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記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました  作者: 冬野月子
第三章 令嬢はゲームに巻き込まれる

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07

「夜会のパートナーを頼まれたの…」

翌日、昼食後にいつもの裏庭に行くとレベッカはそう言った。


「夜会?今度学園で開かれる?」

「そう」

「それで、受け入れたの?」

「侯爵子息の頼みを断れる訳ないじゃない…」



貴族にとって、夜会などのパーティーは大切な社交の場だ。

そのため勉強を兼ねて、学園では年に数回パーティーが開かれる。


婚約者や恋人がいない者にとってパートナー探しは重要な問題なのだという。

一人で参加してもいいが、十代の間に結婚相手を決める事が多い貴族にとって、学園でのパーティーは婚活の重要な機会らしい。


テオドーロはパートナーを希望する相手が多すぎるため、一人で出ると言っていた。

ただしダンスは踊らないとならないため、相手選びに頭を悩ませているようだ。


婚約者でありながら仲の悪かった私とパトリックは———パトリックは二年生の時も生徒会に入っていたため、そちらの仕事を優先するとして一緒にはいなかったらしい。

今回は、当日は生徒会長としての挨拶だけすればいいというのでエスコートしてもらう予定だ。

エスコートだけでなく、このために私のドレスやアクセサリー一式を作ってくれると張り切っていた。



もちろんゲームでもパーティーの場面はあり、攻略対象との好感度が高ければダンスを踊ったり、パートナーとしてエスコートされたりする。

…そのパートナーに、リアムがレベッカを望んだという事はもうリアムルート確定という事なのだろうか。

あれ、でも…


「…ゲームでは最初の夜会はまだ誰ともパートナーにならないわよね?」


パーティーは、それまでの攻略の成果が分かる場でもある。

最初の夜会は入学から三ヶ月後の夏期休暇前。

この時点ではせいぜい一曲ダンスを踊れれば上出来なはずだ。



「…そうなの…ゲームより展開が早いのよ」

「は、まさかリアム様からネックレスを貰ったの?」

「それは貰っていないけど…告白まがいの事は言われたわ…」


「告白?!」


「ちょっと!声が大きいから」

思わず声を上げてしまい、レベッカに睨まれて慌てて口を手で塞いだ。




「———何か…私は他の女子と違うとか…側にいても嫌じゃないとか…」

心なしか顔を赤くしてレベッカは言った。


「それは…リアム様的には告白まがいというより、完全に告白よね」

ゲームのリアムならばそんな事を言うなんてあり得ないくらいだけれど。



「…私…全然攻略した覚えないんだけど」

「そうねえ…。それって、攻略は関係なくリアム様がレベッカを好きになったんじゃないのかしら?」

ここはゲームの世界の学園だから、ゲームと同じようなイベントは起きるけれど。

ヒロインのレベッカはゲームと関係なく動いているから…攻略対象達もゲームと関係なく行動しているのかもしれない。


「レベッカは、リアム様の事どう思っているの?」

だから大事なのは本人の気持ちだと思うのよね。


「え…私は…」

さらにレベッカの顔が赤くなる。

「それは…好かれる事は嬉しいとは思うけど…」

「まあ、嫌ではないのね」

「う…ゲームみたいにキツイ事は言わないし…口が悪いというより口下手みたいだし…一応気遣いみたいなものはあるし…」

おお、これはいい感触じゃない。


「殿下もリアム様が好意を持てる相手が出来て安心したんですって」

「そ、そうなの…」

レベッカは何かに気づいたように顔を上げた。



「そういえば、殿下からネックレス貰わなかったの?」

「あ…それなんだけど…」

私は誓いの事は伏せてレベッカにネックレスの事を話した。


「うーん…デザイン的にはゲームと同じもののように思うけど。でも前にもって…もしかして…」

レベッカはじっと私を見た。


「———ゲームに出てくるネックレスって、相手を自分のものとして束縛したいという意味があるのよね」

「え?」

「鎖で自分へ繫ぐという事よ、つまり首輪ね」

レベッカは自分の首元へ手を当てた。

「自分の瞳と同じ色の石なのは、いつも見つめていますという事ね」

「え…それって…怖い…」

「だからよほど思い入れのある相手にしか贈らないわ。殿下もアレクシアに執着心があるんじゃないのかしら」

「殿下が私に…?」


「もしかして、殿下の初恋の相手はアレクシアなのかも」

「…え」

「ゲームの殿下もかなりのツンデレよ、婚約者にだって他人行儀だし。でも殿下はアレクシアの事を気にかけているのでしょう?それに」

「それに?」



「殿下のアレクシアを見る目。あれはゲーム終盤でようやくヒロインに向ける目だわ」

私を見つめてレベッカはそう言った。


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