第6話 アダプター1へ向けて (2)
一人、いち早く目が覚めた詩絵莉。
昨晩決めた割り振りの役割である、整備班へと出向く為に同行する斑鳩のコンテナへと向かう―。
「……じゃあ、斑鳩。8時半に格納庫でな」
扉が開くと、斑鳩のコンテナからギルが大きなあくびをしながら現れる。
その様子を少し離れた場所を歩く詩絵莉は目にすると、思わず近場に積み上げれた廃材へと素早く身隠した。
ギルはそんな彼女に気付くことなく、手に持つ上着を肩にかけると眠そうに伸びをしながら去っていく。
おそらく、コーデリアとアールが滞在する自宅へと向かったのだろう。
昨晩話した、予定通りの時間……出会った頃からそうだけど、ガサツそうに見えて意外と時間とか守るタイプよね……やっぱりコーデリアの教育がいいのかしら。詩絵莉は心内感心しながら、曲がり角に消えゆく彼の背中を変わらず廃材の影から見送ると、はたと気付く。
……――あたし、なに隠れてるんだろ……。
彼女は影からゆっくり歩み出ると複雑な表情で大きくため息を付く。
なにやらもやもやする気持ちを、服の裾をぱたぱたと払う事でごまかすと改めて詩絵莉は斑鳩のコンテナへと歩み出した。
積み木が密集する場所より少し外れ。
廃材や、廃棄され今は住まれなくなったコンテナのが散見される様になる積み木街の端に、斑鳩の住処はあった。
普段の彼――斑鳩の生活を知る者は少ない……というか、単純に生活感が無いのだ、彼には。
いや、生活感というよりは……"生活"そのものに、無頓着なのかもしれない。
最低限の家具に、最低限の明かり。別に不便を楽しんでいる、というわけでもない。かといって、身の回りはいつも不思議な程綺麗に整っている。ゴミもきちっと処分してる様だし、身だしなみも少数構成とはいえ部隊長を預かる身分を理解しいる様で、清潔感を感じる程に整っている。
斑鳩と出会って一年と半。
隊長としての彼は、提案する作戦や指示は表面だけを掬うと冷たく感じる時もある、が……冷徹な訳ではない。
おそらく何よりも合理的に物事を判断し、行動に至るのだろう。その合理性の基準も、結果だけを重んじるタイプではない。ああ見えて、義理や情に厚い部分がある事も、詩絵莉は知っている。
「ま、私生活にももうちょっと興味を持って欲しいところだけどね」
肩をすくめながら、彼女は斑鳩のコンテナハウスの玄関正面に立つ。
こほん、と軽く咳払いをした後、彼女はこぶしを軽く握るとコンコン、と軽やかに二回ノックを重ねる。
「暁。あたしだけどー」
……。
――反応がない。
先ほどギルが出ていってから数分も経っていないはずだが、扉の向こうから反応がないことに彼女は少し首を傾げる。
二度寝でもしてるのだろうか?詩絵莉は少し悩んだが、この後の予定の事もある。もしそうなら起こす必要があるか……。
意を決すると、ドアノブに手を掛けた。
「……しつれー、しまーす……」
斑鳩の箱へ一人で来ることは今まで数えるほどしか経験が無く、やや緊張と遠慮を伴いながら、詩絵莉は音をなるべく立てない様に扉を開け、身を滑り込ませると後ろ手で扉を閉める。
薄暗い部屋。窓を覆うカーテンの隙間からわずかに差し込む光。
常人であるならば、明るい外から入った直後この暗さ。目が慣れるまで真っ暗に映るところだが、彼女は式隼。優れた視力を持つ詩絵莉の瞳は、意志一つで光量を調節すると部屋の景色を、差し込む僅かな光を元に鮮明に映し出す。
――しっかし相変わらず、何もない部屋ねえ……ん?
