第11話 別つ道の先へ (8) Part-1
暗闇の荒野。
アダプター1へ向かう、支援物資と戦力増強の為の式兵を乗せた装甲車の列。
その最後尾――古めかしい装甲車がその車列に紛れるよう、砂煙を巻き上げながら追随していた。
"彼ら"はアガルタの手から逃れる為、そして局長が示した座標へ向け、今、A.R.K.から離れる。
その先に待つ、タタリギが跋扈する未開の地を往く為に。
かの地に住まうという有識者と会う為に。
Y028部隊――いや、"元"Y028部隊の五人……いや、六人は進む。その先に、何が待ち構えているとしても。
「――目標地点まで、あと丁度1000m……シェリーちゃん、後方の様子はどう?」
がたん、がたん、と悪路に上下する古めかしい装甲車の中。
ローレッタは至って簡素な――いや、正確に言えば今まで扱っていた式梟用のコンソールが搭載されていない無骨な運転席で揺られながら、傍ら、年代を感じさせるケーブルに繋がれた通信機を手に取った。
『……今のところ追手は無いわね。 13A.R.K.の明かりもそろそろ見えなくなる……問題ないわ』
ザ、ザ、と雑音を交えながら聞こえる聞きなれた詩絵莉の声に、ローレッタはサイドミラー越しに後方の暗闇を確認する。彼女の言葉通り、13A.R.K.の明かりは既に遠く、その小さな明かりもまた道路の勾配に隠れつつあった。
「了解だよ。 あ……貨物車両の具合はどう? 色々詰め込むだけ詰め込んで、整理する間もなく出立しちゃったけど……」
『――そうね』
通信機越しに小さなため息を付くと、彼女はそれでもどこか楽し気に声を弾ませる。
『なんだか、アダプター1へ中継機の設置に行った任務を思い出すわよ。 揺れるし狭い、オマケに荷物に押しつぶされそう。 ……でもまぁ、むしろ懐かしくて逆にいい具合ね』
「あぁ~、あった、あったね。 機材詰め込んで……シェリーちゃん、道中ずっと不機嫌だった!」
文句を言いながらもどこか吹っ切れたような詩絵莉の言葉に、ローレッタは思わず何度も頷く。
アダプター1……いや、今でこそその名で呼ばれる、13A.R.K.から最寄りとなる中継基地。
基地として整備される前――その足掛かりとして、タタリギが闊歩する廃墟だったあの場所へY028部隊として赴いたのは、通信中継機器を設置する任務の為だった。
(そっか、あの時はまだ……私たちの部隊は4人だったなぁ)
ふと、ローレッタは懐かしそうに瞳を細める。
(なんだか、随分遠い場所に来ちゃった気がする……でも、私たちは誰も欠けてない。 だから、これからもきっと……)
『あら、不機嫌にもなるわよ。 だってあの機材ったらやたら古くて大きくて――そうだ。 あの時フリッツが居たら、何とかしてくれたのかしら?』
「! ぼ、僕かい?」
唐突に詩絵莉に呼びかけられた助手席のフリッツは、これまた年代を感じさせる大きなヘッドセットの片耳を外し、うーんと唸って見せる。
「どうだろう、アダプター1で見たあの給水塔の中継機だよね。 確かに年代物だった……でも、A.R.K.からの距離を考えると機能を持たせたまま小型化出来るかと言われると……」
真摯に悩むその声に、詩絵莉は通信機越しにくすり、と笑みを漏らす。
『ま、もし次があるならあんたの手腕に期待しとくわ、フリッツ。 ……ってワケで、ロール。 今のところ後方見張るだけだし、特に不都合はないわ。 ありがとね』
「ううん、こっちこそ。 何か異常があったらすぐに知らせてね。 それでえっと……フリフリ。 無線の様子はどう?」
詩絵莉との通信を終えると、ローレッタは前方――複数台見える装甲車の車列から目を離さないよう注意しながら、フリッツへと問いかける。
彼女の言葉に彼は今一度、ヘッドセットを左手で耳に押し付けながら小さく頷く。
