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BRAVE STORY-01 解決報酬


挿絵(By みてみん)



【BRAVE STORY】事件屋の噂を聞きつけて



 魔王教徒の拠点を制圧してからの1週間は、本当に大変だった。

 オレ達で拠点の防衛をした後、応援のバスター達が到着したのは翌日の夜。場所に心当たりがあったイヴァンさんが案内をしてくれたのは、4組20人。


 それからイサラ村まで送り届けたんだ。


 家畜も、怪我人も全員。魔王教徒の怪我……これは殆どオレのせいだけど、それは治癒術士がおおよそ治し、自力で歩かせた。


 魔王教徒は結局79人だった。


 子供や怪我人を連れ、村まで2日半。国の役人と警察が着いていて、被害状況を確認。電話は復旧されていた。

 その次の日、30人のバスターと10人の警察、10人の役人が到着し、魔王教徒達はギリングの西隣にあるリベラ町へ連れて行かれた。


 オレ達がギリングに帰れたのはその3日後だった。


「あー……疲れた」

「イースは大活躍だったな。子供達に大人気だったし」

「猫人族は珍しいからな。尻尾を何度も掴まれたよ」

「ボクあびちかったます。こもも、ぬしボクから取るました。ボクのぬしますよ?」

「はははっ! そうだなあ、村の奥さん連中も子供も、みーんなイースを囲んでたもんな」


 なんか、子供に好かれるんだよね。キャーとかギャーとか言いながら、オレにしがみついてきたり。まあ嫌われるよりいいんだけど。

 無骨な鎧を着ていなかったせいかも? 顔を出した軽めのローブの女性なんかは、比較的子供に好かれていた気もするし。


 イサラ村には父さん達を知ってる人も多かった。オレがその子供だと知った村人が、感謝と共に厚くもてなしてくれたんだ。

 オレ達は勝手にホテルを使ったり、店の売り物を使ったりした。みんなで頭を下げて謝ったんだけど、謝罪もお金も必要ない! と受け取ってくれなかった。


「それにしてもオルターの狙撃、見事だったよな。最初あいつらの動きが全然分からなかったから、ライフルで狙って教えてくれたのは助かった」

「銃術士は出来る事を何でもやる。そうやって貢献するしかねえんだ。どうしたって攻撃のメインにはなれないから、サポートは全力でやるさ」


 さすがに全身筋肉痛で、足もパンパンだ。昨日は簡単に報告だけをし、昼過ぎに解散。それからは泥のように眠り続けた。


 構って貰えなかったからか、グレイプニールにはさんざんグズられた。この後手入れ用品を買ってやると言って機嫌を取っている。


 今日は朝8時に事件屋に顔を出したものの、依頼をこなす体力も気力もない。オルターと示し合い、明日まで休もうと頷き合った時だった。


「昨日確認してきたけど、まさか本当に魔王教徒だったとはね。ビアンカさんとクレスタさんには私から再度お礼を言っておくわ。イヴァンさんにもね」


 レイラさんがオレ達を労い、封筒を渡してくれる。


「これは?」

「ふふん。大活躍してくれたから、ボーナスよ」

「えっ」

「なにせ、人攫いを79人逮捕、村1つ救出! ビアンカさん達も動いたからね。フフフ、管理所も役所も不甲斐なさを噛みしめていたわ」

「えっと、それとこんな臨時ボーナス、どんな関係が……」


 確かに結構な大仕事はしたと思う。凶悪な集団を数十人捕らえ、200人以上と家畜を救出だなんて、近年のバスターにない活躍だ。

 でも、今のイサラ村にお金を出す余裕はないはず。魔王教徒の持ち物を売り払っても、そんな大した金にはならない。


 依頼人がいないのに、どこからお金が出てくるのか。


「昨日役人が来たんだけど、国民を全然守れてなくて、役所では税金泥棒って非難轟々だったみたい。それもあって、国からの報奨金もしっかり払われた」

「やっぱりビアンカさん達が出てきたから、ってのもあるのかな」

「それもある。でも、報酬が高額になったのは別に理由がある」


