・・・? 私・・・」

「よう西垣。 気分はどうだ?」


 俺は地べたからベンチに座り直す。 なんでもないように見せるための見栄と言っていいだろう。


「あ・・・え・・・もしかして私・・・積和君に・・・」


 しかし状況が何となく察せられた西垣はすぐに青ざめながら俺を見る。


「とりあえず落ち着いてくれ。 別に俺は西垣の事を嫌う訳じゃないし、なんだったら不快にさせたのはこっちだからな。 西垣が負い目を食らう必要はない。」

「でも・・・」

「その辺りについて教えてくれないか? 俺は一応被害者でもあるから、話を聞く権利はあるだろ?」


 今のこの状況を西垣がどう感じようと、まずは説得と把握が必要だ。 夢での西垣に対して俺が足りなかったのは理解力だ。 最後の台詞がなんだったのかは分からなかったが、あの言葉が違うのならば、もっと西垣の事を知らなければならない。


 本当は関わらないつもりだったのだが、あの惨状の原因の1つになるともなれば、こちらから動いても損はないだろう。


 西垣はゆっくりとベンチに座る。 まだお弁当箱を開けていなかったのが幸いしたので、そのままお昼の流れになった。


「私、時々気が付くと周りに怪我をしている人がいることがあるんです。」

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