彼女は運命を信じます
「あれ? 華怜、もうご飯いらないの?」
「うん、ごめん。今日は食欲ないからママが食べて。本当にごめん。今日はもう寝るね」
本当にあの頃が人生で一番幸せだった。
一生、この人と一緒にいたいと思っていた。喧嘩もしたけど、それすらも今となっては最高の思い出でしかない。本当に毎日が満たされていて、このまま時間が止まればいいのになんてことを心から何度も考えていた。
もちろん蓮也とも楽しい思い出がそれなりにあったのは事実。
でも、心から本当にこの人だと思ったのは間違いなく彼、風間颯太の方だった。
改めて本当にありえないことだと思う。
現実の世界で入れ替わりなんて現象。
でも、もっとありえないことが私の中には存在する。
それは、このまま、このまま私が彼と一緒になれないこと......。
そして、あの時間が彼の中でそのまま無かったことにされること......。
「それだけは絶対に嫌だよ。絶対に......」
入れ替わりから戻った後、彼はバレないと思った?
バレないわけがないよ。本当に好きになった相手のことを私がわからないわけがない。
その癖も、笑い方も、仕草も、不器用だけど一生懸命なところも、何もかも、本当に何もかも全て、私が心から愛した人と同じなんだもん。わからない方がおかしいよ。
颯太とは一緒にキャンプや水族館にも行ったっけ。遊園地も動物園も、温泉や映画館。海やものすごく綺麗な花畑。美味しいお店やカフェ。他にも、とにかく色んなところに一緒に行ったよね.......。
そして本当に一生懸命になりながら私のことを楽しませてくれようとしていたよね。今思えばあの時に気付ける場面はいくらでもあったんだよね。だって、ふふっ、蓮也のスマートな感じとは程遠いデートだったもんね。思い出しても笑えてしまう場面がたくさんあった。
でも、それも含めて本当に最高の時間だった......。本当に。
あの時だって、私が色々と絡まれて危なかった時に何の躊躇もなく身体を張って助けてくれたのは颯太だったよね。私の悩みごとに何時間もかけて付き合ってくれて一緒にいつも考えてくれていたのも颯太だった。それは仕事の悩みも同様に。とにかく、いつも私が困ったり壁にぶつかった時に隣で一途に私だけを見て支え助けてくれていたのは、
そう。間違いなく風間颯太。彼だった。
本当にこのまま終わりだなんて嫌だよ。寂しすぎるよ.....。颯太。
もう一度、私にその笑顔を向けて欲しい。そしてまた好きって言って欲しいよ。
あの時間が嘘だったなんて絶対におかしいし、ありえないよ。
だって、間違いなく私と彼のあの時間はこの世界に存在したんだから。
そして、彼らの入れ替わりなんて現象が起こらなかったら間違いなく私は彼と出逢えていない。でも、そんなありえないことが起こって私と彼は実際に出逢った。要は間違いなくこれが運命ってもの。それ以外に考えられない。
だから、今度こそ本当に私と一緒になって欲しい。本当に。
相手が幼馴染だろうが誰だろうが、関係ない。絶対に負けられないし、負けない。
本当に好きだよ。颯太。本当に世界で一番好きだから。
愛してる。