「――受信感度は良好、傍受内容も13A.R.K.と僕たち"出向部隊"の通信に変わった様子はないよ。 本部の無線網も……問題ない。 今のところ、"Y028部隊の脱走の件"を含め、騒ぎになっている様子はないみたいだ」
「……わかった。 もう少しで通信エリアから離脱すると思うけど……それまで、お願いするね」
「うん、任せてくれ。 拾える会話内容は出来る限り記録しておくよ」
Y028部隊の脱走劇――。
それは前代未聞であろう、深過した式兵の脱走だ。ローレッタが知る限り――いや、A.R.K.の記録上にも、こんな荒唐無稽な出来事はそうはないだろう。
"深過を遂げた式兵の脱走"。これは話に出てきていた"野良(責務を放棄し、A.R.K.から脱走した式兵)"とも全く違う。
そもそも、深過を遂げた式兵に"脱走する事"など不可能だ。
戦場でそうなった者は戦場で。
A.R.K.へ帰還後、そうなってしまった者は医療棟で……式兵としての最期を迎える他、無い。……本来深過した者に、その先など存在しないのだから。
ローレッタは助手席のフリッツに悟られないよう、ほぅ、と深いため息をつく。
(あのままA.R.K.に残っていたら、タイチョーとアルちゃんはアガルタに拘束されていた。 その先なんて――想像もしたくない。 それに、私たちの身体に起きている変化……普通の深過とは違う、何か)
意識をすると瞼の裏側を通し流れ込む、式兵の気配。
自分たちの目の前――先行する装甲車に搭乗する、"彼ら"の気配すら今、明確に感じ取る事が出来る。
(……まるでこれは、タタリギを察知するアルちゃんの――式神の能力。 私たちにも、式神のような能力が……その片鱗が現れている……)
ふと脳裏に浮かぶ、ヒューバルト大尉の姿。
彼らがD.E.E.D.……式神を創造した者たちだとするなら、今の自分たち……そして、斑鳩の存在はどれほど興味深いものだろうか。いや、きっと事態はそれに留まらない領域へと既に到達しているのだろう。
リッケルト、シール……そして式兵ですらなかったセヴリン。
彼らの存在を、その命ごと蹂躙し尽くし突如顕現したあの異形のタタリギ。斑鳩とアールが証言したように、あれをこのA.R.K.へもたらした者がヒューバルト大尉らだとするのなら。
(私たちの変化はもしかすると、この先……人類にとって新しい武器となるのかもしれない。 タタリギにより、強く抵抗出来る武器に……。 けど……それでも。 だったとしても! ……あの人たちに協力なんて出来ない。 出来るはずがない)
「……レッタ、ローレッタ?」
「う、うん!?」
フリッツの呼ぶ声にローレッタはふと我に返ると、同時に裏返った声での返事を誤魔化すよう数度、咳込んでみせる。彼はその様子に、心底心配するようその顔を覗き込んだ。
「随分疲れてるように見えるけど……君のほうこそ大丈夫かい? あの戦いから数時間しか経ってないんだ、ろくに休息も取れてないんじゃ……」
「あ……ううん! へーきへーき! ちょっと考え事してただけだから。 それにほら私、少し眠らせて貰ったし……体調はむしろいいくらいだよ」
言いながら小さくガッツポーズを取って見せる彼女にフリッツは苦笑してみせたが、すぐにその表情を曇らせる。
数時間前の戦いで、ローレッタは4機の木兔を駆使し戦った。いかに彼女と言えど、本来ならば相応の休息が必要なはず……むしろ、数時間睡眠を取った程度で回復するはずがないのだ。
(……ローレッタが話してくれた、"深過"の影響。 式兵としての能力が強化されているのか……でも、本当に大丈夫なんだろうか。 それだけ、皆は式兵――いや、ヒトから離れた存在に成っているとしたら……)
A.M.R.T.による式兵化のした者たちの能力は、個人差はあれど、必ず理論的な上限が存在する。しかし、ローレッタたちの様に"式兵としての能力"を大きく超える力を発揮すると言う事は――それはつまりより強く、濃く、タタリギを体内に宿していると言う事になる。
