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第8話 D.E.E.D. (4)

峰雲のラボでのやり取りから一刻が過ぎる頃、アガルタよりヴィルドレッド宛に直通通話要請が入る。

その相手は言うまでもなく、"あの男"だった―。


遠く離れたアガルタと13A.R.K.。

受話器を通した二人の打算と思惑が今、火花を散らす―。

「――以上が、Y028部隊がアダプター2で遭遇した事象だ」




 小さな灯りが灯る薄暗い局長室――


 ヴィルドレッドはアガルタとの直通回線で繋がれた通話機の受話器に、そう静かに告げる。

 彼の傍らでは、ミルワードが神妙な面持ちを浮かべていた。


『……今一度の確認になり申し訳ないが、マーカス局長。 式神は今現在健在であり、重症を負うも意識はある状態だ……と』


 通話先の相手――ヒューバルトはゆっくりと……そして、その感情を感じさせる事のない事務的な口調で答える。

 通話口から聞こえるその声に、ヴィルドレッドは僅かに口元を歪めた。


「ああ、その認識で間違いはない。 しかしなにぶん、熾烈を極めた戦いだった様だ…()()()()()()()()()()に、な。 今は怪我の療養も兼ねて病棟の特別室で休養を取らせているところだが――。 純種の出現よりもまず、()()を確認とは。 式神の存在とは、やはり特別なもの……と」

『……当然、第13A.R.K.近辺に数十年ぶりとなる純種が出現したという事実は捨て置けない……だが私の本分はそこではない事とご理解頂きたい。 ……あくまで式神の状態を確認する事が、私に課せられた任務なのです』


 そう答えると、通話口から幾分苛立ちを感じさせる声で彼は続けた。


『……しかし、純種との戦闘を経て彼女が健在なのであれば……こちらとしては直ぐにでも()()の身柄を引き渡して頂きたい』

「理由を聞かせて頂いても宜しいか、ヒューバルト大尉」


 間髪入れずに反すヴィルドレッドはやや目を細めると挑発的な光をその瞳に灯す。


『今回の作戦ログは聞けば消失したとの事……ならば式神を一度回収し、こちらでも戦果を聴取したい。 提出される作戦ログが無いのであればこそ、こちらも先の戦闘で何が起きたかの詳細を知る必要がある。 そもそも戦闘におけるフィードバックを得る目的で、そちらに配属させているのですから』


 確かに、筋は通っている。


 戦闘ログが本当にコンソールの不具合などによる消失であるならば、と――ヴィルドレッドはヒューバルトの言葉を頭の中で巡らせつつ、整えられたあごひげをゆっくりと撫でる。


「……申し訳ないが……それは了解し兼ねるな。 ヒューバルト大尉」

『……何?』


 僅かな間の後、徐に発せられたヴィルドレッドの回答に――

 受話器の向こう……ヒューバルトはぴくり、とその眉を動かした。


『了解し兼ねる、と申し上げたのだ。 貴殿は彼女――式神を我々の部隊へと正式に預けた。 条件と引き換えに――だ。 お忘れか?』

「……物資の支給と援助の事を指すならば、突然の配属に突然の引き上げ……それに対する詫びとしては、十分な量だと把握しているが」


 まさかのヴィルドレッドからの引き上げの拒否に、黒ぶち眼鏡の奥で黒い瞳を苛立ちに細めながら、モニターに表示されるヴィルドレッドのパーソナルデータを睨み付ける。


『確かに物資と引き換えを条件に配属を了解した立場ではあるが、まさかあの物資――貴殿の一存で全てが決められた訳ではあるまい? なれば私は13A.R.K.の代表として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 もし、貴殿が我がA.R.K.に正式に帰属する部隊員を引き抜き連れ戻すと言うなら、"相応の手続き"が必要になる筈だ……違うかね』


