空母用カタパルトのお話 その3
皆さん、おはようございます。
とりあえず、今回のお話はこれで最後です。
下手な文章と、僕の頭の中にお付き合いくださってありがとうございます。
では、
お楽しみください。
「安全とは思いこみにすぎない場合が多いのです。
現実には安全というものは存在せず、子供たちも、誰一人として安全とは言えません。
危険を避けるのも、危険に身をさらすのと同じくらい危険なのです。
人生は危険に満ちた冒険か、もしくは無か、そのどちらかを選ぶ以外にはありません。」
- ヘレン・ケラー -
◇ ◇
その日の艦の乗員全体の緊張は忘れようとしても忘れない。
小笠原諸島沖に10を超える艦隊(やや遠いところに潜む艦を含む)の中央に、広い上部を持つフネは艦橋からの指示を受けつつ、その関係者しか甲板に出ていない。西からのやや強い風を受けつつ、準備を続けていた。
すでに危険海域ということで、近づくモノに対しては艦隊の船が警告を送り、他の船舶や飛行機・ヘリは周辺にいないが、物見高いメディアや野次馬に雇われた漁船や釣り船、あるいは他国の小型商船(たぶん情報収集・観測船)が区域ギリギリの海上に浮かんでいるはずだ。
「オールチェック終了、クリア、オーバー」
「チェック完了、了解、オーバー」
手短に連絡を取ると脚を油圧で短くした機体に取り付いていた関係者が艦舷の待避所に下がっていく。甲板上に残っているのはコックピットから見える関係者一人だけであった。ここからは艦橋から艦舷に設けられている発進指揮所に指示が移る。
「こちら発艦指揮所、1尉、キャパ充電済み、フック固定済み、デフレクター固定済み。全てクリアーです、オーバー」
「了解、機体のチェックは終わってる。行けるかな? オーバー」
「落ち着かれてますな」
なにやら規定違反の言葉が聞こえるが、何せ互いに初めてのことだ、艦橋からの叱咤もないから、「任せられている超ベテラン」なのだろう。
「行きましょう、カウントダウン始めます、オーバー」
カウントダウンは15秒前から、エンジンの出力を増やし始め、ブレーキ、フラップ・3舵の位置を確認する。
「3、2、1、GO!!」
斜め前の発進確認係が右手を振り下ろす、途端にGがかかり、機体は艦から放り出される。ふわりとした浮力を感じ、軽く吹かせたエンジンの推進だけでも何の外装もなく燃料を半分しか載せていない軽い機体は上昇する。緩く旋回し飛び立ったばかりの護衛艦「とさ」の上空をフライパスする。
日本最初の電磁カタパルトでの実機射出が成功した。
そして、他国の小型商船から通信量の数倍の増大が見られた。
『日本は、軍国化の道を邁進している』
とは、次の日のある国の新聞の一面である。
最終章なので、「戦後編」をちらりと(笑
護衛艦「とさ」は、フランスの「シャルル・ド・ゴール」の近代化版を想定してます。さすがに60,000トンクラスは無理が大きすぎます。艦名は「かが」の姉妹艦から引っ張ってきました。機体? F35C ですね。
そういえば、以前アメリカから
「空母いらない?」
と言われて、
「無理!」
と答えたというまことしやかな話がありましたが、海上自衛隊で正規空母的護衛艦は予算と人員数から考えても無理が大きいですね。
さて、
「日本海軍がカタパルトを利・活用したならば?」
という命題で、想像を巡らせる中、戦争初頭にミッドウェー海戦での防空のために少し使わせていただきました。実際ならばそれらのことがメインになると考えます。超ベテラン揃いの(一部は違うものの)初頭の時期であれば、ほぼ使わなかったのでは? と考えます。せいぜいが緊急発進と「彗星(2式艦偵)」「天山」「彩雲」の発進に役立つくらいでしょう。
ただ、小型空母は別です。艦の速度が遅すぎます。カタパルトの出番です。
まずは
・春日丸(のちの「大鷹」)クラス
を見てみます。作ってはみたものの、飛行甲板は狭いし速度は遅いしで、南方への航空機輸送任務、後には護衛空母的任務に使われています。
この艦にカタパルトを付けると? 天山や彗星の利用ができます。航空機搭載数を考えても正規空母的な正面攻撃能力は低いですが、「大鳳」などで考えられていた海戦時の航空機補給もできるでしょう。(「絵に描いた餅」かもしれませんが、米海軍は護衛空母を利用してそれに近いことをしてますし、マリアナ沖海戦がちょっとは違うことになったかもしれません) 護衛任務でも、発艦のたびにわざわざ船団や艦隊から離れて風上に向かう必要が少なくなります。重い機体も大丈夫なので、船団護衛で苦心していた「夜間哨戒」もできるでしょうし、フィリピン陥落後の米陸軍からの航空攻撃への対応もやりやすくなることでしょう。
しかしね…、「大鷹」クラスって、戦中、かなり簡略した作りだといってもけっこうしっかりしたものですからね。もっと簡略したものができなかったのか? と考えると、海軍の特1TL型「しまね丸」とか陸軍の特2TL型「山汐丸」などが思い浮かびます。カタパルトの有効な活用によって建造が早くなることを期待します。できれば19年にはそれぞれ5隻ずつくらいあれば、多少は護衛任務が捗るのでは? 洋上飛行を必要とするニューギニアへの航空機補充も損害が少なくなることでしょう。
