着実に変化させていく
西垣と芦原が仲良くなればと思い提案したのだが、色々と不安要素もあった。
例えば西垣が話についていけなくなり、芦原が一方的な話しかけを続けた場合、これは西垣の方から距離を取ってしまい、友好関係は築けなくなってしまう。
例えば芦原が途端に喋れなくなる場合、会話が続かずそのまま解散してしまう。
俺がいるためそうならないように適度に間に入る事である程度は会話なりが続くと思っていたのだが、
「会話一つだけでも色んな言葉を使うのですね。 どのような形で勉強を?」
「常に知識を貪る時は孤高よ。 しかし文字を羅列しているだけの辞書では我が知識に残すことはなかった。 故に我には作者からの魔導書物が数多くあるのだ。」
「まあ、それは素晴らしいですわね。」
俺の不安を払拭するかのような晴々しい会話風景だった。 芦原の言葉を理解しているように会話しているのが奇跡の産物とも言える。
そんな時にどこからか携帯の着信音が鳴る。 メタル系の音なので恐らくは芦原だろうと思ったら、案の定芦原がポケットからスマホを取り出して確認していた。
「すまない。 どうやら母が仕事場からの早期帰還に成功したようでな。 我はそれを迎えるための準備をせねばならなくなった。」
「ああ。 そう言うことなら早く帰ってあげなよ。」
「本当に済まない相棒。 また再び訪れるサンライズと共に約束された地で会おう。 サラバだ。」
そう言って急ぎ足で帰っていく芦原を見ながら、俺と西垣は立ち尽くしていた。
「元気な方ですね。」
「まあ元気だけじゃないとは思うけど。 それはそうと西垣。」
俺は西垣に1つの疑問をぶつけることにした。 今後の事もあるし。
「一応聞きたいんだが、芦原の話してる内容は、理解できてたか?」
「正直に申し上げると・・・所々で言い回しが分からない所が・・・」
「あーうん。 半分でも理解していればいいと思う。 下手に聞き返す方が傷付くし。」
芦原なりに苦労をしていることをなんとなくで理解している俺でも、やはり回りくどい言い方はどうかと思った。 まああいつがイキイキしてるならそれでもいいかとも思ったが。
「俺も数回喋ったけど悪い奴じゃないし、それなりに仲良くしてやってほしい・・・かな?」
「分かりました。 お話自体は面白いですから。」
誰目線なんだと言われそうだが、これも互いのためだと思いながらそう言った。
目的の1人がいなくなってしまったのと、一応西垣の家の方面に向かっていたため、自分の家から少しずつ遠ざかっているのを確認して、自分もそろそろ帰らなければと思った。 本当なら最後まで送るのが良いのだろうが、まだそこまで親しくもなってない男子と一緒に帰るのは不服かもしれない。
「それじゃあ俺もこれで・・・」
そう言って去ろうとした時、西垣が俺の裾を掴んだ。
「私は・・・あなたとも・・・仲良くなりたい・・・です。」
その一言を言ってから裾を離して、西垣は去っていった。
「・・・顔が良いのは本当にズルいよな・・・」
トキメいている場合ではない。 そう分かっていても、胸の奥ではそう勘違いしてしまいそうな想いのまま帰る俺だった。