 つまり、ヴィルドレッドはこう言いたいのだ。

 式神は形式上、正式に13A.R.K.に帰属している。大尉である自分の一存で引き上げる事は出来ない、そうしたいのなら上を出せ、と――。



 ――()()()……



 ヒューバルトはヴィルドレッドの物言いに、喉まで出掛かった言葉を飲み込む様、ぎり、と奥歯を強く噛みしめた。


「……確かに、マーカス局長……貴方の言う通りだ。 勝手な物言い、非礼を詫びよう……だが」


 瞳に掛かる黒髪を左手で払いのけ――ふう、と込み上げる苛立ちを吐き出すと、頭を冷やす様に目を閉じ、言葉を続ける。


「御存じかと思うが……配属の際にも伝えた通り、式神という存在は非常に秘匿性が高くデリケートな存在。 アガルタに属する者全てがその存在を知り、関わっている訳ではない。 そこはご理解頂きたい」

『……全ては、人類の存亡の為という訳に、か』

「――そうだ。 かつてのヤドリギ――いや、ヤドリギと呼ばれる以前の存在、まさに黎明期(れいめいき)、そうだった様に。 貴方なら、理解頂ける事と思うが?」


 ヒューバルトの落ち着きを取り戻した声に、やや面白くない、と言う表情を浮かべるヴィルドレッド。


 しかし、彼の言わんとしている事は理解出来る部分もある。


 今でこそ、ヤドリギという存在は確立され、認知されている。

 だが彼の言う通り黎明期――"後天性(こうてんせい)時限型式(じげんがたしき)宿木(やどりぎ)"という呼称で突如、実戦へと投入された彼らたちに対する周囲の理解は……当時としては、非常に厳しいものだった。


 それも当然だ。何しろ、人類を滅ぼさんとする謎多き生命体――


 いや、生命体と定義出来るものかどうか。 そんな"人知を超えたもの"を体内に注入し、宿し――ヒトのそれから大きく離れた力を発揮する兵士たち……。

 当時は神をも冒涜する行為、人権を無視した行いだと各所から反発の声も上がった。


 だがそれに勝る危機を前に、人々はいつしかヤドリギを自分たちを守る明確な矛として認識するに至った。


 それは"時限型式"の名称が示す通り、一定の任期を終えればヒトへと戻る事が出来るという事実と、人類を――大切なものをタタリギから守り立ち向かう意志を持った者たちによる志願あってこその存在という事実が、その認識を加速的に緩和させる材料になったと言えるだろう。



 ――だが、式神は違う。



 峰雲は明確にアール……式神である彼女をして、"既存の式兵とは全くの別物"であると定義した。

 アダプター2での戦い……そしてその結末、さらに"現在の彼女の身体"から見てもそれは明白。もし、仮に――峰雲が言う通り、過去、黒江という人物が生み出した理論から生まれた存在……つまり、胎児期よりタタリギの細胞を適合させるという外法に由り生まれた存在だとしたら。



 ――そんな存在を許す程、俺は老いさらばえては居ない。



 込み上げる感情を抑えるようにゆっくりと息を吐き出し――

 ヴィルドレッドは右手に持つ受話器を、落ち着かせる様に左手へと持ち直しながら、ミルワードをその視界に入れる。


「……」


 無言で頷く彼女に応える様、深く頷くヴィルドレッド。


「……理解はしているつもりだ。 だが、我々こそ忘れてはいけない。 ヤドリギたちがその命を賭して前線に立っているなればこそ、我々はこうして瀬戸際ながら生き長らえているのだ。 今回、彼女……アールはその"()"を我々の為に賭してくれたそうだ。 ならば、我々はそれに敬意を以て答える――それが、彼らを預かる者の責務だと思っている」

『……つまり、式神を手放すつもりはない、と』


 通話口から聞こえるヒューバルトの声にどこか、仄暗いものを感じ、ヴィルドレッドはその表情を即座に引き締めた。

 恐らく彼は、こちらが式神の存在、その本当の姿を把握した上で囲おうとしていると知っていると見ていいだろう。


 そして、一言一言にこう含ませていると直感する。――穏便に済ませるならば、事を荒立たせはしない、と。


「そうは言っていない。 彼女の故郷はアガルタなのだろうし、な……必要とあらば、里帰りさせる事もやぶさかではない。 ……だが、ヒューバルト大尉、貴殿こそ知っている筈だ。 今、この第13A.R.K.が置かれている状況を、だ」