言うならば限界を超えた"式兵"。
その事実が今後、皆にどういった影響をもたらすのか……。
「……ん?」
「! ……いや、何でもないよ。 大丈夫なら……いいんだ」
不安そうな眼差しを寄越したまま固まるフリッツに、ローレッタはその意図を知ってか知らずか首を傾げてみせる。
彼は不安を拭うように数度小さく首を振ると、助手席に設けられた通信機の周波数を調整しながら、前方を行く、マルセルが搭乗している装甲車のテールランプを視界に入れた。
「アダプター1へ戻る支援部隊……マルセル隊長たちの車列に紛れて、A.R.K.を脱出する……今のところ上手く行ってるけど、この先別れて荒野を進むんだ。 しかも暫くは無灯火――やっぱり、夜目の効く詩絵莉を助手席に乗せたほうが……?」
「ううん、今は13A.R.K.からの……万が一の"追手"を警戒しときたいし。 シェリーちゃんは後方を見張ってて貰ったほうがいいよ。 その為にフリフリが暗視装置付きの木兔を車体に用意してくれたじゃない」
前方の車列を見据えたままフリッツの言葉に首を横に振ると、ローレッタは頭上――装甲車の天板を指さす。彼はその指先を不安そうに見上げたまま不安そうに、うむむ、と首を捻ってみせた。
「この装甲車にはドローンとリンク出来るコンソールは搭載されていないけれど……これがあれば――でしょ?」
言葉と同時に彼女が視線を落とした先にあったのは、運転席と助手席のスペースに閉じられたまま置かれた銀色の大きく分厚いトランク。
古めかしい車内に似付かわないそれは、レジードが戦車部隊と連携を取るためにA.R.K.へ持ち込んだ、あのトランク型コンソールだった。
「出立直前に五葉さんから預けられた、このトランク型コンソール……」
フリッツはごくり、と唾を飲み込むと、ヘッドセットから通信の内容に耳を傾けながらも懐からコンソールを起動するためのカードキーを取り出し、それをまじまじと見詰める。
「確かにこれがあれば、ドローン……木兔の稼働と制御が可能……で、でも、持ち出せた一機と連携を組むのが精一杯だった。 映像の転送レートも未調整のままだ。 レジード大尉が予め、木兔の運用を見越して調整してくれてはいるけれど……テストすら満足に出来ていない。 あまりアテにされると……」
「だーいじょぶだって! 確かに時間は無かったけれど――それでも、一機だけでも木兔を持ち出せたのはフリフリのおかげだし。 私、感謝してるよ。 フリフリこそ寝ずに木兎、修理してくれてたんでしょ?」
先の戦いで大破した、3機の木兔。
その中で唯一、稼働できる状態だった木兔1号機……フリッツはA.R.K.からの聴取が終わると同時に、すぐさま皆の兵装の手入れと修繕を行っていたが、それは満足の行く仕事とはとても言えないものだった。
何しろ建前上とは言え、Y028部隊は深過の恐れありと拘束されていたのだ。
私物はもちろん、兵装の予備が積まれたままの作戦中搭乗していた装甲車は、戦闘ログ解析の為、他の整備士や職員たちの調査が行われ、手出しが出来ない状態となっていた。そんな中五葉が、解析にと平坦部へ回されていたローレッタの木兔を一機、別の木兔とすり替え持ち出せた事はまさに幸運であった。
「……君らが拘束されている時、僕に出来る事は装備の修理だけだったからね。 局長の計らいで聴取はごく短い時間で済ませて貰えたけれど……それでも、時間が足りなかったのは事実だ。 マルセル隊長と五葉さんが手回ししてくれていたお陰で、ある程度の兵装――撃牙や詩絵莉の銃、それに弾薬は持ち出せたけど、それでも最低限ってところだ。 他の大破した木兔は回収する事すら出来なかった。 ……すまない、ローレッタ」
ふう、と後悔めいたため息を吐くフリッツに、ローレッタは「とんでもない!」とばかりに大きく首を振る。