 封筒の中身はまだ確認していない。それでもかなりの大金である事はすぐに分かった。


「いち、に……」

「あっ、オルターずるいぞ! 後で一緒に確認しようって」

「30……40……うえっ! いや、俺こんな大金……リボルバーを買った時だって持ったことないぞ」

「えっ、オレ達同じだけ貰ってるよな?」

「イースの方が活躍してると思うけど、分け前は一緒みた……い。ろ、ろく……65万ゴールド!」

「嘘っ!?」


 オレも慌てて中身を数え始めた。数え間違っていなければ、今回の報酬は65万ゴールド。

 1週間で、65万。こんなお金をグレー等級で稼ぐ事はまずできない。

 2人で130万ゴールド。いや、レイラさんはもちろんだけど、ビアンカさん、クレスタさん、イヴァンさん、他のバスターにも報酬があったはず。


 国からはどれだけお金が出たんだ?


「コホン。守銭奴ども、もういいかな」

「あっ……すみません」

「応援のバスター達とイヴァンさんは一律15万ゴールド。ビアンカさんとクレスタさんは君達と同じ」

「わお」

「全部で600万ゴールドくらい? そりゃ村を1つ救って危険な奴らを大量検挙したけど、こんなに貰えるのか」


 相場は全然分からない。

 今まで週に1回の巡回すらしていなかった国が、辺境の村の救出で簡単にお金を出すだろうか。それだけ税金泥棒の声が耳に痛かったとか?

 それとも、ビアンカさん達の名前が出たからだろうか。


「テレスト送り」

「……えっ?」

「南のテレスト王国は知ってるよね」

「あっ、そういう事か。テレスト王国に、魔王教徒達を引き渡したんだ!」


 なんだ? テレスト送り?


「オルター、意味分かるのか?」

「もちろん。テレスト送りは犯罪者が一番恐れてる事だよ。そうか、シュトレイ山脈のあの辺りって、ジルダ共和国の外なんだな。エバン特別自治区ならそれも可能だ」

「……ごめん、全然分かんないんだけど」


 テレスト王国に魔王教徒を引き渡すと、何故金が貰えるんだろう。何故テレスト王国がオレ達に金をくれるんだ? 

 テレストは魔王教徒からの被害に遭っていて、指名手配していたとか?

 ジルダ共和国の外だと何か違うのか?


「ぬし、ぬし!」

「ん? なに?」

「てれすと、何ますか?」

「ああ、ここよりずっと南……えっと、遠い所にある国だよ。国っていうのは、幾つかの町や村をまとめて面倒見ているところ」

「おぉう、むじゅかし」


 だよな、説明しても分かんないよな。

 こういう時に相手に伝える難しさを痛感するんだ。オレはそんなに頭が良い方でもないし、感覚でなんとなく分かっているだけってものは結構多い。

 グレイプニールのために、賢くもならなきゃいけないのか。強くなるよりその方が大変かもしれない。


「テレストっていう場所の面倒を見ているんだ。オレ達が今いるのはジルダ共和国。テレストは別の国、別のところ」

「おあ? 別のとこ、分かるます。いさまるま、別のとこ!」

「うん。イサラ村みたいに、ここから離れた別のところ」

「じるまきょうまおく、ぎりんぐありますか?」

「そう。ジルダ共和国ギリング町だよ」

「おぉう、分かるます、ボクおりこう! ぬし、なでるます」

「あ、はい」


 で、テレスト送りだったっけ。何でテレスト王国の名前が出てくるんだろう。


「そうか、イースは別の大陸出身だから知らないか。テレストは過酷な砂漠の国だろ? 人口が少なくて、労働力は不足してる。観光や塩田、世界の中継港として役割は大きいのに働き手が確保できないんだ」

「もっと前から話しましょうか。例えば海の上、船の上。どこの国の領土でもない場所……特別自治区とか。そういった場所で悪い事を行うと、どこの法律で処罰すると思う?」

「え? それは……船の持ち主の国とか、近くの国とか」



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