『末端、そして最前線基地として、慢性的な人員、そして戦力と物資不足……だろうか』

「そうだ。 そしてそれに加え――十数年ぶりに出現した、あの"純種"だよ」

『……』


 ヴィルドレッドは、そう言うと机の引き出しを静かに開け、古びた資料を取り出しすと――ゆっくりと、机の上に広げる。

 広げられた資料は随分と古いものだ。用紙は黄色く変色し、ところどころ破れている。何度も閲覧した結果だろうか。ページの両端はテープで破れた箇所を何度も補修した跡も見てとれた。


 慎重な手付きでページをめくりながら、ヴィルドレッドは続ける。


「……アガルタに属する貴殿ならば理解しているだろう。 ヤドリギが生まれる前――私たちを蹂躙し尽した、あの……純種だ」


 ぴたり、とページをめくる手を止めたヴィルドレッドの表情が曇る。

 その様子に、ミルワードは資料を遠慮がちに覗き込むと……その表情は、悲痛の色を浮かべた。


 その筆跡は、ヴィルドレッドが書き記したものだろうか。

 黒く――黒炭の様なものでスケッチされていたのは、黒い樹と、そして黒い――獣。獣の脇には、BYAKKO(ビャッコ)、と書き殴られていた。

 斑鳩たちの証言――Y028部隊が遭遇したであろう、まさにそれを書き記したページには、一瞬黒炭と見紛ういくつもの斑点が大量に汚している。


 黒く固まったそれは、恐らく……血。


『……先にも伝えた通り、それは理解している……マーカス局長。 こちらとしても、その件は早急に……』

「間に合わんのだよ。 それでは」


 黒く汚れたページに眼を落したまま、初めてヴィルドレッドはヒューバルトの声を制した。


「私はあれの恐ろしさをよく知っているつもりだ。 ……あれが、この第13A.R.K.……いや、再び人類のすぐ傍まで忍び寄っているのだ。 宜しいか、ヒューバルト大尉」

『……』


 言うと、大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すヴィルドレッド――

 その表情には、覚悟、だろうか。ミルワードは、長年にわたり彼の元へと身を寄せていたが、そうそう見る事の無いその表情に、つられる様に緊張の面持ちを浮かべる。


「――この際、式神がなんたるか……それは今、我々にとって問題ではない。 ……今は、な」

『……ほう』

「純種に打ち克つ力、それを彼女が有している。 ……今、我々に必要な力を、だ」


 ヴィルドレッドはそう言い放つと、静かに古ぼけた資料を閉じる。


 再び訪れた沈黙。

 受話器の向こうで、ヒューバルトは瞳を細めたまま――彼の言葉から、その感情と意図を探るように思慮を巡らせていた。



 ――式神が()()()()()を理解しているつもり、と云う訳か……



 それでいて、こう言っているのだ。

 今は戦力として、13A.R.K.を守る要として……式神が必要だ、と。


 ヒューバルトさらに瞳を細め――思考を加速させる。


 イレギュラー……そう、我々の計画と意図に反し、()()は崩壊を免れた。

 さらに今、傷を回復させ、意識を取り戻している……となれば、周囲はあれがどういう性質(たち)のものか、理解した――してしまった筈、だ。


 それは我々の望むところでは無かった。

 本来ならば式神の深過崩壊(デイケード)を確認の後、データを回収。 必要があれば斑鳩たちも……


 だがそれは本来絶対にあり得る筈のない、"深過共鳴(レゾナンス)"を経てもなお健在するに至ったあの個体――Rによって、混乱をもたらされてしまった。


 我々は、R(あれ)に一体何が起きているのか……早急に把握する必要がある。その為に他の者の意向すら飛越し、回収を是とする――その秘匿性を保つためにも、だ。

 だが、果たして今回起きたイレギュラーは、どういった性質のものなのか。……再現性はあるのか。……はたまた、今回の相手となった純種との相性に、偶然にもそうあっただけ、なのか?


