モテない二人組です。
「なぁ、レム。もうそろそろ憂鬱なあの時期がやってくるな」
「そうだな、翔輝愛。風紀が乱れるあの時期が」
本当にけしからん時期がやってくる。
それは俺、神宮司翔輝愛が一年間で一番イライラする期間と言っても過言ではない。
具体的には文化祭。いや、特にあのコンテストのエントリー前になると、ある理由でこの学校は校内にカップルが例外なしに増加する。
朝から放課後まで男と女が告り告られ......。
性が乱れに乱れる最悪な時期がやってくる。
あの藤堂みたいなゴミどもがうるさくなること間違いなし。
人間は不公平、皆が平等でないことが改めて露呈する季節だ。
現に教室内の男どもも心なしか、いや確実に女にやけに優しくなっている。
下心が見えに見えている。バカとしか言いようがない。
学校も学校で何が優勝者には景品で遊園地のチケットだ。バカか。あんなコンテストの優勝者には逆に宿題1年分の授与にしやがれ。いや、退学にでもすればいい。俺たちの気持ちを考えたことがあるのか。そもそも全員が楽しめない文化祭のイベントってイベントとしてどうなんだ?
「なぁ、翔輝愛。あそこ見て見ろよ。本当に何であんな奴がモテるんだろうな......。女ってほんとバカだ」
あ? って、あぁ。あいつか。それはレムに同意だ。
「本当にそうだよな」
藤堂。なんであんな顔だけで中身のない男があんな風に女に囲まれる。
もう学校も終わっただろ? 部活がないのであれば早く帰れよバカ女ども......。
もし国民全員顔が同じであれば、俺や隣にいるレム。そして颯太の方があいつの100倍モテるだろうが。いや、1000倍。
人間は顔よりも中身? ふん、バカも休み休み言えや。特にそんなことを口にする女こそ信用できない。
なら何で性格の良い俺たちがモテない。結局は全て顔。人間は顔なんだよ。以前にテレビでもやっていたしな。結局就職とかも顔がいい奴が優遇されるんだ。じゃあ俺たちはどうすればいいんだ。どうしようもないじゃないか。生まれた時点で詰んでるってか? あぁ?
あー、マジでムカついてきた。何だこの破壊衝動。
本当にムカついてきたけど、そういえばあの時はかなり最高だったな。今でも思い出すと笑けてくる。爆笑だ。
藤堂がこの学校きっての美女達に2連続でフラれたあの日のことは特に。
あの日に食った飯は最高に美味かった記憶がある。オカズ抜きで3杯は白米を食えた。
って、あれ? そう言えば颯太は? バイトか? もう帰ったのだろうか。いつの間にかいない。
本来なら俺ら3人でこういう会話をしながら帰るのがデフォだと言うのに。
まぁ、あいつには春風さんがいるからアレかもしれんが、あそこまで一緒にいて何もないということはおそらくそういうこと。
あいつも俺やレム達と同じチームの一員だ。
ただ、何か。色々と振り返ってみると最近のあいつには違和感を感じる時が割とあるんだよな......。
ずっと引きこもっていたにしてはいやに小奇麗になって帰ってきたというか、堂々として帰ってきたというか。
変わってないけど変わった様な気がしなくもないんだよな......。でも、確実にやはり何かはかわっているようなんだよな。
「チッ」
にしても、イラつくな。藤堂。レムが舌打ちするのも痛い程わかる。
本当に何だあの藤堂に媚びた目を向ける糞女ども。そしてそんな糞女どもをこれがいかにも当たり前みたいな顔で軽く対応していくあの糞野郎は一体何なんだ? アイドル気どりか? 大塚華怜にフラれたくせに、西園寺紗弥加にぶたれたくせに、それなのにあいつはアイドル気どりなのか?
こちとら女から喋りかけられたのなんて何年前のことか思い出せないって言うのによ。
一回俺と入れ替われよ。特にコンテストのエントリー前に入れ替わって俺を無双させろ。俺に一生分の告白を女から受けさせろ。最終的に彼女100人作って修羅場を巻き起こしてやるわ。
そしてお前は俺の人生の生きづらさを学んでこれまでの愚行を反省しろ。
何だ。そうするにはどうしたらいい。漫画みたいにあいつと一緒に階段から落ちる? 一緒に事故にあう?
って、そんなこと出来たらとっくにイケメン見つけて入れ替わっているわボケ。
何? こんなバカなこと考えているからモテない? うっさいはボケ。
ボケ、ボケ、ボケ、不公平な社会のボケ。何でスタートが違うんだよ。せめてフツメンであれば良かったものの、何でブサメンなんてカテゴリーが存在して俺がそのポジションにいるんだよ。おかしすぎるだろ
「ねぇ、ねぇ、そこの君達?」
あ?
「え?」
って、な、何で?
「君たちって風間くんの友達の子達だよね。風間くんってもう帰っちゃったかな?」
な、何であの広瀬恵梨香がこんなに笑顔で俺たちに......
「おーい、聞いてる?」
え?
「え、あ、え、そ、あ.......」
「あっと、えっと、え、いや、え」
いや
「ん? 二人ともどうしたの? おーい」