昨晩ギルを泊めた痕跡だろうか。
目に着いたのは普段彼が寝床にしていると聞くソファー。毛布が半分床に着くように投げ出されている。
向かいには、改めて二人で飲みなおしたのか……二つのマグカップと食べかけの万能ナッツの皿が散らかるテーブル。
彼の部屋には似つかわしくない光景が広がる。
――ギルも泊めて貰ったんなら片付けくらいしてから出て行きなさいよね、ったく……。
詩絵莉はため息を付くとさらにその向こうに視線を送る。
奥にはクローゼットと、少しの本と雑貨が並ぶ小さな棚。
それらの向かい、部屋の角に押し付けれられるように設置されたベッドの上に、斑鳩は居た。
「……昨日はギルがソファーで寝たのね」
詩絵莉はつぶやくと、入口からそうっと足をベッドへと運ぶ。
「……アー、キー、ラー」
仰向けで静かに寝息で胸を上下させ眠る斑鳩に、小声で名を呼ぶ。
だが、その声にもまったく反応がない。そんな普段と全く違う無防備な彼を見て、詩絵莉はなぜか鼓動が早くなるのを感じる。
第13A.R.K.のヤドリギの中でも、"堅物"などと揶揄される斑鳩のこんな無防備な姿を間近で見た隊員は居ないだろう。
詩絵莉は僅かな優越感を感じながら、食い入る様に彼の寝顔を見入っていた。
「……は」
ものの数秒。彼女は、はたと自分の姿を客観的に見ると我に返る。
ふう、と自分を律するように息を吐くと、詩絵莉は勢いよく立ち上がり窓へと向かうとカーテンを開けた。
「暁!いつまで寝てんのよ、整備部行くんでしょ、遅れちゃうわよ!」
先ほどとは打って変わり、大きな声でそう言うとついでにとテーブルの上に散らかる飲みかけのマグカップをふたつ手に取ると、入口近くに設置された簡易な流し台へと向かい洗い始める。
「……う」
その音に斑鳩は漸く身を起こし、ぼんやりとした表情でベッドふちに腰かけると、詩絵莉に視線を送った。
「……詩絵莉か……すまない」
「おはよ。……何?珍しいわね、あんたが寝坊なんて」
視線をくれる事なく、詩絵莉は手慣れた様子でマグカップや皿を洗いながら問い返した。
斑鳩は、大きくあくびをしながら背中を伸ばす。
「……こっちに戻ってきてから……ギルがどうしてもって言うんで飲みなおしてたんだが……その後、新たにアールを加えた連携について話が尽きなくてな…」
目元を片手で押さえながら、ふぅー、と長く息を吐く斑鳩に、詩絵莉は「なるほど」とテーブルに目をやる。そこには何やら広げられた用紙に線や丸、黒点が幾重にも描かれていた。
「……あいつ、連携取るの本当に真面目に考えてんのね。昔はかなり勝手に戦ってたって聞いたけど……」
「ああ……あの頃のあいつを見たら、詩絵莉の説教は……今の倍は硬いだろうな」
斑鳩は眠そうにゆっくりと瞬きしながら、冗談っぽく笑いながら言うと、また大きなあくび。
「あ、あたしは別に説教したくてしてるわけじゃ……って、それはまあ、置いといて!……さて暁、いつまでそうしてるの……早く準備して、ほら」
彼女は洗いものを済ませ流し台横に几帳面に掛けられたタオルで手を拭き終えると、未だまどろんでいる斑鳩の前に立ち、両手で彼の手を引き立たせる。
「あ、ああ……だからベッドはな……良くないんだ……ソファーだと……」
「はいはい、わかったわかった……ほら、起きて着替えて」
斑鳩は手を引かれるまま立ち上がると、ぼんやりした頭でクローゼットに向かい、徐に寝巻きをベッドへと脱ぎ捨てる。
「ちょおっ……!」
顕になる斑鳩の引き締まった肢体に、詩絵莉は思わず後ろを振り返る。
「ったく……あ、あたし外居るから!早く着替えて、出てきなさいよね!」
そう言い捨てると、どかどかと踵で強く床を踏みしめながら彼女は扉の外へと出て行った。
