揺られる身体です
あれ?何だ......。俺は一体何をしていた?
いきなり視界には真っ白な天井....って、ぐあっ
そして突然、身体に重い痛みが走る俺。
あぁ、そうだ。確か俺、文化祭の最中に屋上から....。
そういうことか。耳にはサイレンの音、さらに自分の身体が微かに揺られる感覚。
俺は今、救急車の中にいるのか。
「って、広瀬さ....んは」
広瀬さんは大丈夫なのか!?
「動かないで! 自分の名前はわかる?」
そんなことを考えながら無理にでも身体を起こそうとすると、大人の男の声が耳元では同時に聞こえてくる。
「あの、一緒に、一緒にいた女の子はどう....」
「大丈夫。女の子の方は君のおかげで奇跡的に無傷だったから。で、自分の名前は? 言える?」
あぁ、良かった。無事だったか。心なしか隣にいる救急隊員さんのその言葉で俺は一気に身体が軽くなる。
「はい。風間颯太です。良かった」
「本当に良かったよ。あんなところから落ちて、君まで全身打撲に左足の骨折だけで済んでいるんだから。まさに奇跡としか言いようがないね。落下先にあった木がちょうどいいクッションになってくれたみたいだね」
そうか。俺もなんとかなったか。
賭けではあったが、何とか軌道をそっちにずらすことができていたみたいで助かった......。
「それに左足の骨折もおそらく綺麗に折れているみたいだからまた元には戻るし大丈夫だよ。本当に奇跡だね」
「そうですか。良かったです」
「うん。まぁ、このあと病院に着いたらちゃんとした検査も受けてもらうことにはなるけど、大丈夫大丈夫。本当に良かった」
そして奇跡か。その言葉で思い出したけど、確か昔も全く同じ様なことがあったよな。あの時はちょっと今よりも重傷だった気もするけど、どっちにしろ命は助かったし。そういえばあのトラックに撥ねられた時も命は無事だったし、何だかんだで運はいいのかもな、俺。
いや.....そんなことはないか。そもそもこんなことに巻き込まれている時点で運は悪いな。うん、ものすごく悪い。今回だって普通に考えてあんなトラブル起こるか?
すぐ隣で見ていたけれど、スタッフさん達も藤堂が予定外の発言をしたせいでものすごくザワザワとしていたもんな。流れ的に一旦撮影を中断させようとなっていた中で、あのずっとブツブツと言っていたお偉いさんみたいな奴が無理やりに強行をさせていた記憶がある。
とりあえずあのお偉いさんは終わったな.....。
まぁ、でも本当に広瀬さんが無事で良かったとは思う。さすがにあんな自分が見ているところで死なれたら後味が悪いどころの話ではないからな。
それに、俺も結果的に文化祭を早退できたみたいだし。まぁ、オッケー.....ではないかもしれないけれどオッケーと言うことにしておこう。
そしてあわよくば学校もこのまま数日間はサボ.....るのは無理だな。
そうだった。あいつのせいで俺は出席日数が......。
本当にあいつはいつもいつも、迷惑を......。
実際、あんなことがあったんだし、あいつの後のイベント参加者は結局キャンセルになるのだろう。
何をするつもりだったのかは知らないけれど、特に環奈なんてものすごく気合が入っているぽかったし、華怜や紗弥加たちも確か出る予定だったんだろ? 可哀そうに。
他の参加者にもボコボコにされるんじゃないか? あいつ。なんせ、みんな期待していたであろうテレビにも出られなくなるんだからな。
まぁ、あいつは一回、いや百回ぐらいボコボコにされるべきではあるな。本当に。
でもとりあえず、今回の文化祭は全く文化祭っぽいことせずに終わったみたいだな。俺.....。
いや、ベビーカステラだけ食べたか。
まぁ、それに関しては本当にどうでもいいけど。
でもそうか。左足骨折か。
と言うことはしばらくの間は松葉杖での学校生活......。
普通に不便だな......。




