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岸田家の異世界冒険  作者: 冬の黒猫亭
三日目 【冒険者の卵】
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Act 30. フラグとは新手の呪いか!

 満身創痍ながら、風を切る感触は爽快だった。


 姉に連れられて行ったスノーボードやら、兄が週末に出かけたスケートボードの練習場が脳裏を過り、思わず走馬灯かと笑ったら、唇が切れているらしく痛かった。


 まだ生きているらしい。


 背後から巨大な何かが木々をなぎ倒しながら、向かってきているので、どれほど長生きできるかはわからないがという、注釈がついているが。



 なんだよ、あれ!めっちゃ木々倒れて危ないだろ!

 時々、火炎放射器使っているような、轟々と燃え盛るような音がするんですけど!

 新手の狼煙かっつーくらい、煙上がってるし、明るくて視覚的に怖いわ!  

 そして、猫缶並にまっしぐらで私の方に向かってこなくてもいいんですよ!

 どこぞの追跡システムが搭載されてるんですか!



 たぶん、【一枚の壁(クール)】が発動して、これくらいビビっているということは、なかったら真面目に動けなかったんじゃなかろうか。


 なんだろう、このラスボス的威圧感。


 正直、怖くて後ろを振り返れないのが現状である。

 

 イシュルス女王蜂は殺意が怖かったが、背後から追ってきている何かは、姿見えないのに上から押さえつけられているような感覚がするのだ。


 現在、どこに向かっているかわからないけど、とりあえず勘で森を爆走している。


 マジで頼むよ、我が【悪運(グットラック)】。


 足首に縄を付けて馬で走り抜ける西部の拷問のように、百人切呪詛刀ひゃくにんぎりじゅそとうに、木の蔓っぽいものを巻き付けた。引っ張っていこう。なんか握るのは危険なフラグの気がする。


 百人切呪詛刀ひゃくにんぎりじゅそとうを抜こうと思ったら、女王蜂の割れ目?に赤い矢印。

 しかも、わりかしデカい。


 のぞき込んだら、拳ぐらいはありそうな、不思議な色の魔石。

 たぶん願いを叶えてくれる龍の玉ぐらいはありそう。


 どんだけでかいんだよ。



 

女王の魔石(じょうおうのませき)(小) 劣化】 


 イシュルス女王蜂を倒して入手できる。

 敵に投げつけると広域風魔法『ハインズウィンドーカッターウェーブ』を発動。

 武器改造に素材使用可能。風系魔法26%アップ。

 ただしヒビが入り、魔力の大半が失われている。

 販売価格:780000 (ビル)




 ごっあんです!


 ってか、壊れてなかったら、もっと凄かったようだ。

 たぶんだけど、兄の一撃でヒビはいったんじゃないだろうか?


 もし逃げきれなかったら、使おうと鷲掴み、そのまま――――女王蜂の羽をスノボーの板(・・・・・・)のようにして、走り出しましたよ、ええ。



 や っ ぱ り 浮 い た !



 ものすごく安定感悪いけど、なんとかなったよ。


 どっちの足に魔力流していいか分かんなくて(というか足から魔力って流せるのか?と思いつつ)両方流したら、遊園地で真上に吹っ飛んでいくスペースショット並の噴射力で吃驚した。


 二メートルは浮き上がったよ、あれは。


 後ろに置いてある足から魔力を流せばいいって気が付いたけど、前輪上がっちゃったみたいなウィリーして進んだり、右往左往したよ。 


 よく制御しているなぁ、中身は高校生、外見は小学生の名探偵。


 体感速度20キロはありそうな感じだ。


 カーブするときにむちゃ足が痛むし、魔力が刻一刻と減っていくのがわかる。


 いったいどれくらい持つんだろう。

 長距離走を奔ったけど、己の体力がわからないためにスピード配分がいまいち、よくわからないという感じである。


 時々、女王蜂から出てきた魔石から魔力を吸い上げる。


 木々の間を抜けて、背後からの何かから距離を取ろうとするのだが、後ろのも早い。


 というか、たぶんかなりデカい気がする。

 そのせいで、さして距離が変わってないどころか、軌道を時々変えないと、追いつかれている気がする。


 一直線だと、木々をなぎ倒してくるから、早い気がする。



 できれば、この何かを撒いてから兄姉を探したい。



 連れて行ったら間違いなく、討伐になるだろう。

 なんか、足の早さ云々より、また殿が必要なほどの単体で過剰な敵戦力な気がするし。


 たぶん、王子なんて泣いちゃうよ。これ。


 しかし、そんな私の思いとは裏腹に、左前方に見える飛び散る光の線と爆音。絶叫と雄叫び。近づく激しい戦闘音。


 最悪と最低は同時にやってくる。

 

 なんだろう……遠目でもデジャヴかと思うほど、初日と似たような景色なんだが。


 