その様子を気に留める事も無く、斑鳩は気怠そうに着替えを続けるのだった。
詩絵莉は扉の外、やや冷たく感じる外気を胸いっぱいに吸い込むと、大きく吐き出す。
いつもの隙が無い彼と違い、寝起きの少し抜けた彼の表情に仕草。本当に同じ人物なのかと思う程にギャップがある。
……そういう姿を見せてくれるということは、仲間として信頼してくれている証なのだろう。
――仲間、かぁ。
気持ちを落ち着かせると、ぼんやり外を見上げる詩絵莉。
確かに昨晩のささやかな宴や、こうした彼の意外な一面を垣間見る機会は増えた。だが、普段時折見せる思い詰めた様な――いや、どこか達観したかの様な、遠くを見るような瞳。
その表情の裏にある彼の心内ちを、思えば知らない。
斑鳩はあまり自分の事を語らない。
彼の過去については、触る程度に聞いた事はある。もちろん、彼の事だ。場を設けて「聞かせて」と頼めば、何の事はない、と淡々と教えてくれるかもしれない。……だが、どうしてもどこかで遠慮してしまう。自ら語らないということは、語る必要がない……という事なのかもしれない、と詩絵莉は踏み込む勇気が持てないでいた。
彼が何を思いヤドリギになり、そして何の為に戦っているのか。
人類の為?もちろんそれもあるのだろう。だが、彼から時折感じるそれだけではない……"何か"。
……――ギルには色々話してるのかな……狼同士……ね。なんだか、ちょっと悔しいな。
詩絵莉は扉の横、冷たいコンテナの壁に背中を預けると、少しもやもやした気持ちがその冷たさに紛れる。
隼の眼を以てしても、見えないものがあるなんてな!……なんちゃって。詩絵莉は一人で自らを茶化し、自虐的に笑う。
「待たせたな、詩絵莉」
乾いた音を立て、ふいにドアが開かれる。
現れたのはヤドリギの制服に身を包み、その上にはA.R.K.内で活動する際に着用するジャケットコートを羽織った斑鳩だ。
先ほどまで寝ぼけていた面影は消え普段と変わらない雰囲気。そんな彼を見て、詩絵莉は苦笑いと共に大きくため息を付いた。
「……ま、うちの中くらい気ぃ抜いちゃうのはわかるんだけど……レディーの前でいきなり裸にならないで欲しいモンだわ」
「ん?あ、ああ……どうもベッドで寝ると駄目なんだ、俺……ソファーだと起きてすぐに意識もはっきりするんだけどな……」
うーん、と腕を組んで悩む斑鳩。
普段は聡明で思慮深く見え、隊長として凛と務める彼だが、あるいはこの斑鳩こそが本来の彼なのかもしれない。
詩絵莉は先ほどまで巡らせていた思いを振り払うと、苦笑した。そんな詩絵莉の表情を見て「ん?」と斑鳩は疑問を浮かべるが、「……んーん、なんでもないって」と手をぱたぱたと振る彼女。
「さてと……まずは整備班に顔を出すんだったな」
「そうね。アダプター1への出向に向けて、兵装や備品の点検に確認……と。他に必要なものは昨晩リストアップして、買ってくる様にギルに渡してあるから」
「了解だ。じゃあ俺達も向かおう」
斑鳩は彼女の言葉に頷くと歩き出す。詩絵莉も斑鳩と肩を並べる様に歩を進める。
「……ギルとアール、上手くやってるかな?」
「大丈夫だろ。ギルはああ見えても、面倒見いいしな……コーデリアも一緒に行くなら猶更だ」
「ま、それもそうね。リアが居るなら安心だわ。……あ、そう言えば暁、こないだちょっと話したアレなんだけど……」
二人はとりとめもない会話を交わしながら、人々が行き交い始める積み木の朝の喧騒の中……
整備班がある格納庫へと向かうのだった。
・
・・
・・・
「……は!?セ……セヴリンが不在、ですって!?」
格納庫内の一室。兵装等の管理を行う兵站管理部。
そのフェンス越しの窓口で、詩絵莉は素っ頓狂な声を上げる。
その声に慌ただしく駆けまわる整備班で働くスタッフ達が一瞬、驚いた様に足を止め、視線を向けた。
