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LEGEND OF SWORD‐05



 魔王教徒も死霊術士も、どんな方法で攻めてくるかは分かってる。アンデッドだって、落ち着いて対処すれば問題はない。


 仮に蟲毒モンスターが徘徊しているなら、この島の魔王教徒が無事で済むはずがない。という事は、この島は生産拠点ではないんだ。

 蟲毒モンスターじゃなけりゃ、オレだって怖くない。


「ぬし! ぶるくましゅ! ぶるくましゅ、してくまさい!」

「斬り……払い! ブルクラッシュは出来ない! アンデッドは体が脆くて飛び散るから、斬った後が大変なんだ!」

「おぉう……かなち」


 アンデッドを脳天からぶった斬ったら、オレは腐肉まみれになってしまう。あの臭い、取れないんだよね。吐きそうになるし。それを浴びるなんてとんでもない。


「アイスバーン! ……よしっ!」


 でもアンデッド達を氷漬けにすれば、血肉も飛び散らない。魔術書を持っていないから、どうしても威力は弱いんだけど……掛けないよりマシ!


「これでブルクラッシュを繰り出せる!」


 グレイプニールがそうやって倒したいっていうなら、叶えてやるのが持ち主の役目だよな。


「あっ、ぬし! ぬし! ボク、あいちゅまん! あいちゅまんそーど、しますか!」

「アイスバーン……あ、そうか! 魔法剣状態で切れば、凍らせて殴る事が出来るんだった! アイスソード!」

「あいちゅそーど! わはっ、たのしいます!」

「この調子で行くぞ!」


 母さんが放った矢が左右でアンデッドの頭を射抜いていく。アルジュナの威力と、母さんの腕。伝説と呼ばれるにはそれなりの理由があるんだと分かる。


「ヘルファイアを畳みかけろ! あの剣は放っておけ、そっちの犬人族うごぉふっ」

「鈍臭えな。おめえらが唱えてる間に3人殴って2人蹴り飛ばせるぜ」


「……詠唱を、物理的に止めにいく奴は初めて見た」


 地面は岩と土が半々で、とても硬い。その地面に魔王教徒達が次々倒れていく。そして、ゴツッと痛そうな音を発している。

 ジャビの動体視力と反射神経、それと運動能力。こんなにも凄いとは思ってなかった。


 相手が詠唱し始めたら、詠唱が出来ないように口元を殴りに行く。殴ったら一歩で跳び、次の離れた魔王教徒の口元に蹴りを入れる。


 魔力は止められないけど、上手く発音できないから詠唱しても発動しない。なるほど、原始的だけど確実に効果がある。

 でも、そんな事ジャビに教えたっけ?


「ジャビ! その調子でやってくれ! 詠唱出来なけりゃただの……」

「あー? わかんねえけど何かごちゃごちゃ言ってるから、黙らせた!」

「あー……詠唱かどうかは、あまり気にしてなかったのか」


 世間知らずで心配になる事は多いけど、なんでだろうな、ジャビなら大丈夫かと思わせる安心感。


「負けてられないな。アンデッドを全部切り捨てるぞ!」

「ぴゅい!」


 アンデッドを凍らせて砕き、何十体も、何百体も倒し続け戦力を減らしていく。

 アンデッドは増えない。アンデッドの死骸が転がっていれば、当然負の力が溜まってモンスターを生みやすくなるんだけど、元となる生命体の死骸がないからね。


 だから数を減らせばいずれ死霊術士は自分で戦う以外の方法がなくなる。

 そうなればもうオレ達だけでも対処できる。


「イース! てめえのために矢の雨で道を作ってやったぞ! 脇目を振らずに前の奴だけ斬り散らせ!」

「左右のアンデッドはわたしが見ている! アルジュナが言った通り、気にせず進んでジャビの加勢に入ってくれ!」

「ありがとう!」


 母さんとアルジュナの援護によって、オレとジャビは邪魔を気にすることなく戦いに専念できる。暴れてやるさ、それこそ父さん達の出番がなくなるくらいにね!