 知る必要があるのは確かだが、ここで急いて式神を回収する事が我々の求める未来へと果たして繋ると言えるのか……。


 実戦において、アガルタでの実験では観測出来なかった結果がもたらされたのは事実だ。

 そしてこの環境はアガルタでは再現出来ないのもまた、事実。式神がその身を保ち続けている理由がどこに在るか見極めれていない以上、ここでの回収は早計と言えるかもしれない。



 ――チ。 クロエめ……余計な手間を掛けさせる……



『……マーカス局長。 確かに貴方の言う通り……有事を目の前にし、それに対応する戦力を割く様な真似はするべきでは無い。 だが、こちらとしても式神の秘匿性が失われるのは本意では無い……この()()は、ご理解して頂けるだろうか?』


 暫くの沈黙の後。

 受話器から聞こえるヒューバルトの発した言葉に、ヴィルドレッドは小さく頷いた。


「当然だ。 我々第13A.R.K.に今、必要なのは危機を退ける力と、可能性……。 当然、それを提供してくれているそちらにも義理はある。 これまでと同じ様に、式神の秘匿性は守る事を約束しよう」


挿絵(By みてみん)


『これまでと()()()()、ですか』

「そうだ。 これまでと()()()()……だ」


 互いにどこまで事を理解しているのかと、計り合う様繰り返す言葉に、傍でミルワードはごくり、とその喉を鳴らす。


 局長の言い示す通り……アール、式神の存在や彼女の境遇についての感情論だけではない。

 現れた最上位の脅威である純種に対し、打ち克つ可能性を見せたアールの力は今後、先行きが見えないこの第13A.R.K.にとって今やおいそれと手放す訳にはいかない存在……。


 しかしそれは、彼女を造ったであろうアガルタと()()。ヴィルドレッドが嫌う、式兵の……いや、常識から逸脱した存在である式神という"犠牲"の上を歩く事に違いない。


 だが手立てとしては現状、アールを13A.R.K.に置いておく為には…ここでアガルタの表層に式神という存在を訴え掛ける行為は、この前線において()はないだろう。

 そもそも、アガルタがどこまで式神……そう、ラボでの会話を後で聞いたが、D.E.E.D.(ディード)という存在を把握しているのかも不明だ。今、軽率に動く事は得策ではないかもしれない。



 ――やはり、今回の件……私が動くしかない、か……。



 アールに対する感情は、ミルワードも同じだ。


 自らが年端もいかぬ少女の頃よりヤドリギとして戦場を駆けてきたのは、()()生きると誓ったからだ。だが当然、覚悟とそれに伴う誇りは必要だった。いつ消え失うとも分からない、嵐の前に自らの命というロウソクを差し出しながら……その光で、守りたいものを照らす行為の様に。


 だが、彼女(しきがみ)の存在がもし、()()()()()のならば。


 それは、タタリギにただただ蹂躙された命と同意義だ。例えそれが、明日に繋がる行為だとしても――それで得られる明日を照らすのは、光ではない。


『……いいでしょう。 こちらとしても、引き続き式神の戦闘データを得られるならば……それは本望だと言わざるを得ない。 だが、今一度留意して頂きたい』

「何だろうか」


『……再三になるが、式神とは幾重もの意味で非常にデリケートな存在……事を違えれば、互いに多大な不利益を被る事になる……互いに、だ。 そこだけは……――今一度、内に命じておいて頂きたい』

「了解した。 ……願わくばそうならない様――留意しておくとしよう」



 ――願わくば、だと……ふん、やはり食えない奴だな……



 ヒューバルトは思わず舌打ちしそうになるその口をつむぐと、あからさまにその表情に苛立ちを浮かべた。


 式神の回収――それ自体は、そう難しい事ではない。

 しかし、D.E.E.D.の存在を知らぬ表層部、加えて人権擁護を是とする穏健派の連中に、式神という存在は……今はまだ、露見されるべきものではない。それを回避する為の時間と根回しも、Rを急遽配属させた時以上に……相応に必要になるだろう。


