03
「リアム様にお弁当を作るの?!」
いつものようにレベッカと昼食を取った後、裏庭へやってきた。
夏期休暇中のリアムとの進展具合を聞き出したのだが、なかなか順調なようだ。
「前にあげたサンドウィッチをまた食べたいって言われて…」
「いつ?どこで食べるの?」
「近いうちに…。侯爵家の別邸の一つに招待されたの…」
「別邸?」
宰相であるリコッティ侯爵は王都から離れる事が難しいため、趣の異なる別邸を何ヶ所か用意して短期的に滞在するという。
———前世の感覚でいうと週末は別荘で過ごすようなものだろうか。
「手料理をリクエストして、家にまで招かれるって…」
これはもう…
「あとはもうネックレスを貰うだけね」
「———言っておくけど」
少し顔を赤らめながら、レベッカは私を横目で見た。
「これはアレクシアの為なんだからね」
「え?」
「お弁当は王宮図書館の閲覧許可と引き換えなのよ」
「王宮図書館?」
「例の毒の事を調べてるんだけど、学園にも王立図書館にもなくて。そんな事をリアム様に少し言ったら、王宮内の図書館は専門書が充実しているしリアム様と一緒なら入れると言われて。そのお礼にサンドウィッチが食べたいってなったのよ」
「そうだったの…」
それは、ありがたいけれど。
「…つまり利害の一致という事なのね」
リアム様がレベッカのお弁当を食べたがっているのは間違いないだろうし。
「まあ———それで、明日は授業が早く終わるから帰りに二人で王宮図書館に行くことになったの」
「リアム様も?」
「私だけじゃ入れないもの。リアム様には毒の事は言っていないわ、薬草について調べたいと言ったの」
「そう…ありがとう、私のために」
「関係ないと分かればいいんだけどね」
「…そう…ね…」
「アレクシア?」
思わず俯いた私の顔をレベッカが覗き込んだ。
「…毒の事で…気になる事があって…」
「気になる事?」
「その毒草って、レモンの香りがするのよね」
「ええ」
「…熱があった時に夜飲んでいた水が、レモンの香りがしていたの…」
「え?」
「偶然かもしれないけど…最近は何の味もついていない、普通の水で…それで…」
「———ちゃんと調べてくるから」
ぽん、と肩を叩いてレベッカは言った。
「王宮図書館の本でも見つからなかったら、きっとその毒草はゲームの中だけのアイテムで現実では存在しないって事よ」
「…そうね」
「ごめんね、私が変な事言ったから不安にさせて」
「レベッカは悪くないわ」
私は首を振ってレベッカを見た。
彼女は私を心配して教えてくれたんだから…
勝手に私が不安になっているだけ。
「ありがとう、レベッカ」
もう一度私は友人にお礼を言った。