「だいじょぶだよ、フリフリ。 木兔一機あれば偵察だって、支援だって、何だって出来るよ! 私、本当に感謝してるから」
ローレッタの言葉に「ありがとう」と小さく呟くと、フリッツは口元に手を添え眉間にしわを寄せる。
「――持ち出せた1号……あれは多くの式梟が使用する索敵支援型モデルじゃない、戦闘支援モデルだ。 扱いが難しいぶん、支援型より巡行速度も高度無音ホバリング性能も優れてる。 幸いいくつか私物のパーツは持ち出せたし、落ち着けたらいろんな用途に使えるよう、改めて手を加えてみせるよ」
「うん。 フリフリ特性カスタムの木兔ちゃん、楽しみにしてる!」
横顔、彼女が浮かべる笑顔に少しだけ口元を緩めながら、フリッツは手に持ったままのコンソール起動キーをまじまじと見詰める。
「でも、この旧型装甲車で木兔が運用出来るのも……この携帯型コンソールがあればこそ。 まさかこいつを僕たちに託してくれるなんて……レジード大尉……」
「そう、だね……」
ローレッタは一瞬、傍らのトランクケースに視線を落とす。
「ごよちゃんとフリフリがそのトランクを持って来たとき、私本当にびっくりしたもの。 戦車隊を繋ぐ独立型コンソール、しかも外部電源不要の充電型。 これ一つで、通常の車両搭載型コンソール何台用意出来るんだろう……」
「アガルタは、旧世代――一般的には遠く失われた様々な技術を保有している事は周知だけれど、これは本当に……度肝を抜かれるよ。 一体このサイズに、どうやって電源やコンソールとしての機能が収められているのか想像も付かない」
言うと、フリッツは胸元へ起動キーをしまうと、一枚の付箋を取り出した。
暗い車内だったが、ローレッタはそれが何かすぐに分かったように、神妙な面持ちを浮かべる。
「それ、レジード大尉からの伝言……だよね」
――"失態が今更一つ二つ増えたところで、本部が下す私の処遇は変わらないだろう。 ならば私は、私が信ずるアガルタの徒としてこれを君たちに預けたい。 願わくば、再び君らと見える日を切に願う"
暗い車内、付箋に書かれた丁寧な文字を、僅かな明かりを頼りに呟くように読み上げるフリッツ。
「あの人に感謝の言葉を直接伝えれなかったのが心残りだ。 同時に心配だよ、こんなモノ……こんなメモ書き一つで右から左に動かせるものでもないだろうに」
「…………」
五葉がレジード大尉からY028部隊へと託されたコンソールに添えられた、一枚の付箋。
直接本人と会う事は出来なかったが、彼の想いが綴られたその一枚を、フリッツは丁寧に折りたたむと再び懐へとしまい込む。
「装甲車搭載型のコンソールには、アガルタが位置を追う為のビーコンが内臓されている……それは、間違いない。 ローレッタ……君が以前局長と見た、装甲車内部のブラックボックスが――きっと、そうなんだろうね。 "ビーコンを追う方法"についてはいくつか仮説は立てれるけれど……それでも今、想定出来る可能性を全て回避しつつ、従来のコンソールを運用する方法も時間も……ない」
「うん。 だから司令代行は……ううん、局長は、コンソールが搭載されていないこの旧型装甲車を用意してくれたんだ。 でも、正直……私、凄く不安だった」
「――わかるよ、コンソールは式梟の手足と言ってもいいものだ。 それは当然、局長たちも分かっていたはず……だから、これを用立てくれたんだ、レジード大尉が……きっと」
13A.R.K.からの脱出にと用意された装甲車――。
それは既に通常作戦では利用される事のない、旧型装甲車……それも、数世代前のシロモノだった。当然、アガルタ製のコンソールは搭載されていないため簡単にはその足跡を追跡する事は出来ない――そう踏んで、局長たちが用立てたものだった。