詩絵莉は「……こほん」と思わず大声を上げてしまった照れ隠しに、咳払いを一つ。
今度はなるべく声を荒げず、窓口に座る度の強そうな眼鏡を掛けた男性へと改めて話掛ける。
「せ……説明して欲しいんだけど。うちの担当してたはずのセヴリンが不在って……どういう事?」
セヴリン。前回の乙型討伐作戦においても彼らの兵装……撃牙等の整備を担当していた男である。
斑鳩たちY028部隊が、ここ半年程の任務で使用する兵装は全て彼が目を通してきた。彼ら斑鳩たちにとっても馴染みの存在だ。
「も……申し訳ありません、泉妻さん。現在、例の壊滅しタタリギの巣となってしまった第14A.R.K.……そちらに現在、他の部隊が波状的かつ断続的に部隊が奪還作戦に当たっているのですが……とにかく、うちの整備の人間も慢性的な人手不足でして……彼……セヴリンは臨時的にそちらの対応に配属されているのです……」
第14A.R.K.。
一か月半程前にタタリギの侵入を許し没した箱舟……確かにそこは現在、地獄の様な様相を呈している。
何しろA.R.K.……箱舟が一つ、まるまる陥落したのだ。そこで発生した丁、丙型……"元人間"のタタリギたちは相当数に上る。
壊滅したA.R.K.を放置するのは得策ではない。タタリギの脅威もそうだが、残された貴重な兵装や物資の回収も急務だろう。
詩絵莉は当然、ヤドリギとしてその事は認知している。我々Y028部隊よりも他の部隊は人数的な規模も倍以上。
当然、整備が必要な兵装も多くなる。それが断続的に作戦が展開されている現状、この慌ただしく皆が駆けまわる整備班の風景にも頷ける。
「そ……それは……そうかもしれないけど……でもY028部隊だって重要な任務充てられてるの、知ってるでしょ?……この際、専属とは言わないケド……どちらにせよ誰か担当してくれないと、出撃準備も出来ないじゃない、ねえ暁!」
そう窓口に詰め寄ると彼女は、Y028部隊の兵装が綴られた書類を片手に眉間にシワを寄せ、厳しい表情を浮かべる斑鳩に振り返った。
「……整備の真似事が出来ないわけじゃない。ローレッタも器用だしな……だが、やはり正規の整備士に調整して貰わなければ心もとないのは確かだ。……なんとかならないか?」
ぎろり、と斑鳩は睨んだつもりはこそ無かったが、思わず厳しい視線を窓口へと向ける。
その彼の迫力に当てられ、フェンス越しに一瞬身を引く男性。
「ええ、ええ、その通りです。今やY028部隊と言えば、少数構成とは言え局長も一目置く部隊……そこは我々も……なので、一人手が空いてる整備士が居るのは居る、のですが……しかし、その……」
「なによ、居るんじゃない!」
詩絵莉は再び窓口に詰め寄った。そんな彼女にたじろぎながらも、彼は言葉を続ける。
「……それがその……言いにくいのですが。ちょっと……変わり者、というか。半月程前に第5A.R.K.から依願赴任してきたのですが……なんというか……」
「変わり者……?いや、しかし手が空いてる人員が居るなら是非紹介して欲しいが……それとも何か、素直に紹介出来ない問題でもあるのか?」
斑鳩の問いに、彼は眼鏡を掛け直すと改めて口を開く。
「……問題というか、物凄く優秀な整備士……エンジニアとして聞いていたのですが……その。ここだけの話なんですがね……余った備品から、わけがわからないモノを日々創る事に没頭していたり、既存の兵装に勝手に手を加えたり、時には分解したり……と、とにかく担当した部隊から苦情が出る始末でして……」
窓口の男性はあきれ果てた、といった仕草で語る。
「ぶ、部隊から苦情って……一体どんな仕事してるのかしら、その人……」