え? 陸軍の機体はカタパルト大丈夫か? ということについてはかの萱場製作所の前例がありますから、それなりに機体強化した隼と99式襲撃機あたりを利用出来るでしょう。
って……
ん~~ やっぱり「絵に描いた餅」だなぁ……
戦訓が生きるのは20年代になるでしょうから、せいぜいが10の被害を6~7くらいに抑えられる程度でしょうね。
次は「瑞鳳型航空母艦 (あるいは祥鳳型航空母艦) 」5隻です。(千代田・千歳を含む)
個人的な意見ですが、これらの軽空母は「防空対応艦」にすべきだったと思うのですが、いかがでしょうか? 露天係留を含めたら30機くらいの搭載能力がありますし、単独活動の時には艦戦を多少下ろして艦攻6~9機を載せることも可能でしょう。カタパルトがありますから十分に対応出来るものと考えます。
祥鳳ですが、珊瑚海での戦闘の際にも、カタパルト発進はかなり活躍出来たものと考えます。ここで二つのIFを考えました。
一つは、五航艦の案通りに「祥鳳」を組み入れて防空対応艦として活動するIFです。けっこうな乱戦状態ですから、戦闘機はあればあるほど良いでしょう。2個中隊18機があれば、翔鶴被弾はあっても小破程度に抑えられたかもしれません。祥鳳も生き残ったかもしれません。すると、ミッドウェーは? 考えると捗りますね(笑
もう一つは祥鳳が第四艦隊の指示を受け上陸部隊船団の護衛に回る際に間接護衛を行うIFです。これも間接護衛を進言してますが却下されてます。なんでも
「船団に安心感を持たせるため」
なのだそうです。精神論ですね。
直接護衛によって船団に速度を合わせてますから、けっきょく被害担当艦みたいになったのですが、間接護衛ならば自由度が高いので、カタパルトを併せて常時上空護衛と緊急護衛(カタパルト装着済み)とで船団防空が楽になったことでしょう。発着艦のたびに船団を崩すこともなくなりますし… 以前、東南アジアからの船団護衛の際の空母の直接護衛についてはダメ出しをしましたが、祥鳳の戦訓はどこへ行ったのでしょうか?
これまで考えても祥鳳は傷つくでしょう。あの敵機機数の波状攻撃ですので、うまくやれて中破、もしかして沈没は免れられないかもしれません…… 中破程度であれば、後のソロモン・南太平洋海戦あたりにでも投入されたことでしょう。
祥鳳もそうですが、瑞鳳・龍鳳などはミッドウェーのことがなかったら、主力艦としてではなく使いやすい多用途艦として運営されることの方が多かったでしょう。港をそこまで嫌いませんし、そこそこの速度ですし、一個大隊規模の航空戦力を持ってますし… 小規模の作戦(その頃はほぼ大きな作戦が終わっていますが…)やマリアナ沖・レイテ沖では防空対応艦として十分活躍出来ます。
準同型艦の「千代田・千歳」は? 時期が悪かった……… カタパルトがあっても載せる機体があまりにも少ない…… 前述のように彗星・天山・彩雲の運営もできうるでしょうけれど、せめてマリアナ沖に間に合っていたのならば… 無理ならばそのまま水上機母艦として、あるいは高速輸送艦(大発が多く載せられるかも?)として使用した方がいろいろな場面で活躍したかもしれませんし、ドックも使わずに済みます。
こう考えていくと(主力艦・準主力艦を含む)などに載せる航空隊のカタパルト射出の訓練が気になるのです。このままでは空母に載せていないとカタパルト射出ができなくなります。ですから、陸上の航空基地に訓練用のカタパルト射出場を作っちゃいましょう。戦前開港した航空基地を見てみると、
横須賀(神奈川)・佐伯(大分)・大分(大分)・大村(長崎)
あたりの航空母艦母港である佐世保・呉・横須賀近くの航空基地が候補になります。
富高(宮崎)・笠ノ原(鹿屋・鹿児島)
あたりの真珠湾攻撃用に使われた航空基地も十分に候補になるでしょう。
本当は、日本海軍もアメリカ海軍に習って「艦(攻撃)地(訓練・編制)分離式航空隊」を戦前から考慮していれば…… パイロット育成の体勢を数年前から作り上げるしかありません。それでも日本における「師弟制度」がある限り、大量育成は難しいかもです。
ただ、マリアナ沖に間に合わせるには、油田地帯であるジャワ島などの海外に「訓練基地」を置くことは、やっぱり無理でしょうか? いつも考えてしまいます。
ここいらで、気になることを…
日本海軍では「加賀」でカタパルトの実験を行っています。
「なぜ加賀なのか?」
これまた調べてみましたが、分かりません。(苦笑)たぶんですが、加賀のドック入り(定期的なもの)のタイミングや、当時日本最大の飛行甲板を持っていたことなどが要因でしょうね。ウォーターラインシリーズの加賀もでかかった(ウンウン
で、今回のお話では、どの艦に載せましょうか?