 囲まれ劣勢な岸田兄率いる騎士団+α。


 VS。


 私と同じぐらいの身長か、それ以上にデカい図体をした緑色の肌の人型の集団。




 ――――――ゴブリンの姿であった。  


 


  + + + 





 兄と姉の敵エンカウント率の高さである。


 なんで、こんなところにゴブリンがいるんだっつーか、たぶん、遠目に見ても鎧に身を包んだり、装備がしっかりしているので、初日にあったゴブリン兵士と同列系なのだろう。


 ただ、今回はフードを被った人間っぽい感じの司令官の姿である。


 ……いや、なんだろう。

 記憶にないような、あるような気がするんだが。


 なんか戦いつつも兄と司令官っぽい人が会話しているッぽいが、遠すぎるのと自身の風を切る音で聞こえない。後、背後で何かが、時々轟々いってるし。


 降伏勧告とかだろうか―――――流石の兄の動きにも、遠目でもなんだか余裕がない感じがする。

  

 全員がイシュルス蜂と対戦して、消耗している後の遭遇というタイミング。 


 間違いなく、私を探して移動してエンカウントだろう。


 なんだか、さすがに申し訳なくなってきた。


 とはいえ、兄姉の元に飛び込んで、戻ったとしても、状況は変わるまい。

 それどころか、私という足手纏いが増えて、更に厳しい状況になるのは目に見えている。

 

 どう考えても、今の負傷している私は戦力になるまい。


 あと、うん、後ろのなにかよくわからないラスボスっぽい感じの単体の敵対勢力もいるからね。


 身内に突っ込むのは避けたい。


 かといって、せっかく会えたのにスルーするという選択はない。

 兄の姉の危機なのだから。


 叔父に援軍を頼みに行ったって、帰還の道がわからないのだから、運よく城についても全滅する前に戻ってくることはできないだろう。  


 考えろ、今私にできる事。


 後ろの何かを撒いて――――いや、撒いたとしても、身内の所に戻っても戦力にはなれない。

 

 私という的を増やして、兄姉に向かう刃を微々たるもの分散するぐらい。

 イシュルス女王蜂の羽で、機動力は上がっているが、逃げること以外に、なにができる。


 私が百人切呪詛刀ひゃくにんぎりじゅそとうをもう一度手にするべきか―――――いや、記憶が曖昧になるから逆に危なそうな気がする。できれば最終手段にしたい。


 それとも、兄に百人切呪詛刀ひゃくにんぎりじゅそとうを返して……ダメだ。返すまでには一度、兄の所に戻ることになる。後ろのは連れてけない。


 ジリジリと周囲網を、圧倒的な兵力差で縮められている。

 たぶん前回よりは多少は少ない数ような気がするが、それでもかなりの数であり、兵士の統率は取れており今の満身創痍の兄たちには難しいはずだ。


 中心で守られている王子と、回復薬のロリコーン、同じく弓で応戦もしている姉の姿。


 それでも、ユニコーンの水晶のような角の輝きの頻度が落ちていき、姉の弓は確実に敵兵を屠るが、どんどん放たれる矢の数が減っていく。


 前線で戦ってはいるが、騎士では力不足なのか、ジークとスキンヘッド以外が、徐々に後方に下がりつつある。


 特にチャラ男は、先ほどの広域魔法を放った影響か、ほとんど防一方だ。

 HPなぞ数値で見えずとも、黄色か、赤ゾーンに入っている者達もいるかもしれないほどだ。 


 くそっ―――――なにか、なにかっ、ある、はず、今の私にもできる事がなにか。



「ぃっ、あつう!!」



 轟々と背後から感じる火炎放射器のような音と熱。


 考えに集中しすぎていて、背後からの炎の熱量が届くほどにスピードが落ちていていたらしい。

 後頭部の髪の毛チリチリパーマになっていたらどうしよう。


 加速して、反射的に背後を振り返る―――――いや、振り返ってしまった。


 かなり接近を許していたようで、木々の隙間からチラチラと巨大な姿が窺えた。



 はっきりと視覚に入ったことで、思わず凝視してしまい、次に正面を向いた時には、危く大木と正面衝突する所だった。


 何も考えず避けたために、すぐに次の大木。


 それも魔力を流すことを一瞬やめて、強引な体重移動で、辛うじて方向転換することができたが、再び魔力を流したら慌てすぎて、最初の時のように上空にスペースショット。


 二メートルぐらい浮き上がった所で、背後を見やると大木の隙間から、私の頭部ぐらいがありそうな金色の右目と目があった。


 縦に萎縮していた瞳孔が標的に焦点を合わせるように、細まる。


 ひっと思わず喉が鳴った。


  


 それは、金色の目に、赤い、赤黒い鱗をした――――――………岸田母フラグ。


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