 となれば、後手に回らざるを得ない。

 しかし、この男――ヴィルドレッドはその時間を無為に潰すような男ではないだろう。


 となればやはり、妥協点は、()()――。


『――そう言えば、コンソールの異常についてなのだが……先に伝えた通り、データの消失が起こっている。 それも、戦闘開始と同時に……な。 それについては、何か心当たりはあるだろうか、ヒューバルト大尉』



 ――ふん、そちらももう、あたりは付けている、とでも言いたげだな。



 白い天井を一度、椅子に反り返る様にして見上げ――

 そしてすぐに仮面を被るように、いつもの無表情へと戻るヒューバルト。


「それに関してはこちらの落ち度……恐らく、コンソールに登録してある3つの式種コード……狼、隼、梟。 コンソールにとっても初となる、第4番目……つまり、式神のコードが何かしらと競合した結果起きた不具合……でしょう。 急な配備故、その調整と導入を失念していた様です」

『……なるほど。 では、今後も同じ事が起きうる、と……? こちらとしても、式神の戦闘ログとして正確にそちらに提出する責務がある。 何とか解決出来ればいいのだが……?』

「問題ありません。 後ほどコンソール用に対応させた式神のコードをお伝えする……これで、データのロストは回避出来る筈だ。 ……その際には、あれに預けてあるバイタルチョーカーの予備を使用して頂きたい」

『ふむ。 こちらもチョーカーは用意出来るが、それでは()()()()()()……?』


 抜け抜けとそう答えるヴィルドレッドに、ヒューバルトは思わず口元を歪める。


「――ええ。 これは伏せておきたかったのですが……あのチョーカーは()()()だ。 式神の行動、身体推移を独自の規格で収集するものとなっている。 戦闘ログの解析に欠かせないものなのです。 心遣いはありがたいが……データ収集を()()として扱って頂けるのであれば、こちらが用意したものを使用して頂きたい」

『……了解した。 その旨はこちらで徹底させよう』


 ――式神が、どういう性質の存在なのか。


 ヴィルドレッド――いや、13A.R.K.……一部の者だろうが、少なからず把握はしている。それは間違いないが……今、この時点で打つ手は、これ以上望まない方がいいだろう……。


 ヒューバルトは重要な会話を終え、今後の支援物資や他の通達事項を話すヴィルドレッドの言葉を聞き流しながら再び思考を巡らせていた。

 兎に角、事を起こす気がないというのなら、それはそれでこちらもそれを利用するのが得策。もし本当にあのNo,8が()()だと判断が着けば……その時点で、強引にでも回収すれば良いだけの事……。


 回収を終えた事後に関しては……そう、いかようにも、なるのだから。



 ――どういう手法になるかは、その時々次第、だがな。



 ならば、続き踊って頂こう、ヴィルドレッド・マーカス。

 ヒューバルトは通話を終え、耳に装着していたインカムを外すと、静かに手元に置きながら――憎悪とも、歓喜とも呼べぬ表情を浮かべていた。


 続く危機に、抗え。我々は外から、D.E.E.D.(ディード)……R(あれ)が示す真価を見届けさせて貰うだけ……

 ただのイレギュラーなのか、クロエが言う通りあれこそが我々が求めるD.E.E.D.(功業)に足るのか。



 ――今一度、確かめさせて貰うとしよう。



 せいぜい上手く踊ったつもりでいるがいい。

 所詮、お前たちも含め、然るべき功業に向けての通り道に過ぎないのだから。


 細めた瞳で、改めて画面に表示されるヴィルドレッドのパーソナルデータ……

 それに添付された彼の写真を、射抜く様な視線で。


 

 

 静かに――ヒューバルトはいつまでも見据えていた――。






 ……――第8話 D.E.E.D.(4) へと続く。

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