鳳祥・龍驤・赤城・加賀・飛龍・蒼龍
などが昭和13~14年あたりで考えられます。ここでは蒼龍を推します。昭和12年後半には公試を行ってますし、大きな作戦に15年以降でしか参加していませんから、カタパルトの実験もできるかもと思ったのです。飛龍は1年遅いですし、赤城・加賀は交互にドック入りで改装しているようです。
で、上手くいったと仮定して、他の艦にも普及させます。鳳祥はどうしようかとも考えますが、小型艦への搭載試験を兼ねて一基つけましょう。
頭上をゴーッという近くを高速の鉄道が通ったかのような、それでもやや軟らかい音が響いた。
その音が無くなるとしばらくしてプッシュッとタンクから残空気の一部が吐き出される。係がパイプを切り替えた証拠だ。次の圧縮空気は二番ボンベより供出される。
「一番ボンベ、充填開始」
指示を出すと、復唱が続き係がモーターのスイッチを入れる。二つのモーターに駆動されるコンプレッサーがカカカカカッという金属音と共にそのピストンを往復させて、フィルター越しに空気をボンベへと送り出す。
再び、頭上からゴーッという音。3機目が飛び出したようだ。今日のカタパルトはどうやら機嫌が良いらしい。戦争初期に取り付けられたカタパルト「九九式3号1型」は気分屋で、一旦拗ねるとなかなか機嫌が直らなかったし、部品の欠損などの不具合が続いた。
中には
「こんなのはいらん。邪魔になるから取り払ってしまえ」
という乱暴な意見もあったが、、山口多聞少将(第二航空戦隊司令官)・山田定義大佐(加賀艦長)を中心としたメンバーが
「加賀の悲劇を繰り返さないように」
という意見が大半を占め、それでも辛抱強く使っていく中で改良型の「3号2型」、この船にも付けている小型艦用の「3号3型」と変遷してある程度信頼性を得ることができていた。コンプレッサーの動力もディーゼルからモーターへと変化していた。(戦訓から補助発電機としてディーゼルエンジンが片隅にある)現在主力艦は8~9トンの航空機に対応する「4式3号4型」(全長9メートルのために搭載される艦は正規空母のみとされていた)へと変更される最中にあった。
「圧縮比、規定値になりました、+0.1……+0.2」
「モーター停止」
カクンと勢いよく回っていたコンプレッサーが止まり、しばらく音が無い世界に迷い込む。耳が多少バカになっているようだ。それでも外では戦闘が続いているのだろう、時折、対空砲の音が聞こえている。
上長(射出機械室長)からの指示が出る。
「三番に切り替えろ、今のうちに二番に再充填しておく」
その言葉を復唱し、兵らはパイプ切り替えとコンプレッサー起動に動き出す。
その後、残されていた機体(露天係留を含めて零戦9機・97式艦攻(対潜用)6機)が全て射出されたかのようにカタパルトは1分に1回程度、そのピストンを動かした。
1時間もしないうちに戦闘は唐突に終わった。上空哨戒・対潜哨戒のために空に残る機体以外は次々と着艦し、一基しかないエレベーターで格納庫へと降りていった。戦闘を感じることができたのは数分間、本艦の高角砲と機銃とが盛んに打ち出された時間だけである。遠くで爆弾らしい炸裂音を聞き、船団にいくらかの被害があったようだ。それ自体、不幸なことであるが、艦自体には被害は無かった。
「準戦闘態勢に移る。上長の指示に従い休息に入れ」
コンプレッサーに油を差し、モーターとの継ぎ手を確認する。ボンベの空気圧をチェックして、パイプ類の空気の漏れも点検する。手慣れた手順で次の戦闘に備えた準備が終わった頃に、握り飯と味噌汁とが配られた。
塩気のきいた握り飯をほおばると、
「生き残れたな」
という実感を身体が感じていた。開けはなたれたドアからの風が心地良かった。
まぁ、
これだけやっても、負けますね。多少、損害が少なくなり、敵に与える被害は増えることでしょうが… 珊瑚海・ミッドウェーで空母は残っても、航空機がどんどん少なくなっていくことでしょうから(空母に対応出来るパイロットも含む)、レイテまで残ったとしても戦艦突撃のための「囮艦」としての役割を果たすだけに終わる……かも?