かつ、13A.R.K.とアダプター1を結ぶ物資運搬車両として使用されていたため、相応の物資量を積載できる牽引型の貨物車両が繋がれていた事に加え、車両自体は古めかしいものの悪路を想定した真新しいタフなタイヤが装備されている事は幸いではあったが――それでも、機能面で充実しているとは言い切れない。
単純な攻撃はもとより、タタリギの浸蝕など対する抵抗強度は間違いなく劣る。
当然今まで搭乗していたN33式兵装甲車と比べ、本来作戦任務に有用な機能や道具類も用意されていないものも多い。
だがそれでも、とローレッタはトランク型コンソールへ左手を静かに置くとゆっくり頷いた。
「この装甲車と、このトランクがあれば私……まだみんなの役に、きっと立てる。 レジード大尉だけじゃない、マルセル隊長やごよちゃんも……絶対、いつか――いつかちゃんとお礼、言おうね」
言いながらも軽く唇を噛むローレッタの横顔を横目に映しながら、フリッツは小さく頷きながら覚悟に瞳を細める。既に13A.R.K.を出奔した現在、前方を行くマルセルと五葉たちへ感謝を伝える事――いや、会話をする事すら、今は叶わない。
あくまで、Y028部隊は彼らの車列に紛れ、A.R.K.を脱出した――そういうシナリオの元、既に行動は開始されている。
そもそもマルセルと五葉の二人は、表向きにはA.R.K.に帰還していないのだ。
あの二人にY028部隊への助力を要請したヴィッダが秘密裏の帰路として用意したのは、A.R.K.を襲撃したタタリギの残党を警戒する名目で、アダプター1への兵力の補強と物資輸送を行う中規模輸送部隊の手配だった。その車列の戦闘としんがりを務めるのは、Y036部隊――マルセルを隊長と頂く、後方支援部隊だ。
彼らが運ぶ物資に紛れ、二人はアダプター1へと帰還する手筈になっている。
そして道中、その車列隊から離脱し――元・Y028部隊は局長が用意した"有識者"が居るとされる座標へと向かう。
(……今回の僕らの脱走について、あの二人は13A.R.K.に存在していなかった事になっている。 とは言え聞けば五葉さんはみんなの脱出をかなり手荒く手伝ったとか……それが明るみに出なければいいけれど)
曰く、"ばれないように、やってやったッス!"と五葉は胸を張ってはいたが――それでも、不安は残る。
(いや……もう事は動き出しているんだ。 何としてもこの状況、僕も出来る限りみんなの支えにならければ。 弱気になるな、不安がるな! 僕には僕にしか出来ない事があるはず……いや、あるんだ! ローレッタの言う通り、生きてまた、皆に感謝を伝える為にも!)
がたん、がたん、と揺れる車内にしばしの沈黙が流れる。
ふと、その静けさを破ったのはローレッタだった。
「……そう言えば後ろ、静かだけど――大丈夫かな、ギルやん……」
「! ――どう、だろう。 出立してからもずっと、黙ってたからね……」
傍受している通信も静けさを保つ中、フリッツは彼女の言葉に壁で仕切られた車両後方へと身体を向ける。
「ギルと、コーデリア……。 この状況だ、何が正解かだなんてわからないけれど――僕は……僕は、彼女が必要だと思う。 ギルにとっても……今のアールにとっても」
フリッツの言葉に、ローレッタは静かに頷く。
皆と合流した格納庫での一幕――そこに現れたのは、コーデリア。ギルの妹だった。同行を申し出る彼女に、ギルは……。
(ギルやん。 大丈夫――だよね。 リアちゃんは生半可な覚悟でそこにいるわけじゃない……そうでしょ?)
ローレッタは大きく深呼吸をすると、運転席の傍らで揺れる通信機のマイクを手繰り寄せると、車両後部へと通信を繋いだ。
『あー、あー、ごほん。 ……タイチョー、報告だよ。 今のところ追撃の影は無し。 本部、また輸送車両間の無線状況に異常無し。 離別目標地点、到達予想時間に誤差無し。 それでそっちは……アルちゃんの様子は、どう……?』
……――第11話 別つ道の先へ (8) Part-3 へと続く。




