マネージャーさんのテストです?
はい、はい、なるほど。
一応、マネージャーとして華怜から写真は見せてもらっていたから顔だけは既に知っていたけれど...。
風間颯太くん。
実際に会ってみても、普通に、ただただ礼儀正しい好青年ね...。清潔感もある。
ただ、いい意味でも悪い意味でもやっぱり、普通ね...。
そして、私は華怜の元カレとも、彼女達が付き合い始めた頃ぐらいに一度会ったことがあるから、わかるんだけど。
まあ、あらためて見ても、この子は華怜のタイプではないわね。その時の藤堂くん?とは正反対。
とりあえず、あらためて、いいビジネスパートナーを見つけて来たわね。
そんなことを考えている私は、とりあえず放課後に華怜の学校へと向かい、彼を連れて、今は挨拶も兼ねてチェーンの喫茶店で談笑中と言うか親睦中。
机の上にはフライドポテトに唐揚げ...若い。
で、今はちょうど、暇つぶしも兼ねて、ある軽いテストをマネージャーとして私は彼女達に勝手にさせてもらっているところ。
まあ、そもそもyoutubeの動画とは言え、華怜って演技とかできたっけ?って思ったことと、そもそも素人の彼があまりにも素人すぎても駄目だと思い、私はとあるゲームを彼女達にさせているのだ。
させているのだけれど...。
「ねぇ、愛してる...」
うん、うん。
「ねぇ、本当に愛してる」
うん、うん。
とりあえず、華怜...。
彼女をちょっと揶揄う意味も込めて、この『あいしてるゲーム』をさせてみたのだけれど...
いや、ちょっと
「......」
演技、めちゃくちゃ上手すぎない...?
ノリノリじゃん。もう完全に役に入り込んでるじゃん。
なによ、華怜。あんたのその、頬を赤らめながらの彼も見つめる甘酸っぱい表情、そして、その真剣なまなざしは。
顔までそんなに彼に近づけちゃって。
「ねぇ、颯ちゃん、好き。本当に好き」
やばすぎるでしょ、いい意味で大誤算すぎる...。大女優の器でしょこれ。タイプでない男相手にここまでできるのはもう完全に女優。プロ。
てか、華怜。可愛すぎない? あんたそんな表情できたの?
「ねぇ、目そらさないで...。好き。大好き」
本当になに、その、あんたらしくもない、甘えた感じの恥じらいのある上目遣い...。
正直、アラサーの私でも、自分がゲームをさせていたことを忘れて、あんたのその表情に無意識にキュンキュンしちゃってたんだけど。
え? 華怜、あんた演技の天才なの? 演技の申し子?
現に、まあ、相手に愛してると言われて、言われている側が照れなければ勝ち、照れると負けのこのゲームの内容から仕方がないとはいえ、初めは無表情でしぶとく耐えていた彼、風間くんも...
本人は気がついているのか、どうなのかはわからないけど、顔がもう客観的に見ても赤く...。
フフ、目も地味に泳いだり、泳がなかったり...。何か、こっちも可愛い。
まあ、仕方がないことだとは思う。普通に華怜からのこの攻撃に耐えられる男なんて多分...いない。
でも、本人はその変化に気づかれていないとでも思っているのか、その澄ました顔を今もくずさない。
「ふふっ、照れてない?颯ちゃん」
「いや、別に...」
いや、普通に照れてるでしょ。風間くん...。
「そっか。じゃあ、もっと頑張らなきゃね。好き。世界で一番、好き...ふふっ」
うん、うん、うん。はい。はい。最高に可愛い笑顔いただきました。
「......」
とりあえず、これは絶対にバズる。
華怜が合格なのは言うまでもないけど、風間君、この子も悪くない。
むしろ、この彼のじれったさ。いい...。
合格。二重丸。
いや、これはやばい。本当にやばい。華怜、タレント路線ではなく、女優路線でも...冗談ではなく、本当にいけるんじゃない?
ちょっと、これ。マジでいけるんじゃないの?
youtubeで彼女のこの演技力を広くアピール...。
からのドラマ、映画界に本格的に進出。
そして、私がギリ30歳までに、有名イケメン売れっ子俳優と結婚するという夢の実現が...。
よし、ちょっと本気出すか。