「経歴は本当に凄いんですけどね……どうしてまた、安全な番号の浅いA.R.K.からうちみたいな最前線に依願赴任してきたのか……だのにちゃんと仕事もしてくれないし……他の整備士も困り果ててまして。そもそも普段の武器の調整でも……」
次第にぶつぶつと愚痴へと変わっていく話を聞きながら、斑鳩は腕組みした片方の手を口元にやる。
若い番号のA.R.K.―。
基本的にA.R.K.の番号付けは、アガルタより離れれば離れる程、前線に近付けば近づく程大きな数字となる。窓口の彼が言う通りなら、比較的アガルタに近く安全な場所から危険が伴うここ、第13A.R.K.に自ら赴任してきたということだ。
前線で戦う斑鳩たちと違い、整備士は兵装だけでなく様々な分野……例えば生活等の面でも活躍が見込める、求められる人材だ。優秀なればこそ、いわゆる内地で務めたとしても待遇は悪くないはず――。
それが何故この最前線に?……そして周囲から優秀だという認識も持たれる人物が何故、そんな態度を取っているのか。
――決まっている……何か理由があるんだ。優秀だからこそ至る、理由が。
斑鳩は深く頷くと、手を組み解きながら口を開いた。
「……面白そうだ。その整備士、俺たちに紹介してくれないか」
『え!?』
詩絵莉と窓口の男性は声を重ねながら斑鳩を振り返った。
「えぇ、正気なの暁……今の話、聞いてた?とても真面目に整備してくれるとは思えないよ、あたしは」
「そうかもしれないが、そうじゃないかもしれない……ただの直感だが、会ってみる価値がありそうな気がするんだ。それにセヴリンの手が空かないとい言うのなら、どっちにしても当たってみる他はないだろう?」
「……あたしは気が乗らないケドなぁ」
窓口越しに、その整備士が一日の大半を籠って過ごしているらしい半ば備品の倉庫部屋の場所を聞く斑鳩に頬を膨らませ、髪の毛をくるくるといじりながら詩絵莉は怪訝な表情を浮かべる、が。
見つめる彼の横顔に、はっと表情を変えて気付く。
……あれ、でもそっか……ひょっとしたら……今のあたしたちも、こうやって……繋いでくれたのかな。
今はこうして斑鳩……Y028部隊の元で自らの信念と意志に殉じて戦える居場所に身を置いているが……。
それ以前の自分を、ふと詩絵莉は思い出していた。
確かに自分にも落ち度はあったろうが、一度は認められず遠ざけられ……腐りもした。
だが、そんな中彼は――斑鳩は、自分に前よりもずっと大事に思える居場所と仲間をくれた。
斑鳩は斑鳩なりに今の会話の中で"何か"をその整備士に感じたのかもしれない。
ギルも、ローレッタも、そして自分も……その"何か"を、彼に見出されこうしてここに居るならば。
ひょっとしたら、この出会いも……意味があるもの、なのかもしれない。
「……よし、居場所は聞いたぞ。……どうする、詩絵莉。気が乗らないなら、とりあえず俺一人だけでも様子を伺いに行ってみようと思うんだが……」
「んーん、気が変わった!……あたしも行くわ、暁」
詩絵莉は頷くと斑鳩の横に並び立つ。
斑鳩はそんな彼女の表情を見る。先程見せた怪訝そうな表情は消え、凛々しくも好奇心満々といった――詩絵莉"らしい"表情を浮かべていた。
「ああ、行こう詩絵莉。……彼の名前は"フリッツ・クラネルト"。場所は兵站部の最奥、11番倉庫だ」
「了解!フリッツね……。ま、聞いた通りの人物だったとしても……ふふん、お尻引っ叩いでもうちの兵装見て貰うまで、だわ」
「……詩絵莉なら本当にやりかねないな。期待しよう」
歩き出しながら笑う斑鳩に、彼女は掛け寄りつつ、「なによお」とむくれながら斑鳩の脇腹をヒジでつつく。
こうして二人はまだ見ぬフリッツに期待を寄せ。
11番倉庫へと足を向けるのだった。
……―――第6話 アダプター1へ向けて (3)へと続く。




