華怜の敏腕?マネージャーさんです
「ねぇ、どうしたのよ華怜? あんなに消極的だったyoutubeのあの企画の件、いきなり超前のめりになっちゃって」
本当に、一体どうしたのかしら...この変わり様は。
「で、どうなった。私の相手は風間君でオッケー? オッケーだよね!」
「ええ、オッケーよ。ちょうどいい子を見つけてきたじゃない。あの子が相手役なら、いい意味でヘイトも集まらないでしょうし、一般的な男の子たちが感情移入しやすいと思うわ」
「でしょ!ありがとう、マネージャー!」
つい、この前まで、私は脇役Bとかでいいからとか言っていたくせに、どういう風の吹き回しなのかしら。まあ、こちらとしてはありがたい限りなのだけど。
「で、いっぱいシュチュエーションの案も考えてきたんだけどね」
しかも、自分から案まで...。
「ねぇ、聞いてる?」
「ええ、聞いてる、聞いてる」
確か、あの...蓮也くん?とかいう彼氏と別れたとか、それぐらいの時期は、本当に魂の抜けた抜け殻のようになってしまって、どうしようもなかったのだけれども...
最近はもうすっかり元通り。むしろ目まぐるしい勢いで彼女は人気を伸ばし続けてくれている。
ただ、最近はまたちょっと難しい顔をしていることが増えたと思って心配していたのだけれど...。
「この喫茶店で撮影とかちょうどいいと思うの。人もそんなに多くないし、店主の方も優しい。どう? てか、絶対にここがいいと思う!」
その心配も、どうやら私の杞憂だったみたいで安心している。
現にまた、あの時のように、いや、あの時以上に明るい笑顔が、彼女のその表情に戻っているのはおそらく気のせいではないのだろう。
今だって、いい意味で、そのはしゃいでいる姿は彼女らしくて...いや、彼女らしくないのが、彼女らしくて超かわいい。
で、その喫茶店とやらは...どこだここ。聞いたこともない。サンタ...モニカ? でも、そうか。個人経営のお店か。なら、そっちの方がこっちにとっても交渉がしやすくて好都合かも。
「へぇー、わかった。交渉しておく」
「やった!ありがとう!」
その、これでもかと嬉しそうに微笑む姿も...可愛すぎる。やっぱり私の目は節穴ではなかった。彼女はまだまだ伸びる。その感じをさらにもっと世間に押し出していけることができれば絶対にまだまだ彼女は上にいける。
性格のきつそうなギャルがみせる明るい笑顔というギャップ、これは誰が何と言おうと最高の武器。
「で、次は修学旅行のシュチュエーションも定番だよね!京都!実際に京都に行って撮ろうよ!で、その次は文化祭でのシュチュエーションも外せないし、自宅でのシュチュエーションも。他には―」
それに、彼女から紹介されたこの男の子。風間颯太...くんだっけ。
本当にちょうどいい感じの子。華怜と以前に付き合っていた子とはタイプも正反対っぽいし、おそらくと言うか、確実に彼女がこの男の子と恋愛関係になることもないだろう。
この超普通な感じがやっぱりいいわね。本当にただの素人の高校生みたいだけれど、それが今回の企画の趣旨にもちょうどマッチしているし、別に顔が悪いとかでもない。本当に絶妙なバランスがとれにとれている。
まさにこういうビジネス上の彼女の恋愛の相手役には、あまりにもピッタリ。
ただ、この男の子...どこかで見たような気が? いや、でも会った記憶もないし、まあ、気のせいか。いい意味でも周りによくいる顔だと思うし、それが逆に人に不快感を与えない顔とも言うことができて、さらにいい。
とりあえず、別に彼女の恋愛を禁止するつもりはないけれど、また失恋とかで彼女の感情が左右されるのは何としてでも避けたいからね。その点では今回は心配する必要なんて何一つないわね。
そして、こういう子を今回連れてきたということは、彼女もさらに一層これから仕事に力を入れていきたいという意思表明でもあるのだろう。今は彼氏とかもいないみたいだし、もっともっと売れたい。きっと、そういうことよね。
この前の動画でも好きな人がいるとか匂わせていたりもしたけれど、あれもきっとビジネス的な男性ファン獲得の為のものに違いない。
こっちにとっては本当に願ったり叶ったり。今は彼女のこの熱をどうにか冷まさずに前に前に進みたい限り。
「わかった。できるだけ全部採用する。だから、華怜。これからも頑張っていくわよ」
「うん!頑張る!めちゃくちゃ頑張る!」
これは本当に、彼女の未来が楽しみすぎるわ。
フフッ、華怜。あなたは絶対に私が超売れっ子のスターにしてあげる。
そして、いずれは民放のドラマや映画の世界にもあなたは出ずっぱり。
そこで彼女のマネージャである私は、超売れっ子のイケメン俳優とまさかの運命の出会いを果たし...フフフフフフッ




