バイトでの賄い時間です
「風間くんって本当にハンバーグ好きだよね。ふふ、今度私が作ってあげよっか」
「はは、じゃあまた今度」
ふふ、やっぱりおかしい。自分で言うのも何だけど、普通は私にこんなこと言われたら即イチコロなんだけどなぁ。例え彼と一時的に入れ替わっていたことが本当だったとしても、何でこんなに涼しい顔ができるんだろう。
何度試しても結果は変わらないみたいだし。本当に面白いなぁ。
あっちなら今にでも私に飛び掛かってくるだろうに。
「何か、風間くんが休憩のたびにハンバーグ食べてるの見ていたら私も食べたくなっちゃった。ちょっともらってもいい?」
「はい。どうぞ。でも、広瀬さんは食べないんですか?」
「うん。ちょっとダイエット中でね。あ、でもやっぱり美味しいね。これ。ありがと!」
ははは、やっぱり駄目か。わざと風間くんの食べかけの部分を食べても眉ひとつ動かしてくれない。どっち? やっぱり実は効いているけど効いていないフリをしているだけ? それともそのリアクション通り本当に全く効いていない?
「広瀬さん、別にダイエットの必要ないと思いますけどね。これ以上、痩せてどうするんですか? って余計なお世話ですよね。すみません......」
「んー、まぁ、色々かな! でも、そう言ってもらえると嬉しいかも」
「いえいえ、すいません。でもとりあえず、もう一口ぐらいどうですか?」
気がつけばそう言って自分のフォークにハンバーグを一口分刺して、私の口元へと持ってくる風間くん......
「え、あ.....ありがとう」
って、な、何でいつの間にか私が攻撃されてんのよ......。しかも何で私の方がうろたえちゃってるのよ.....。
「って、あ、す、すみません。つい。間違えました」
し、しかも何でひっこめるの? 何かつい口をあーんってしてしまった私もバカみたいじゃん......。
って、バイト先の女友達の子もそんな私を見てくすくす笑っているし。
え? なに、かなり恥ずかしい。恥ずかしすぎるんだけど。
な、何? もしかして......彼をからかおうとしていた私が、逆にからかわれているとか? こ、この私が?
いや、た、偶々ね。偶々。だって目の前の彼も動揺しているみたいだもん。ようやく動揺。まぁ私の求めていた動揺ではないけれども。
でも......間違えましたって。一体誰と?
何かそれはそれでムカつくんだけど。
ふふ、でもまぁそれも文化祭の当日にわかっちゃうのかもね......。
絶対に面白いことになっちゃうもんね。テレビ的にも最高においしい展開なんじゃない?
本当に最高。
でも、そうなのよね......。今日も学校であっちに言われたんだけれども。私は私であいつに変に巻き込まれそうで嫌なんだよね。
はぁ、そっちはものすごく面倒くさそうだなぁ......。断ろうとしても全然話も聞いてくれないし、本当にどうしたらいいんだろう。
巻き込まれるのであれば断然、風間君の方が良いんだけどなぁ......。
でも、本当にあいつのせいで色々と嫌な予感がするのよね.......。
一体、屋上であいつは何をしようとしているの? 何かおかしなことを考えている気がしてならないんだけど。
私、大丈夫......よね。