最後に、実際はカタパルトが無かった日本海軍はどうしていたのか? についての考察です。
加賀の実験後も、実際には空母用カタパルトの研究自体は続いてます。昭和18年末までです。ところで、いろいろと調べていく中で、空気式カタパルトと「フライホイール」式カタパルトも研究が重ねられていたことを知りました。やっぱり火薬式では無かったみたいです。危ないし…
まぁ、カタパルトの必要自体はけっこう考えており、「大鳳」原型(G12)までカタパルトの搭載数を決められてます。よく目にする空母の図面にもカタパルト位置が描かれたものがありますしね。
「RATO」と呼ばれるものがあります。ロケットを利用した発艦(離陸)補助の道具です。もちろん日本独自のものではありません。ドイツはかのMe321「ギガント」輸送グライダーで使ってますし、イギリスは商船から戦闘機を飛ばす(CAMシップ)ために使ってました。(後にカタパルト発進になります)
日本では「四式一号噴進器」という名称で
・主翼取付用の一〇型 ~ 静止推力400kgで燃焼時間9秒。
・胴体取付用の二〇型 ~ 静止推力800kgで燃焼時間9秒。
(ちなみに「桜花」11型は二〇型を利用してます。かの「音速雷撃隊」…三本全部点火したら単純計算で推力2400㎏……音速超えるかな?? その前にベニア製の主翼がもげるでしょうね)
燃焼時間3秒という記述もあります。さすがにそんな短時間ではないでしょうが、実験に当たったパイロットは
「1秒?」
という感想だったみたいです。たぶん最大Gを感じる時間がそれくらいだったのかもしれません。さておき、とりあえず実用化にめどが付いたので、海軍も空母用カタパルト開発を止めたようです。これによって、発艦距離は2~3割短くなり、計算上では天山9機一個中隊を5分以内に発艦させることができる(記述によっては2分以内…ホントかなぁ?)と見込んでました。これで小型空母からも天山・彗星が活用できるはず……
ところが、最初に量産したものに不具合がありすぐさま回収されてます。推進剤の成型に問題があったみたいです。このころよく見られる「採用、即、量産」の中で十分に初期不良の対応が終わらないままに生産されたのでしょう。
実戦に移ったとしてもたぶんイギリスでも生じたように、左右の点火タイミングのズレ、切り離し時のトラブル(推進剤を充填して再利用する予定)など、艦に配布されてからも問題が多発しただろうかと考えます。
まあ、ホントに必要なマリアナ沖海戦が既に終わってしまいましたので、残念ながら戦況にはほぼ関係が無かったでしょうね。
と、さまざまに考えながら、一筋のストーリーとして「IF」をでっち上げます。(笑
ま、負けるのですけれどね。
さて、最初に考えていた
「日本海軍にカタパルトがあったら?」
そして
「カタパルトは有効だったか?」
という疑問については、
『あれば便利だけれど、あっても結局変わらない』
そして、
『緊急発進と攻撃機発進のみに活用、護衛空母には有効だったろう』
という、ほぼ米海軍と同じ考察に行き付くのです。
ですよねぇ~~~
アメリカ海軍でさえ、護衛空母でのカタパルトの有効性を戦訓として取り入れて、正規空母にもその発展型を載せてますが、戦末期のF6Fにしても基本的には自力発艦です。戦闘機をカタパルト必須になるのは戦後のジェット機以降ですから、第二次大戦時にはあまり気にしなくて良いでしょう。
「戦いは数だよ」
という、どこか聞いたことがある結論に行き着きます。はい。
いかがだったでしょうか?
よくあることですが
「探し物は、それを探さなくなったときに見つかる」
ということを今回も何度か体験しました。
記憶というものは、どんどん劣化しますね。
以前に読んだ本から得た知識が、今では否定されていることもあります。
今後、どのくらい描けるか分かりませんが、「気力」が続く限り、頑張っていこうかと思います。
さて、
カタパルトが終わりましたので、次のネタ……
ん~~~
何か良いのはありますか?(笑
高速潜水艦にしようか…
ヘリコプターにしようか…
それとも
海防艦(多目的艦)にしようか…
と、考えてます。まぁ裏切ったら済みません(苦笑
ではでは。




