胸騒ぎがします?
「華怜ちゃん、今日はどうしちゃったの? 何か元気ないね。一旦、撮影中断する?」
「い、いえ、大丈夫です」
「まぁ、ちょっとだけ休憩しよっか。何か考え事しているみたいだしね」
「すみません.....」
駄目だ。また仕事に集中ができていない私がいる。
どうしてもずっと考えてしまう。
そう。あの時は本当に驚いたけれど、颯太が無事だったのは何よりも良かった。
ただ、何か嫌な予感がする。何だろうこの胸騒ぎは。
とてつもなく嫌な予感が......。
今日、颯太が朝遅れて教室に入ってきたのは本当にただの遅刻? でも、先生も.....。
本人に聞いても歯切れの悪い答えしか返ってこないし。
それにしてもよ。本当にありえない。
あいつのせいで文化祭での計画の全てがパーになって......。
結局、撮影も中止になってあの番組の企画自体もパー。
何であの頃の私は本当にあんな男と付き合って......。
それに、それに、何と言っても
広瀬恵梨香.......。
あんな風に颯太に助けられて......。
どっち? どっちなの?
私なら確実に......。
以前から、彼女は色んな男に思わせぶりな態度を取ることが多かったけど。
実際、彼女が誰か特定の相手と付き合ったり、執着するところは見たことがない。
今日も、彼女が教室にいつ現れるのかと身構えていたけど、実際現れなかったし.....。様子がわからない。絶対に来ると思っていたのに。
読めない。本当にどっち?
確か、彼女はバイトが颯太と同じだったよね。
もし、今回の件で彼女が颯太に本気になってしまっていたとしたら一体.....どうなるの?
広瀬恵梨香が真剣に颯太のことを好きになってしまっていたら.....
春風環奈、西園寺紗弥加だけでもこの上ない、強敵だと言うのに
もしそこに彼女まで......。
それに広瀬恵梨香が一人の男にその全ての力を......。
考えただけでも、恐ろしい。
もしかすると、もしかしなくても一気に......。
やばい。やばすぎる。どうにかしないと本当に。
「でも、華怜ちゃん。今度、またテレビ出演決まったんでしょ? すごいね。本当に売れっ子タレントになりそうじゃん」
「え? あ、そうなんですかね」
まぁ、そっちも本来であればかなり嬉しいことなんだろうけど。今は正直それどころではない。
「って、今話題のあの男の顔ってこんな感じだったんだー。ふふっ、思ったよりも普通。超普通。あっ、でもこっちの女の子はやっぱり可愛い。超かわいい」
え?
目の前にいるカメラマンさんがスマホで何かを見ながらそう呟いている。
「な、何の話をしているんですか?」
本当に何の......。
「え? いや、たまたまニュース見てたら気になる話題がでてきたから。あぁ、そう言えば華怜ちゃん同じ学校だったよね。この子ってどんな子なの? 友達だったりする?」
そしてそういって見ていたスマホの画面を私に向かって見せてくるカメラマンさん。
「は......?」