「イースくん! 飛ぶかい!」

「アルジュナ達が活躍し過ぎて、ボクの出番がありませんよ。イースさん達を空高く打ち上げるくらいお安い御用ってやつです」

「有難うございます、やってみます!」


 イヴァンさんが炎剣アレスを低く構え、跳び上がったオレの靴底がアレスに触れる直前、斜め下から上に向かってフルスイング。

 オレは打ち上げられ、上空数十メルテの位置から魔王教徒達を見下ろす。


 襲い掛かるヘルファイアなんか、避ける必要もない。グレイプニールが吸収してくれるから。


「ファイアソード!」


 グレイプニールで増幅した魔力を乗せ、空中で思い切り振りきる。炎の刃が地上へ降り注ぎ、魔王教徒達が慌てふためく。高さは数十メルテ、たった数秒。

 それでも真上から拠点を見渡すには十分だった。機能しない状態まで焼き払うのも簡単そう。


 最高地点から落ち始めた時、そう思って意気込んだオレの目に、異様な光景が写り込んだ。


「あれ……あれ何してんだ?」


 地上からでは死角になっていた窪みの淵に、魔王教徒が囲むように立っている。オレが着地するほんの1秒前に、そのうちの数名が窪みに身を投げるように落ちていくのが見えた。


「どういう……」


 動揺したオレは、着地点にいたアンデッドに気付くのが遅れてしまった。腐った手と口でオレを食おうと待ち構える数体に気付いたのは、もうその手が触れるという時。


「まず……い」


「ヒール! ごめんイース、遅れちゃった!」


「わっ!? あ、レイラさん!」


 アンデッドが淡い光に包まれながらその場で苦しみ、溶けて消えていく。レイラさんのヒールが飛んで来たんだ。


 続いて発砲音が途切れることなく続く。オルターとクレスタさんもオレ達を見てくれている。

 大丈夫、オレだけで勝手にピンチになろうとしても、周りがそれを許してはくれない。


 落ち着け、そして今あの窪みで起こった事を話さないと。


「レイラさん! 障壁、いつでも発動できるように準備を! 父さん達は!」


「船の上陸地点で大量発生してるアンデッドを殲滅してるわ! ノーマさんもそっちにいる!」


「オルターに伝えて下さい! この先の様子を見れる高台を探してくれって!」


「分かったわ!」


「ジャビ! あまり前に出るな! 殴って動かない奴は放っておいていい!」


 父さん達が乗っていた船に、魔力を封じる拘束具が大量に積んである。死霊術士500人くらいまではそれで対処できる。

 焦る事はない、全員確実に捕まえる。そして、今度こそ魔王教も、死霊術も、アンデッドの人工的な発生も、全てを終わらせてやるんだ!


「イース! 避けてーっ!」


 遠くからビアンカさんの声がした。驚いてしゃがんだその上を、誰かが瞬時に飛び越えていく。


「あれ……ゼスタさんか!」


「おおう、打ち飛まさでしまた」


「至近距離で死霊術を使われちゃあ、ジャビの身がもたねえ! 俺っちがぜーんぶ吸収してやらあ!」


「って事で俺とケルベロスでこいつら全員ぶっ飛ばす! イースは周囲のアンデッド掃除に専念してくれ!」


「有難うございます!」


 どのみち、あの魔王教徒達が何をしていたのか、説明したところでこの状況では何も出来ない。


 今やれる事をやる。


 出来れば島に上陸した全員が集まった状態で、オレが見たものを話したい。そして次に起きるであろう何かに冷静に対処する。


「ぬし?」


 英雄たちが一緒なんだ、オレだけで何とかする必要はない。


「フルスイング! イースくん! アレスにファイアを掛けてくれ! 炎で一掃したいんだ!」


「聞いて下さいよイースさん! イヴァンさんってば炎剣だからって、ボクを手に入れてしばらくの頃は炎を出せると思っていたんですよ!」


「そんな話をバラさなくてもいいだろう? ほんとお前、バルドルに似てきた。テュールみたいになりたいんじゃなかったのか」


 ……さ、流石は英雄だ。イヴァンさんもアレスも、この状況で呑気な会話を楽しむ余裕があるんだ。


「おぉう、ぬし、ちまう。いまん、あれちゅ、ぬし気抜けまさい、言うしたいます」


「オレの緊張を、ほぐすため?」


「お前の動きが硬いからだよ、イース」


「父さん!」


 いつの間に……上陸地点にはアンデッドが大量にいたんじゃなかったのか?


「そんな戦いっぷりじゃ、君が子供の頃に僕が剣の振り方を教えたのは黙っていて欲しいものだよ。だいたいシークってば、僕に子守をさせるなんてね」


「その話、長くなる? バルドル。イース、きっと何かを見たんだろう? 動揺しているのは分かる」


 驚いた。まさか、オレの動きで何を考えているのか分かるなんて。

 落ち着け、まずは操れるアンデッドを全部消せば……え?


 目の前のアンデッドが、何もしていないのに突然地面に崩れ落ちた。それも1体だけじゃない。


 もしかして……!


「ジャビ! ゼスタさん! いったん退避を!」

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