受付も平凡な男です?
あー、文化祭って一体何の為にあるんだろう。
そもそもの参加者こそ、エントリーで募ればいいのに。やりたい人だけで文化祭をやればいいと思うのは僕だけ?
「おい、道明寺。何ぼーっとしてんだ。早く次の人の受付をしろよ」
「はい、はい」
そして、何でそんなことを考えている僕が実行委員なんかを押し付けられて。
さっきだって何だよ。糞藤堂。偉そうにしやがって。何だ? 僕みたいな奴はやっぱりゴミだと思ってんのか? 真剣にお前が出してきた申請書、勝手に破り捨ててやろうか? 本当に何であんな奴ばっかりモテるんだよ。
僕だって.....いつも入学当初だけは注目を集めるんだ。瞬間風速だけであればあいつよりも上かもしれない。
え? いかにも平凡なお前が何でって?
それは、名前が、名前が、昔の大人気某有名少女漫画の俺様系主人公と全く同じなせいだからだよ。糞っ。
中学の頃も、そして高校に入っても入学式直後に必ず、僕を見に女の子達が教室に集まってくるんだ。
そして、勝手に期待して、勝手に僕に落胆をした顔をして帰っていく......。
本当に何で僕ばっかりこんな目に合わなければいけないんだ。そもそも何であの漫画のファンと言うだけで親は僕にこんな名前を。名前負けすることを考えなかったのか? 思いっきり名前負けしているじゃないか。
おかげで、こんなにひねくれた性格に育ってしまったぞ。おい。
まぁ、この気持ちをわかってくれるのは別のクラスのあいつ。神宮司翔輝愛ぐらいか。
話をしたことはないけれど、僕はもう親友ぐらいに思っているからな。絶対にあいつも苦労をしてきたはずだ。あの名前にあの顔は同志でしかない。
あれ? でも、ちょっと待てよ......。
僕もこのずっと今までため込んできた鬱憤を番組で......。そ、それに割と受けるんじゃないかこれ? まぁ、僕なんかが選ばれるわけはないんだろうが。
実際にこの中から何人が屋上で叫びテレビに映ることができるんだろうな......。
当たり前だけど、全員が出れるわけではないぞ。皆が皆、楽しそうにワクワクしているみたいだけれども。
「ねぇ、あなた大丈夫? 私もエントリーするって言っているんだけど。問題ないわよね」
「あ?」
そして本当に次から次へと。もう勝手に出たい奴だけ好きに出ればいいじゃないか。どいつもこいつも色めきだきやがって
って、え? さ、西園寺紗弥加?
気が付けば目の前には絶世の美女が俺に話しかけている?
「さ、さ、西園寺さんがですか?」
「そう。悪い?」
ヒッ、しかもそんなに鋭い眼光で僕のことを見つめて.......。
ま、まぁそうか。ぼーっとしていた僕が悪い。
えーっと、何なに、エントリーの目的は........
え?
こ、こ、こ、こ、告白?
「告白!?」
「は?」
「あ、す、すみません。間違いました」
え? あの西園寺紗弥加が? 確か、あの藤堂ですら容赦ないビンタで切り捨てたことで有名な彼女が一体誰に?
しかも、僕がそんなことを驚きからつい大声で口にしてしまったばかりに後ろに並ぶ男達が明らかにざわめき立ってしまって......。
「あなた、消されたいの?」
「す、す、す、す、すみません」
そして何だこの圧。駄目だ。本当に消される。このままだと本当に。
「って、ちょ、あなた。いきなり何を」
「土下座です。僕にはこれぐらいしかできません」
本当に。
「ちょ、嘘、嘘だから。ねぇ、とりあえず受理よね。ねぇ」
そして何だろう。普段はこれでもかと凛としている彼女が、若干あたふたと狼狽えている.....。
しかもこれ、僕の得意技の土下座に狼狽えていると言うよりもむしろ......。
目の前には全くらしくもなく頬を赤く染めて俺のことを尚も睨む西園寺紗弥加。
よくわからないけれど何か可愛いな......。マジか。西園寺さんってこんな顔するのか.....。
「ねぇ、本当に怒るわよ!」
「って、す、すみません」
本当にすみません。僕ごときがちょっと調子に乗りました。
でも、誰だ.......?
申請書には『風間颯太に告白』って書いてあったぞ。別に相手の名前なんて書かなくていいのにわざわざ。
そして風間颯太。誰? 聞いたこともないぞ。転校生か? ん?
本当に誰だ? 西園寺さんほどの女性が告白するなら相手はものすごいレベルの男のはず? もしかしてこの学校の男ではない? いや、でもそれでは企画は成立しないし。
風間颯太? 真剣に知らない。
あと何だ?
か、彼女とは別に後ろの方からものすごい殺気が.....?




